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登山に必要な水の量と汗のはなし

山に持って行く水の量、どうやって決めていますか?
荷物を軽くしたい気持ちと、水切れの不安とのせめぎ合いのなか、適正な水の量を客観的に把握しておきたいと思いますよね。
水は大切なライフライン。量を間違えてしまうと事故に発展してしまう可能性もあります。
登山で必要な水の量は、汗の量と深く関係しています。汗の量を知れば適正な水の量の目安が分かるので安心です。また、汗の成分を知ることで、水以外に補給すべきものも見えてきます。
登山は、長時間、大量に汗をかくスポーツ。汗の知識を深めて、登山のステップアップに生かしていきましょう。

登山で悩ましい、水の量

登山を計画するたび、持っていく水の量に悩まされるという方は、多いのではないでしょうか。
バックパックの中で、大きな重量と体積を占める水。それだけに、荷物は減らしたい、でも水切れはしたくない・・・という大きなジレンマに陥るものですよね。
あなたは、山に持って行く水の量、どうやって決めていますか?

写真:山に持って行く水筒の一例

finetrack社員が初心者だったころ

スタッフA

初めての本格登山でどれだけ水が必要なのか分からず、上高地から涸沢への飲み水に3リットルの水を持って行くことにしました。ちょうど中間地点の横尾にある水場で、飲んだ分をさらに補充するほどの用心深さで水を担いで上がりました。荷物が重く大変な思いをして登ったのに、涸沢に着いたときに水は半分はおろか2/3も残っている…。その分軽くできていたら、もう少し楽に登れていた。水の心配に振り回された山行でした。

スタッフB

いつも水を余らせるので、その教訓を活かそうと、山頂付近の水場で水を補充せずに下山を開始。ところが想像していたよりも道のりが長く、脱水状態でフラフラになりながら下りて自動販売機に飛びついた。

スタッフC

低山の縦走にチャレンジしたときに、水場があることを知らずに大量の水を持ったまま縦走。「この後はもう水場がないかも」と思い水を捨てずに持ち続けたのですが、結局ゴールまでずっと適当な間隔で水場が設置されていて、無駄な重りになりました。

水と汗のバランス

登山で必要な水の量は、汗の量と深く関係しています。
失った水を補うのが、体に必要な給水の基本だからです。
水の量と汗の量のバランスがとれていれば、体の水分バランスを保って体調不良にならず行動し続けることができます。

失った水分と、摂る水分。汗と水の量のバランスのとり方は、意外と知られていません。

山のプロ集団である日本山岳ガイド協会では、こんな計算式が使われています。

給水量 = 脱水量 × 0.70~0.80

脱水量とは、かく汗の量
給水量とは、摂る水の量
必要な水の量(給水量)は、かいた汗の量(脱水量)の70~80%という意味です。

次に、汗の量をだいたい把握するための計算式が、これです。

脱水量 = 体重(kg)× 行動時間(h)× 5(ml)

体重60kgの登山者が6時間行動した場合の、汗の量は

脱水量 = 60(kg)× 6(h)× 5(ml)= 1800ml

この汗の量を、先の給水量の数式にあてはめてみると、体重60kgの登山者が6時間行動した場合の水の量が分かります。

給水量 = 1800ml × 0.70~0.80 = 1260ml~1440ml

調理用や予備を含めて、2000ml~2500ml持っていけば、十分事足りそうです。

※計算式は、一般的な登山・トレッキングの運動強度を想定したものです。
※ほかに「登山中に必要な水分量=自重(体重+ザック)×5×行動時間」とした計算式(鹿屋体育大学・山本正嘉教授の研究による)もあります。

水を無駄にしない飲み方

写真:山に持って行くと便利なカップ

一般的に水の補給方法(リズム)にもある程度の目安があると言われています。

30分に一回、100~200ml
のどの渇きを覚えないように、小刻みに

一度に多くの水を摂っても、消化器官でうまく吸収されず「無駄」になってしまう可能性があるからです。

水道設備のない山の中で、水筒に入った水は、貴重なライフライン。
体が求める量を、求めるリズムで補給できるよう、スマートな給水を身に着けたいですね。

汗が教えてくれること

登山の給水は、真水だけでは足りません。
その訳は、汗の成分が物語っています。

汗の大部分は水分。ですが、塩分(ナトリウム)やカリウムなどの電解質も含まれていて、水分とともに、対外へ排出されます。
そのため、水以外の成分も補給する必要があります。体液の電解質バランスが崩れると、筋肉のつりやけいれんなどを誘発してしまうためです。

スポーツドリンクやパウダー状の電解質などを併用して、水分とともに電解質を補給するように工夫しましょう。

写真:ペットボトル、パウダー状、ゼリー状の電解質の商品

汗は、体を守っている

汗は、運動による体温の急激な上昇を抑えるための生理現象です。
汗が蒸発するときの気化熱で体を冷やし、体温を一定に保とうとしているのです。

体重60kgの登山者が6時間行動する場合の汗の量 = 1800ml。
給水量 = 1800ml × 0.70~0.80 = 1260ml~1440ml

これはつまり、

体重60kgの登山者が6時間行動するとき、
ヒートアップを抑え体温を一定に保つために、
1800mlの汗をかく必要がある

そして、体の水分バランスを整えるために、
1260~1440mlの水を補給する必要がある。

と言い換えられます。

水の量の目安を知ってから、山に登ろう

水は必携の登山装備。
それゆえに、持っていく水の量に毎回悩むという登山者は多いと思います。

次回の山の計画を立てる際にはぜひ、汗の量を算出し、持参する水の量を検討してみてください。

担ぐ水の量が減ったら、以前より早く目的地に着いて、のんびり景色を楽しめるかもしれません。荷物に余裕ができたぶん、少し性能のいいカメラや好きなフルーツを持参して、山の楽しみ方が広がるかもしれません。

逆に、以前より水の量が増えたとしたら、より安全な登山計画になったと思えば納得がいきますよね。

水分補給のほかにも、汗を知ることが快適な登山のヒントになることは、よくあります。 汗の知識を深めて、登山のステップアップに生かしていきましょう。

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