DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 相川 創

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スタッフの遊び記録
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黒部五郎のテン場辺りから南を眺めると鋸のような、まるでフィッツロイ山群(スケールは全然違うだろうけど)かと思わせる異様な形の稜線が見える。これが、抜戸岳北方の秩父岩(秩父尾根)だ。
登山大系ですら、一言も言及されておらず、ネット上での記録も皆無なマイナーなものだが、かなり面白いクライミングができるのではないかと狙っていた課題だった。25年ほど前に発表された記録は見つかったので、全くの手つかずではないようだが、縦走できればおそらく初。
秩父沢を下からアプローチして、1泊2日のプランでトライしてみた。
【山行日】:2016年10月6日・7日

10月6日 新穂高(11:00)-秩父沢渡渉点(13:15)-2200mテン場(14:30) その後周辺偵察
10月7日 2200mテン場(5:40)-P3取りつき(6:45)-P3トップ(10:10)-P2取りつき(11:20)-P2トップ(15:00)‐テン場(16:20)-新穂高(21:00)

今年の夏に縦走路上から撮影された写真だが、奥の尾根が秩父尾根。なかなかの傾斜で、スケールも十分ありそうだ。

台風一過の初日は昼前に新穂高を出発し、小池新道を歩き、途中から秩父沢を遡行。
秩父沢はガレガレで、はたしてテントを張れる場所はあるのか。

標高2200m付近に奇跡的にあった、平らな岩盤上(増水したら容易に流されそうだが・・・)にカミナドームを設営。沢の入り口から岩場基部まで、ここ以外にテントの張れそうな平地はなかった。

空身で偵察に出る。ガスって視界がなかったが、徐々に晴れて岩塔群が見えてくる。(おそらく)秩父尾根のP3、P2と思われる岩塔と取りつきを確認。おおよそのラインに目星をつける。

一本北の尾根にも顕著な岩塔が2本ほどあった。素晴らしい場所だ。

翌朝、快晴。
秩父尾根P3とP2が朝日に映える。

まずP3。1ピッチ目はガレガレのルンゼ。

青空が美しい。

2ピッチ目。そのままルンゼを詰めたほうが傾斜は緩かったがあまりにボロいので、右手のクラックに活路を求める。

リッジに上がる。昨晩は氷点下だったようだ。この秋初めて氷を見た。

3ピッチ目。

見た目は容易そうだが、フォローしてみるとかなりシビアな草付きのクライミング。どの岩も、ブッシュも信頼が置けない恐ろしさ。
4ピッチ目は、はじめワンポイントのA1でトラバースの後、ボロい岩を少し登り、ブッシュに沿って直上、間もなくP3頂上。

P3から見たP2。恐ろしげな大チムニーが見えたが、上部は大きくハングしていて、かなり広い。かっこいいラインだが、このラインのトライは断念した。

すべて岩塔なので、懸垂で降りるしかない。途中の灌木も入れて2ピッチでP3,P2間のコルのすぐ下に降りる。

P2は稜線沿いには、登攀ラインが見いだせなかった。いったん北面側に回り込み、昨日偵察時に目星を付けたラインへ。P2の1ピッチ目。岩が積み重なったようなところを登っていくが、P3よりはだいぶ岩もしっかりしている。

2ピッチ目の大チムニー入口。ここからが今回のクライミングのハイライトか。傾斜はほぼバーティカルで、上部はチョックストーンに押さえられている。ムーブ的にはせいぜい5.8か5.9程度と思うが、迫力に負けて抜け口でA0。クライミングとして、非常に質の高いピッチだった。ただ、ザックを背負ってのフォローは大変だったようだ。

3ピッチ目を行く。急にガスが出てきた。

4ピッチ目。とにかく岩がぼろくて怖いピッチだった。後のルート写真をよく見るとわかるが、P2は4つほどの小ピークからなる。近くに行ってみると、それぞれのピーク間のギャップは越えられる代物ではなく、写真左から2番目のピーク直下(上まで行くと下降できそうになかった)で今回は終了とした。

P2トップから。縦走路よりは明らかに上にいて、標高2700m程度と思われる。
懸垂しか下降手段はないが、先の見えない恐ろしい懸垂だ。

幸いテラスで懸垂ピッチを切れた。ボルトを埋めて最後の下降。

結果、岩塔二つ(たぶんP3とP2)を登ることはできたがP1は残して時間切れ。もっとも、P3もP2も稜線通しではとても登れず、「縦走」とは言い難い弱点を突くしかなかったのだが、いずれもなかなか面白くも刺激的なクライミングができた。

写真左はP3のライン(ただし、写真を見直してみてもよくわからず、余り正確ではない)

写真右はP2のライン。
秩父尾根の岩塔群、2700m近くにそびえるタワーというロケーション、いずれも3~4ピッチは取れるスケール、そしてクライミングの内容もなかなかのものだった。ただ、アプローチの長さ(取り付きまで5時間)と危険さ、そして岩のもろさもあり、やはり篤志家向けの課題だろう。

 

好天のアプローチはまだまだ暑いが、沢に入ってガスの中となれば途端に寒い。朝は氷点下まで気温が下がったようだ。標高2700mの岩塔の上に上がると、風が非常に冷たかった。

そんな目まぐるしく変わる状況となれば、ニュウモラップ®が非常に役に立つ。クライミングの動きも全く妨げないので登攀中もずっと着たままだった。

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