最強の5レイヤリングとは

ナンダ・コート初登頂80周年記念登山隊 隊長: 大蔵喜福(おおくら・よしとみ)

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いまから81年前となる1936年、立教大学山岳部が日本初となるヒマラヤ登山に成功した山、それがナンダ・コート峰です。その山頂に埋められた旗を探し出すため、2017年秋、再登頂に挑んだ人たちがいます。
なぜ、何のために、歴史を遡ってナンダ・コートを目指したのでしょうか? 時空を超えた登山プロジェクト「ナンダ・コート初登頂80周年記念登山隊」について隊長・大蔵喜福さんが語ります。(finetrack編集部)

昨年秋、9月中旬から10月中旬までひと月の間、インド・ウッタラカンド(ガルワール)ヒマール、ナンダ・コート(6861m)峰へ登りに行った。
山はインド中央部北域ウッタランチャル州(ネパールと国境を接する)の北辺にある。山域にはインド国内最高峰、双耳峰のナンダ・デヴィが聳える。

ナンダ・コートは、81年前の1936年(昭和11)同時期に、立教大学山岳部OB堀田彌一を隊長に、院生 山縣一雄、現役 湯浅巌、濱野正雄と大毎・東日新聞特派員 竹節作太の計5名とアン・ツェリン・シェルパが、日本初のヒマラヤ登山に成功した「聖なる山」である。

当時は、二・二六事件が起こり、日中戦争から第二次世界大戦へと突き進む、きな臭い世相。そんな時代の海外登山である。
‟何を考えているのだ? この若者達は”
計画を先行した他大学山岳部もあったはず。だが、どうして彼らだけが実行できたのだろう?

欧米列強の国々にしても、まだまだヒマラヤへの登山はいくらも成功しておらず「ヒマラヤは夢のまた夢、憧景の彼方」にあった。
そんな時代のなかで、なぜ、この若者達は初登できたのか・・・
私は彼らの登山思想とその行動が知りたかった。

 <ナンダ・コート南正面から見る南壁、妖しげな山容だ>

彼らの残した多く記録からは驚くべき執念が窺える。
昭和初期からの登山実績は圧倒的、国内冬期の未踏ルートを超人的スキルと体力で次々と成功させ、さらに数年にわたる情報収集や調査研究、オリジナルの装備考案と製作、費用捻出等、計り知れない苦悩を乗り越え周到な準備に没頭する。そのすさまじい努力と隊員たちの共有する堅牢な意思と絆には脱帽である。

そして、多くの人たちの後押しでヒマラヤ登山へ突き進むことができた。同行の竹節記者は初めて回す映写機で、世界初のフルサイズ35㎜の映像記録を撮った。そのほか登山記、新聞記事、写真集など隊員たちの生きざまが残る。その後の登山界に永続すべき最良の教科書として今も生きるものだ。

<ナンダ・コート1936年立教大学隊の残した記録映画のタイトル映像>

その一端が、彼らが残した一本の記録映画に垣間見える。映像を目の当たりにすると、引き込まれた。画像は汚れてはいるが、その音声とともに臨場感に興奮し、当時の時代背景の中よくぞこれだけの登山を成し遂げたものだと・・・。それも世に出てまもなくの若造と学生がたったの4名で・・・。

顔の表情などの微細はつぶれて見えないが、そのストーリーの中で朗らかに充実した笑顔が想像できたのである。
そんな偉業に光を当て、世の若者たちに知らしめたいという思いが、再登頂へ駆り立てた端緒であった。
ナンダ・コートを登れば彼らがわかる。登ろう!!と決意した。
2016年10月5日、初登からちょうど80年目の登頂日であった。

<ナンダ・コート南壁をゆく>

厳しい時代背景のなか、どのような心意気と気持ちを抱いて攀じ登ったのか、同じ人数、同じ時期、同じルートで、追体験をしたいと思った。
残念ながら、インドの国内事情で当時と同じルートを登ることはできなかったのだが、タイムトンネルを溯ってその時代に生きた先人を肌で感じてみたい。
そして頂上に証として埋めた三つの旗と友情のタルチョを何としても探し出したいと思った。

掘り出す事で、‟物言わぬ物証”が、‟物言う物証”に変わる。
現在と過去を結び付け、登山史に蘇る多くの教えを今に繋げることができる。

その悦びを、隊員と分かち合いたい。
彼らの行動に敬意を払い、頂を極めたいと思った。


 <隊長と隊員4名のメンバー構成は81年前と同じ。撮影班と現地スタッフが加わった>

メンバー

隊長 大蔵喜福
隊員 堀達憲、鈴木拓馬、山田祐士、門谷優(※)   ※は撮影を兼ねる
撮影 古賀志信、林宏、石井邦彦(※)、中島健郎(※)    ※は登攀隊員を兼ねる

1/28 イベント開催決定!

「ナンダ・コート再登頂プロジェクト ~ 海外高所登山の心構え~」

再登頂アタックの全容を隊長の大蔵喜福氏が語ります! 年にわたる高所登山の生々しい経験をもとに「海外高所登山の魅力と心構え」「高所登山でも有効なウエア知識」などもレクチャー!

・開催日時:2018年1月28日(日) 16:00~17:30
・開催場所:finetrack TOKYOBASE

詳細・ご予約はこちら>>

ナンダ・コート初登頂80周年記念登山隊 隊長
大蔵喜福(おおくら・よしとみ)

1951年生まれ。長野県出身。
エベレスト、マナスルなど8000m峰を7回登頂。マッキンリーにおける「風の研究」で第3回秩父宮記念山岳賞を受賞。