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体感気温差20度は当たり前。夏でも山が寒い理由

登山の装備品に必ずリストアップされている「防寒着」。
夏山では使わないでしょ? 日帰りなので省略していい? 標高は高いけれどロープウエーから山頂まですぐだし、シャツだけで大丈夫……。
山を始めたころ、誰もが思うことですが、防寒着はシーズンに限らず必ず要る登山装備です。
真夏の富士山にTシャツとジャージで登ろうとして、あまりの寒さに途中で引き返すという話は、毎年耳にします。
では、夏山はどのくらい寒いのか!?
防寒装備に迷わないためには、山に登る前に、およその気温を予想しておけるといいですよね。
夏山がなぜ寒いのか?の知識を身につけることで、初めての山でも安全で快適な登山が楽しめます。

※秋山については「秋山を満喫する防寒対策のコツ」の記事をどうぞ 

夏山はどのくらい寒い?

雪渓が残る岩稜と青い空。
うだるような暑さの下界から見上げる夏のアルプスは、とても爽やかな世界に見えます。

実際の山上はどうでしょう?
8月、日射しは強いですが、雪渓が残っていることから、ヒンヤリしてそうだな、ということは分かります。さて、気温は何度くらいなのか……?

この予想を誤って、防寒に失敗する登山者はとても多いです。
かくいうfinetrackスタッフも、過去に痛い思いをしたことがあります。

結論から言うと、夏の高山は、都市部の真冬並みの寒さになります。

finetrackスタッフが初心者だったころの防寒失敗談

スタッフA

アルプスは夏でも寒いらしい、というのは知っていて、最初はとにかく防寒を!と思い秋冬物のウール下着を着て行ったんです。暑さでのぼせて大変な思いをしましいた。次は「暑くないように」と下着をつけず薄手の化繊シャツで行ったんです。すると今度は、寒くてフラフラに。下山時の林道で具合が悪くなり、帰ったら熱が出ていた…という最悪の結末。山の服装ってこんなに難しいのか、と思ったのを覚えています。

スタッフB

山を始めたばかりのころ、8月の富士山。ザックとシューズとレインウエアは登山用のものを購入したものの、それ以外には手が回らず。手持ちのスポーツ用Tシャツを着て、街着のフリースを持って行ったのですが、夜明け前の3000m峰には保温性が不十分で……。ご来光を目指して午前3時から歩き始めたものの、登山道は渋滞で動いたり止まったり。同じく街用のセーターを着てきていた友達と一緒に震えながら歩きました。

夏の高山は、真冬並みに寒い

山の山頂は、気温何℃くらいなのか?
予想がつけば、防寒着も選びやすくなります。

代表的な山の山頂での最低気温を、平地の平年値から算出したグラフがこれです。
比較しやすいように、東京の最低気温もグラフに落としてみました。

代表的な山の最低気温の目安(月別平均/℃)
グラフ:代表的な山の最低気温の目安

夏の高山は、東京の真冬並みの気温ということが、よく分かります。

[ 参考資料 ]国立天文台編 -理科年表 平成27年版-
※それぞれの山頂での温度をもっとも近い気象観測地点のデータをもとに算出。

標高差と気温の関係を知る

山の気温は、標高差と反比例して下がっていきます。

式にしてみるとこんな感じで、100m登るごとに0.6℃ずつ寒くなっていきます。

標高100m↑ = -0.6℃
標高1000m↑ = -6℃
標高2000m↑ = -12℃
標高3000m↑ = -18℃

グラフ:標高0mでは最高気温30℃、最低気温20℃/標高1000mでは最高気温24℃、最低気温14℃/標高2000mでは最高気温18℃、最低気温8℃/標高3000mでは最高気温12℃、最低気温2℃

例えば
[ 最低気温 ]標高0mで20℃の場合、標高3000mでは、2℃
[ 最高気温 ]標高0mで30℃の場合、標高3000mでは、12℃
という風に計算します。

風が吹けば、体感気温はより寒くなる

標高による気温差に加えてもう一つ寒さを生む気象要因が、風です。
無風のときに比べ、風速1mの風が吹くと体感温度は1度下がるといわれています。

風速1m↑ = -1℃
風速5m↑ = -5℃
風速10m↑ = -10℃

強い風が吹くと、急激に寒くなることが分かります。

例えば、標高0mの平地の気温が30℃の場合、標高3000mで5mの風が吹くと、どうなるでしょう。
標高と風による気温差=-23℃。体感気温は、7℃にまで下がります!

標高3000m↑ = -18℃
風速5m↑ = -5℃

登り始めはうだるような暑さでも、高山地帯にたどり着けば、真冬並みの気候。
風が強まる稜線付近では、より厳しい寒さもあり得る。
冷え込む夕方や早朝には、氷点下に近くなるかも……。

こんな風に予想を立ててみると、どのような防寒着が必要かおおよその想像がつきますね。

意外に見落としがちな寒さ

気象要因のほかにも、寒さを生む要因があります。
意外と見落としがちなのですが「汗に濡れること」による寒さです。

写真:大量の汗でしっかりとぬれてしまったウエアのイメージ

夏山では、大量の汗をかきます。
標高が上がるにつれて気温が下がっていき、稜線の風に吹かれると、ウエアを濡らしていた汗が、一気に冷やされていきます。
そして体温を奪います。いわゆる「汗冷え」です。

普段の生活でも、汗をかいた後に冷房の効いた電車に乗ってヒヤっとしたり、冬の入浴後、身体に水滴が残ったままでブルっと寒気を覚えた経験があると思います。
これと同じことが、気温差の激しい登山では、よりビビッドに起こります。

保温着だけで解決できない寒さ

ウエアが濡れていると寒くなる「汗冷え」の理由は、熱伝導率によるものです。

水の熱伝導率は、空気の25倍。

汗に濡れたウエアは、乾いたウエアに比べて25倍も外気や風の冷えが伝わりやすい。そのため、汗を吸い込んだウエアと肌を直接触れさせていると、それが外気と風で冷やされて一気に体温を奪っていきます。汗が乾きにくいコットンのTシャツを登山で着てはいけないと言われる最大の理由はこれです。

登った山は歩いて降りなければなりません。
震えが止まらず山小屋に避難したり、避難するにも動けず危険な状態に陥ってしまうことは経験の浅い登山者によくあるパターンです。

汗冷えは、外から保温着を着込むことでは解決できない寒さなので、別の防寒対策が必要です。いくら重ね着をしても、汗冷え対策を怠るとずっと寒いままです。

汗冷えは下着で対策する

汗冷え対策で重要なのは、肌に直接触れるウエア=下着です。
肌と接する下着でしっかりと汗の処理をし、外から保温着を着込む。これが理想的な防寒対策になります。

防寒に有効な下着の考え方については、こちらの記事に詳しく記しています。

ベテラン登山者は知っている、低予算から始める失敗なしの防寒 

夏山登山における防寒の基礎知識

夏山なら、防寒は適当でいいかも? と、山を始めたころは誰もが考えます。

しかし、山頂付近の気温は都市部の真冬並み。
汗冷え対策を怠ると、いくら重ね着をしても凍えてしまう。
それが、夏山登山における防寒の基礎知識です。

夏でも山が寒いのはなぜか。
知識をもとにしっかり対策をして、寒さに震えることなく山の感動にどっぷり浸りましょう。

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速乾性シャツの下に1枚着るだけ。finetrack独自の撥水技術で、汗冷え、ベタつき感、ニオイの解消に効果があります。
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