DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

2024年春、「登山道を守る人を応援する」プロジェクトが始動!

各地の登山道で何が起きているかという「今」と
そして、「これから」を知る、シリーズイベント企画。
各地の登山道整備に携わる方々を紹介します。

 

今回の【登山道を守る人を応援する】には、全国各地の登山道整備団体と
協働したプロジェクトとなります。今回のプロジェクトで一緒に協働する
人物・団体を紹介します。

 

一瀬圭介氏(安達太良・吾妻 自然センター)より

今回の環境保全対象となる安達太良山(あだたらやま)は、福島県にある活火山で、その山麓エリアを含め磐梯朝日国立公園に指定されています。日本百名山の一つに数えられ、地図登山アプリYAMAPの統計によると、ここ3年連続で東北地方において最も登られている山として紹介されています。その一方で、主要な登山道の荒廃が激しく、ここ数年の集中豪雨の影響もあって、いよいよ「危険」と表現せざるを得ない箇所も多くみられるようになってしまいました。福島県は東日本大震災やその後の大きな地震、風水害により、幹線道路などの補修を含めて土木関連にかかる費用も嵩み、登山道の保全に当てられる公的な資金も少ないこともあり、25年前に整備された安達太良山の主要な登山道の保全もされないままとなっております。

そこで安達太良自然センターの開設と同時に、福島県が国有林を借地している路線を対象に環境省や専門家を入れての現況調査を実施。その結果をもとに荒廃の大きな要因となっている雨水処理から手をつけるため数十年手付かずであった横断溝の清掃や、近自然工法による水路の確保などをはじめました。また、安達太良山には60年間営業を続けてきた山小屋「くろがね小屋」がありましたが、建屋の老朽化のため昨年2023年より休業に入っています。それにより、多くの登山者客が休憩場所として利用していたトイレも利用できなくなり、小屋周辺でのし尿処理の問題が発生しました。建て替えが終わるまでは、仮設トイレなどの設置は予定されないため、安達太良自然センターが中心となり、携帯トイレブースの運用や携帯トイレキットの販売(販売代金に協力金を含め運用資金の足しにしている状況)を開始し、まずは1シーズン乗り切りました。

直近の運用資金もさることながら、今回のプロジェクトを通じて安達太良山の現状と将来にわたっての課題を磐梯朝日国立公園を訪れる方々や関係する行政機関等、そしてこの大自然を経営資源にしている受益者(山麓の温泉地の宿や商店、山からの伏流水を使っている酒造、山に遊びに来る方々がまとっているギアやウエアなどを提供しているアウトドアブランド等)の方々に伝えることができれば、それぞれが何をしなければならないのか、何ができるのかを考える機会になり、見過ごされてきた現実に向き合う一歩になるのではないかと考えています。これは、一時的な登山道整備の話ではありません。次の世代がこの地に暮らし、働き、そしてこのかけがえのない自然を求めて訪れてくる人たちが火山の恩恵である温泉に浸かったり、美味しいお酒を飲んだりして自然体験を愉しむ場を残していくための”第一歩”になりうるチャンスだという想いも込めて取り組もうと思っています。

安達太良・吾妻 自然センター WEBサイト
https://adatara.jp

安達太良・吾妻 自然センター Instagram
https://www.instagram.com/adatara_nc

伊藤二朗氏(雲ノ平トレイルクラブ代表)より

世界的に環境危機が叫ばれ、グローバリゼーションや都市化の負の側面が顕在化する今、「自然」との向き合い方を問い直すことの重要性は、ますます大きくなっているように感じます。ネーチャーポジティブなどのスローガンが掲げられ、アウトドアブームが世界中で起きつつあるのも、まさにこうした時代背景の顕れということができます。

しかし、そんな中で日本の国立公園の管理体制が危機的な状況にあることを知っている方がどれほどいるでしょうか?日本では、世界有数の登山人口を誇りながらも、国立公園の管理体制が成熟しておらず、各地の山岳地域で景観や生態系の荒廃が急速に進行しています。歴史的に、登山は流行ったけれど自然保護の営みは日常に根付かなかったというアンバランスの中で、国立公園のあり方が消費的な観光利用に傾いてしまっているのです。

一般社団法人雲ノ平トレイルクラブは、山小屋やアウトドアメーカー、登山者、各種専門家など、さまざまな民間レベルの主体が連携し、雲ノ平エリアで、景観や生態系に調和した環境保全活動のロールモデルを築くことを目的として設立されました。この度、ご縁あってfinetrackとヤマップの共同企画によって、多くの方々と私たちの活動を共有する機会をいただけたことを、とても嬉しく思っています。まだ小さな芽ではありますが、この活動を通して皆様と、創造的なアウトドア文化を育んでいければ幸いです。

一般社団法人 雲ノ平トレイルクラブWebサイト
https://kumonodaira-trailclub.com/

山田琢也氏(奥信濃100実行委員会)より

今回の整備対象となる本沢川登山道は、樹齢300年以上のブナの原生林が残るカヤの平高原や、
高標山(1,747m)と里を結ぶ重要なルートです。しかし、登山道の荒廃による安全性の低下が課題
なっています。かつては地元の学校登山ルートとしても利用されていましたが、特に2カ所で
崩落が進行し、定期的な整備が行われずに放置されたため、利用が減少し、さらに道が荒れるという
現状です。

目標は、崩壊した2カ所を近自然工法を用いて修復することで、生態系の回復と安全性を向上させることです。これはアウトドアフィールドとしての価値を高めることにもつながります。大会以外にもより多くの人に利用していただき、里山が支えたかつての暮らしを体感し、地域の自然資本の価値を再確認していただくことを目指しています。また、地域行政と協働し、持続可能な登山道管理の仕組みを構築し、そのための人材育成も行います。

有限会社スポーツハイムアルプ(コーポレイトサイト)
https://sportheim-alp.com/

ALP SKI TEAM(アクティビティサイト)
https://sportheim-alp.com/ski_school/

NPO法人富士トレイルランナーズ倶楽部

ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)を開催するための団体として、
2010年にトレイルランナーやトレイルレース関係者を中心に結成。

2022年春から環境省富士五湖管理官事務所と協働で、
登山道の荒廃を憂いていた地元の方々やボランティアさん達と共に
山中湖村の石割山登山道補修プロジェクトを開始

石割山登山道は長年に渡り多くの人に愛され利用されてきましたが、
保全の手が不十分であった結果、自然作用と相まって荒廃が進行。

残念ながら石割山に限らず国内の多くの登山道でおこっているネガティブ方向に
大きく崩れた「保全と利用」のバランス。これをポジティブ方向に反転させるには、
登山道の補修以上に周辺生態系の回復作業が最重要であり、
そのためには、観察と手直しを繰り返しながら数年がかりの腰を据えた取り組みが
必要となり、「石割山2030」を策定

石割山2030
https://fuji-trailrunnersclub.com/ishiwariyama/

北杜山守隊

「みんなで守る、山の道。」
誰かがやるのではなく、みんなで山の環境を守っていく世の中にしたい。
山を愛するみんなで、持続的な活動ができる仕組みをつくる。
登山者の増加、大型台風の襲来などの自然現象により、
登山道の荒廃が加速度的に進んでいます。利用に対して、保全が全く足りていない状況。

登山道の環境保全活動に関わることで、関わった人にとってその山は
心の山「ホームマウンテン」となります。活動の意味を周囲に伝える。
補修箇所が気になって何度も行く。家族や友人を連れて行く。
そんな連鎖も生まれます。多くの人を巻き込むことで、
その山に対する「当事者」を増やすことができると確信しました。

誰かがやるのではなく、みんなで山の環境を守っていく世の中にしたいと考えています。

HP:https://hokuto-yamamoritai.org/
Instagram:https://www.instagram.com/hokuto.yamamoritai/
Facebook:https://www.facebook.com/hokuto.yamamoritai

 

      
参考動画:登山道の現状やを整備活動のエッセンスが詰まっている北杜山守隊の動画です。

 

 

 

写真提供:北杜山守隊 奥信濃100実行委員会 安達太良・吾妻自然センター
雲ノ平トレイルクラブ  NPO富士トレイルランナーズ倶楽部

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