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極西ネパール登山隊2017: 同志社大学体育会山岳部

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タイトルにある「道なき山」という言葉。私たち同志社大学山岳部では、今年極西ネパールに聳える「道なき山」、未だ誰も頂を踏んだことがない未踏峰への初登頂を目指しました。これから3回に分けて今回の遠征のレポートをしていこうと思います。

その未踏峰との出会いは、2年前のことだ。
2015年、極西ネパールAicyen峰への遠征準備について発表中、ひとりのOBがスライドの1枚にあったGoogle Earthの衛星画像を指さし、熱っぽく言われた。
「ここに未踏峰があるはずだ!」。

その方は、半世紀も前に同様の地域に行き、見事極西ネパールの主峰とも言える山を初登頂された経験を持つ。その時、頂上から確かにその未踏峰を見たと言う。
(そのとき撮影されたものが冒頭の写真)

当時は、遠征に直接関係なかったため、指摘された未踏峰に関して特に議論されることはなかったという。
しかし、半世紀を経たいま、もう80歳を超えようかというOBが発した、あの未知への情熱が確かにこもった発言は、私の心に印象深く残った。


<半世紀前の遠征報告資料を読み解き山を調べた>

この後、この未踏峰に関して調べを進めた。
そして2016年12月、この未踏峰を目指し、遠征を行うことを決めた。

調べるうちに判明したことがいくつかあった。

1)この未踏峰はネパール政府による登頂許可が取れていないこと。
2)ベースキャンプまでの道のりが不明で、キャラバンルートを開拓しながら進まなければならないこと。
3)キャラバンルートが不明なため遠景写真しか存在しない。そのため、登攀ルートの状況が全く読めないこと。

これら3つの社会的・自然的困難がこの未踏峰には立ちはだかっていた。
まさに「道なき山」だった。

そもそもこの未踏峰は、地図にも掲載されていない。そのため、いくらネパール政府に登頂許可を求めても、存在しない山に許可など出るはずがない。つまりは、まずこの山が存在することを政府に証明することから始めなければならないのだ。

資料を集めるも、手掛かりは周辺を歩いたトレッカーの遠景写真しか存在しない。しかし、他人の借り物の情報では、証明したことにならず認めて貰えない。もはや、持てる情報をどうこうした所で、埒が明かないのは明白だった。

 
 
未踏峰の存在をこの目で確かめ、証明できる写真をこの手で撮影するしかない。

2017年5月、私たちはネパールへと飛んだ。

45日間の滞在。

訪れる村々で、現地の人に聞き込み調査をし、断片情報を得ながらのキャラバン。
不安、疲労、空腹のなか、奥地へ行けばいくほど、少しずつ情報の確度が高まっていくことに一抹の希望を得ながら進んだ。
 
 
<左写真:途中の村々でキャラバンルートの聞き込みを行っている様子>

そうして、なんとか山を写真に収めることができた。
これまで未知であったキャラバンルートも解明でき、これらの情報を元に2017年7月中旬までには登頂許可が出るだろうとの成果を得た。

偵察行とも言えるこのキャラバンは、予算を切り詰めたおかげで、30kg以上の荷物を背負いキャラバンを行ったり、カエル・雑草・古米を食べることとなり悲惨であったが、未踏峰への道が拓けたことに、満足感を得て帰国した。


<食糧の干し蛙>

ところが、2017年遠征出発直前のことである。
7月31日になっても許可の連絡が来ない……。

こちらから連絡をしてみたが、長引く選挙の影響が大きく、恐らく許可は取れないだろうと言われた。
許可が取れないことは、即ち目的としていた山への登山活動が出来ないことを意味する。
一時は拓けたかのように見えた未踏峰への道が遠のいていく。

ここで諦めるわけにはいかず、カトマンズ入りした後も役人と会い交渉を続けた。


<カトマンズではスーツを着て交渉にあたった>

だが最終的に、ネパール政府による登頂許可は取得できなかった。
私たちは社会的な壁に阻まれ、やむなしに目標を変えることになった。

目標を変える際、「ヒマラヤ登山とは何か」という問いにまで立ち返る場面もあった。より本質的に山を考える機会ともなった。そして、かのOBの未知への情熱を、何度も思い出した。

道が絶たれたなかでも、積極的に前進する方法はないか?
どうにかして自分達や応援者の方にも、納得のできる遠征に作り上げるには、どうすればよいか?
結束を固め、議論を繰り返した。

そんななか、目標に絞ったのが、未踏峰のさらなる偵察とシュワルツ・ワンダ・スピッツェ峰の初登頂であった。


<全員で地図を広げ、目標について議論する>

極西ネパール登山隊2017
同志社大学体育会山岳部

創部92年の伝統を持つ。極西ネパールにおいて、1960年アピ(7,132m)初登頂、1963年サイパル(7,031m)初登頂と西ネパールの主峰ともいえる山々の初登頂に成功。また近年でも、西ネパールの地域において多くの足跡を残している。

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