DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 相川 創

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スタッフの遊び記録
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自身4度目の台湾遡行。
ターゲットに選んだのは三桟南溪。19年前に海外遡行同人パーティによって遡行されており、未登ではない。ただ、今回のメンバーは、私以外の日本メンバーは台湾は初めて。未登・既登にはこだわらず、飛び切りきれいで面白いところに行こう!という観点で選ぶことにした。もっとも、未登にこだわると、エグイところか、支流しか、なかなか残っていないのだけれど。

この溪、台湾最大、いや世界的にも屈指と言っていい渓谷、太魯閣の一本南に位置し、流域の大部分が石灰岩・大理石地帯にすっぽりと入っている。非常に美しく、複雑に侵食された、しかも突破系のゴルジュがあるというではないか。これは間違いなく、面白いはず!

今回日本から4人、台湾から2人の6人のメンバーで、沢中7日プラス予備日2日の9日間の日程で挑むことにした。

11月12日の午後、台北のホステルで集合。顔合わせと装備チェック・仕分け。
買い出しを行い、翌日13日の早朝に台北を出発。

三桟の集落の学校の裏、ほぼ海抜0mから遡行開始だ。

序盤は河原だ。

台湾の渓は下流部は水が濁っているところも多いのだが、この溪、水が実にキレイ。序盤は河原歩きにたまにきれいな淵が出てくる癒し渓が続く。水の透明度が高いとそれだけでもテンションが上がる。

11月13日
初日は大きなヤマもなく終わるかと思っていたら、終盤、泳ぎが連続し始めた。

最後にちょいヤバのが出てきた。

ここは台湾のメンバー、Wangの見事な泳ぎで滝にとりつき、突破。
だんだんわかって来るのだが、Wanは泳ぎがむちゃくちゃ強い。泳力はもちろん、流れを読むのが実にうまい。なんでも、彼の母親はダイビングのインストラクターなどに「泳ぎ」を教える仕事をしていたというまさに泳ぎのプロで、彼は小さいころから荒海に放り込まれて泳ぎを鍛えられていたらしい・・・これは頼もしいメンバーだ。

11月14日
しょっぱなから長い淵の先にヤバい滝が見える。

底も見えない深い青い淵をハードな泳ぎ3ピッチでいったん滝の直下に集合する。

うまく流れを渡ることができれば、流れの左側は比較的容易に登れそうだ。しかし、この流れを横切ることは自殺行為にも思える・・・。
思案した末、右壁をボルト2本埋めてエイドで突破した。

続く滝も、水線右を巧みに突破。

へつる人々。
その後も泳いで登る系の渓相が続いた。流れが強いため、いちいちリードが空身で泳いで、後続を引っ張らなくてはならない。
ろくに進んでいないのに、気づけばすでに午後。

そして、出てきたのが大釜を持った3m滝。流れが強くWangの泳ぎをしても取り付くことすら不可能だった。

周囲を見渡すと、大釜の上、40~50mくらいに、滝の先に歩いて降りれそうなバンドが見える。しかし、そのバンドに乗るためには、その上さらに50mほど上から懸垂下降するしかない。
マジか~、というレベルだが、ここは行くしかない。

夕闇迫る中、巧みなルートファインディングでここしかない、というポイントから2ピッチの懸垂で狙ったバンドに乗ることに成功。3時間の大巻きを終えると、すでに夕方だった。これは・・・なかなか厳しいぞ。

今回の台湾メンバー、序盤部分を遡行した経験があり、今回はかなり水量が多いようだ。9月、10月に例年になく台風が来襲したせいではないかと言うが、水を含みやすい石灰岩地質のなせる業か。

11月15日
いよいよ両岸高く、スケールが大きくなってきた。
前方に500mはありそうな巨大な壁。あの下を抜けていくことになるのか。

大きな支流をすぎると、断続的なゴルジュに。高さこそないが厳しい泳ぎとクライミングの必要な滝が多く、いかに越えて、荷揚げをするか、チームとしての力が試されるところ。とはいえ、これこそがゴルジュの醍醐味であり、その戦略を考えるのが楽しい。ここも難儀したポイント。非常に流れが強く一か所中継ビレイ点を作りながらリードは突破。残りのメンバーは直でロープで引っ張られる。

続く淵は泳いでの突破が不可能だったが、右壁に活路を見出す。その先のスラブもなかなかいやらしい。
ひたすら泳ぎ。
源流を超える。

流れのド真ん中につきささる家ぐらいある巨岩。

このくらいのサイズの岩はざらにある。

門のような淵。原住民の筏のようなものが残されていて驚く。ときどき、こんな人工物を見かけた。原住民のハンターは、遡行するわけではないがまともなギアも使わずに森の中の独自の道を通って、沢沿いに築いた拠点に降りてきて幕営をしているらしい。彼らに最新のギアを使ってもらったら、最強の沢屋になるのでは。

3日目のキャンプ地。キャンプ地と天候には恵まれた。ただ、この日も結局目標地点までは進めず。
だんだん日程が厳しくなってきているのを感じていた。

11月16日
スタート早々、巨大な岩小屋があり、原住民のハンターのキャンプが。写真を取らないように、とWangに言われてカメラを向けないようにしていたが、近づいて行ったら一人はGoProを持っていて、女性陣はインタビューされていた。

大きな支流が入るところから、水路状ゴルジュが始まる。
このゴルジュは、幸い左岸沿いにすべてトラバースして抜けることができた。

やがて視界が大きく開け、崩壊壁に囲まれた空間に出た。
大理石の褶曲模様が美しい。

ここから、今までとは明らかにスケールが違うゴルジュが始まった。
まさに大地の割れ目。
大理石が複雑に侵食された側壁は、垂直を越え、巻くことは不可能だ。突破しかない。

序盤は泳ぎメイン。支流を越えてから、明らかに水の力が弱まっていて、ほとんどの淵はロープなしで各自が泳いで突破できるくらいになった。
しかし次第に狭くなるゴルジュは2m幅に。それにしたがって、水に勢いも増してきた。

ここからが今回の核心となった。

まず強烈なトユ状水路。

ギリギリのステミングで突破。

しかしその先で非常に困難な大釜を持ったCS4m滝が立ちふさがった。私は、後方にいたのでこれを見ないが、Wangの泳ぎをもってしても取りつくことすら不可能だったとのこと。

これを越えれば、ゴルジュ終了!というのが見えていたのだが。

これは、ゴルジュの入り口まで戻るほかない。

ギリギリのステミングで越えてきた恐ろしいトユ状区間を撤退しなくては。
荷物を持ったまま、下るのは非常に困難。まず一人が空身で要所にボルトでロープを固定しながらフィックスを張ることにした。トユ状の流れが注ぐ釜で反転流に巻かれて、難儀したが、何とか工作完了。

二人目が続いて降りたところで荷物を先に流し、下流でキャッチする作戦。
最後に人が下りる。一名流されて下で回収されることになったが全員無事に撤収完了。

 

”やりきったよね”

その夜、たき火を囲んで議論した。

この水量、このペースでは時間切れは必至の状況だ。
無難なのは、同ルート下降だろう。
でも、せっかくなので面白いルートを行こう。ということで、先日敗退した大ゴルジュを大巻きし、その先にある、ほぼ唯一といってよい緩そうな尾根をたどり、途中から支流の源流部トレースして、タロコに抜けるルートを試すことにした。

11月17日
一日かけた大高巻きの始まり。高巻き、と言っても巨大な尾根を丸々越えるほぼ登山みたいなもの。まずは天高く伸びるガレ場を延々登る。

凶悪なトゲトゲ植物の藪を右往左往して、稜線に上がる。稜線上は快適だった。

トゲトゲ植物は日本のもの比べてかなり凶悪。

高巻き終了後、ゴルジュ終了点を覗きに行く。これは無理だよね・・・と納得することはできた。

この日は少し先まで進んで終了。下降中に目星をつけていた砂地まで行ってみると、「ホテル三桟渓」とでも呼びたくなる絶好のビバーク地だった。本流沿いで過ごすの最後の夜を楽しむ。

11月18日
エスケープはここしかないと目星をつけていた尾根は、幸い、藪もほどほどで、難所もなく、期待以上に快適。ロープも出さずにぐんぐん高度を上げていく。

尾根沿いに1100mほど高度を上げてから、若干ややこしいナビゲーションをこなして左手の沢に下降。

ところがこの沢、全く水がない!
石灰岩の沢なので多少は予期していたものの、少しくらい水を取れるところはあるだろうと楽観視していたのだが、見事にカラッカラ。わずかな水たまりの水を飲む人々。

一同かなり焦りの色が見えてきたところで、大きな水たまりを発見。タンニンたっぷりの水を煮沸して、その夜をしのいだ。

ジャングルの中のビバーク地。水があれば、快適な場所だっただろう。

 11月19日
沢からは脱出したが、下山にはまだたっぷり二日はかかる。見事な巨木の森の中(屋久杉レベルのものがざらにある)の縦走はなかなか楽しい。猪股山山頂。標高2500mあるが、台湾では低山レベルで誰も知らないとのこと。

11月20日
最後のピーク江口山を踏む。

2000mの激下りをこなして太魯閣に下山。
下山後、激流脇に沸くエクストリーム温泉で汗を流した。

”お疲れさまでした!”
今回、目標のラインは残念ながらたどることができなかった。十分やりきったし、今回のコンディションと日程ではこれが実力だったということだろう。でも、日に日になじんでいく「チーム」が非常に心地の良い、楽しい遠征だった。

 

熱帯の台湾とはいえ、11月ともなるとそれなりに寒い。今回はそこまで標高が高いところに行かなかったが、2500mを越えれば、朝には濡れたものが凍りつくほどだ。
そんな状況で、泳ぎまくりの沢なので、アクティブスキン®+ラピッドラッシュ®+フラッドラッシュ®の3枚重ねのウォーターレイヤリングを実践。泳ぐ時はアウターをプラスして、その着脱だけですべてをこなすことができた。ちなみに、寝る時もこのレイヤリングならば焚火でほぼ乾かすことができるので、着替えもせずそのまま。8日間ほぼ着替えなしで過ごすことができ、緊急用の乾いたアンダーはお守りのまま終わって下山後の服になった。

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