ウールの快適性能を最大限に生かしつつ、吸汗加工ポリエステルとのハイブリッドによって弱点を補い、
2つの素材のいいとこどりをした、理想のアンダーウエア素材・スパイルフィルTM糸
素材と遊びのどちらも知り尽くした「創り手が遊び手」finetrackの物創りを代表する素材です。
合成繊維がまだまだ発達していない時代、濡れても保温性を保つウールのアンダーウエアの性能は天然繊維の中では群を抜いたものであり、冬のアウトドア用のアンダーウエアの不動の定番でした。
しかし70年代に入ると、アクリルやポリエステルに代表される吸水速乾を謳った化繊のアンダーウエアやニットウエアが台頭。洗うと縮むという厄介な性質、チクチクとした肌ざわりもあって、次第にウールはアンダーウエアの定番の座を化繊のウエアに譲って行ったのです。
そして近年、再びアウトドアスポーツの世界では、ウール製のアンダーウエアやニットウエア流行して来ています。
その背景として、一つはウールの優れた調湿機能や消臭機能に着目した快適性への欲求、自然志向が好まれるようになったことが挙げられるでしょう。そしてもう一つ、ウールの防縮加工が進化して一般的になり、縮みの問題が解決したことも大きな要因です。

ウールは高い保温性、優れた調湿機能、抗菌消臭機能といったアウトドア用アンダーウエアに求められる大切な機能をもともと備えています。これらの機能に深くかかわっているのが、ウール繊維表面の特殊な構造です。
ウールは表面が疎水性(水になじみにくい)のうろこ状の表皮、「スケール」に覆われており、このスケールの開閉により、呼吸しています。湿潤状態になると、このスケールが立ちあがり(開き)、吸水性の良い内部に水分・湿度を吸収します。逆に乾燥状態になると、内部に蓄えた水分を放出、肌が快適に感じる湿度を保つ働きがあります。ウールが「第二の皮膚、生きた繊維」ともいわれる理由であり、現在の合成繊維の技術を持ってしても、なかなか超えることのできない大変優れたものです。
しかしこうした優れた機能を持つ一方で、表面が疎水性であるために液体の汗を吸い上げる能力に乏しく、吸汗拡散性能が劣る、繊維強度が弱い、防縮加工を施さないとスケール同士がからみ合い収縮して硬くなる(フェルト化)、といった弱点も持っています。
そのため、現在ではウールは原糸のまま使われることはほとんどなく、縮みを防ぐための防縮加工を施すことが一般的となっています。しかしながら、この防縮加工は様々な課題を抱えているのです。

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防縮加工にはいくつかの方法があり、スケールを除去する方法、繊維表面を樹脂で薄くコーティングする方法などが主流です。
しかしすでに説明した通り、スケールを含む繊維表面の特殊な構造こそが、ウールの優れた機能を発現させるためには必要なのです。この防縮加工により、疎水性の繊維表面全体(キューティクル)に少なからずダメージを与えてしまいます。また、繊維全体を樹脂でコーティングしてしまえば、ウール本来の優れた調湿機能や消臭機能も著しく損なわれてしまうのです。
加えて防縮加工は、繊維強度も低下させます。もともとウールは、綿の半分ほどの繊維強度しかありませんが、スケールの除去や繊維表面へのダメージのため、ただでさえ弱い強度がさらに低下してしまいます。高価なウールの靴下やアンダーが、ハードな使用では簡単に穴が空いてしまうのはそのためです。
課題はもう一つあります。防縮加工の過程において、排出される廃液が方法によって程度の差こそあれ、環境に悪影響を与えることが明らかになっています。天然素材であり、環境にも優しいイメージを与えるウール、しかしその製造過程は、エコとは言い難いものであるのも事実です。

finetrackでは、独自の素材を開発するとき、繊維が本来持っている優れた性能を最大限に発揮させるため、その機能を損なうような2次的な加工を極力避けるようにしています。繊維の持つ性質を損ない、環境にも優しくない防縮加工。これを行わずに、アンダーウエアにウールを使用することはできないか。
ウールを原糸のまま使用しているアンダーウエアが事実上存在しない現状の中、finetrackはあえてこの課題に挑戦することにしたのです。
ウールの原糸の持つ機能をそのまま生かし、洗うと縮む、吸汗拡散性と強度が劣る、という弱点を補う方法はないだろうかと考え、目星をつけたのが、強度があり、加工によって優れた吸汗拡散性を持たせることができるポリエステルと組み合わせる方法でした。
性質の異なる繊維同士を掛け合わせて糸を作る場合、よく使われる手法に「混紡」があります。原料となる繊維のステープル(短繊維)を混ぜ合わせ、撚りをかけながら糸を紡いで行く方法で、ウールとポリエステルの混紡は、すでに実用化されている技術です。しかし、この手法は未防縮ウールの弱点を克服するためには十分ではなく、finetrackの求めるレベルを満たすものではありませんでした。
大手紡績メーカーと共同で方法を模索する中、finetrackがたどり着いたのが未防縮ウールと吸汗加工ポリエステルの混紡であるコア層の周囲に異型断面・吸汗加工ポリエステルのフィラメント(長繊維)をスパイラル状に巻きつけてカバーリングする、立体2層構造の糸にする手法でした。
この2層の構造は、単なる混紡と比べて、以下のような優れた点があります。

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外層をポリエステルでカバーリングしているため、ウールが直接肌に触れにくく、摩耗にもさらされにくくなります。これによって、チクチク感をほとんど感じさせず、糸の摩耗強度を大幅にアップすることができます。また、ウールの繊維同士が絡み合う「フェルト化」も同時に防ぐことができ、未防縮の原糸のままのウールを使用することができます。
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混紡糸は、短い繊維の集合ですので、吸汗加工ポリエステルを混合したとしても吸い上げた汗の経路が途切れ途切れになるため、吸汗拡散性が大幅には向上しません。それに対し、この構造は外層に長繊維の異型断面・吸汗加工ポリエステルを巻きつけてあるため、連続した汗の経路が確保され、大変優れた吸汗拡散性を付加することができます。
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ウール原糸と吸汗加工ポリエステルのコア層は、外層でカバーするために通常の混紡よりも緩やかな撚りをかけるだけで済みます。スパイラル状の外層は、構造的に高い伸縮性がありますので、ウールとは思えないほどの豊かでコシのある伸縮性を示すのです。
finetrackは、この手法がベストと考え、カバーリングするフィラメントの性質、コア層に使用するウールとポリエステルの最適な比率などについて試行錯誤を重ねました。こうして、今までになかったまったく新しいウール・ポリエステルのハイブリッド糸、スパイルフィルTMが誕生したのです。それはまさに、ウールとポリエステルの長所をあますところなく生かし、さらにスパイラル状の構造から得られるプラスアルファの性質を加えた、すばらしい性能を持つ糸だったのです。
アウトドア用アンダーウエア素材には、まず、保温、調湿、汗処理といった下界から体を保護するための性能が求められます。加えて、いかにこれらの機能が高機能であっても、生地が固く、伸びも少ない、着心地の悪い素材であったり、わずかな力で破れたり、洗濯によって著しく劣化するなど、耐久性に問題がある場合も、アウトドアに向いているとは言えません。
これらを総合して、保温力、調湿、乾燥スピード、伸縮性(着心地)、耐久性の5つの軸を基準に、アウトドア用アンダーウエアの代表的な素材のウールとポリエステルと、スパイルフィルTM糸の性能を比較してみました。

ポリエステルは、耐久性、速乾性、伸縮性に優れるものの、保温力に劣り、繊維自体が保水できないため、湿度を調整する機能はほとんどありません。一方のウールは、優れた保温性と調湿性能を持つ一方で、伸縮性、耐久性が乏しく、液体の汗を処理する能力が低いため、乾燥スピードも劣っています。
それに対し、スパイルフィルTMはポリエステルとウールの優れた機能を上手に引き出して、高次元に性能を高めていることがレーダーチャートから読み取ることができます。
スパイルフィルTM糸はfinetrackの理念に基づいた一つの回答であり、アウトドア用アンダーウエアのための現在考えられる最良の糸構造だと考えています。




