STORY 開発の現場から

開発の現場からvol.3 限りなく0に近く

世界初の撥水アンダーウエアを商品化するには、山の中でずっと着続けられる「着心地」にもこだわる必要がありました。薄さ、軽さ、そして、まるで着ていないかのような締め付け感のなさ。連載3回目は、限りなく0枚に近い着心地を追求したニッティングに迫ります。

スキンメッシュ®の生地の厚みは、0.4mm余り。肌着としては限界に近い薄さです。
重量は、Tシャツタイプで46g(Womensは36g)と、卵1個にも満たない軽さです。
ここまで薄さ、軽さにこだわったのには理由があります。

スキンメッシュ®が世に出るまで、登山ウエアの常識は3レイヤリング(吸汗着+保温着+防水着)でした。吸汗着の下にもう1レイヤー加えるという新提案をするにあたって、「限りなく0枚に近い着用感を目指した」と開発者・金山洋太郎は言います。

一枚多く着ることのハードルを超えるために、限界まで薄く、軽く。
「汗を通す孔」、「耐久撥水」の次にスキンメッシュ®が追求したのは、まるで着ていないかのような着心地でした。

(極薄の貫通メッシュ生地は、最新の編機では編むことができない)

「失敗しました。これでは薄すぎて服になりませんね……」。
開発途中、編みあがったばかりのテスト生地を手に、ユニチカトレーディングの田中潤氏は切り出しました。
何度も試作を繰り返した末のテスト生地。狙い通り薄くはあるが、破裂強度や堅牢性という意味で、スポーツウエアの常識からは外れたデリケートな仕上がりだったからです。

しかし、生地を受け取った金山が返した言葉は、
「いや、想定に近いです。これでモノ創ってみるわ!」。

常識外れは承知のうえ。無難にまとめてしまえば、限りなく0枚に近い着心地は得られない、という判断でした。
後日、生地を持ち込んだ縫製工場からは「こんな薄い生地……どう縫えばいいの?」と苦情を受けたほど、ありえない薄さだったのです。

こだわったのは、薄さだけではありません。もうひとつ、着心地を左右する大切な要素が、キックバックでした。
キックバックとは、伸びた生地が元に戻ろうとする力。弱すぎるとフィットせず、強すぎると締め付け感を生んでしまいます。

スキンメッシュ®の生地を伸ばし、そっと手を放すと、伸びた生地がじんわりと元に戻るのが分かります。ときには、「ワライ」と呼ばれる伸びジワがほんのり残ることも。
この、キックバックの絶妙な弱さこそ、限りなく0枚に近い着心地の源です。

じつは一般的には、僅かでも生地にワライが残るのはよくないこととされています。「生地メーカーである僕たちは当然ながら心配しました」(田中氏)。ですがここでも無難な選択はせず、着用テストを繰り返して「これなら大丈夫」というラインを見極めていきました。

こうしてスキンメッシュ®の生地は完成しました。周囲を心配させ、さまざまな常識を破って、挑戦は続いていきました。

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