DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 吉田 春陽

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スタッフの遊び記録
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来春に3度目のK2遠征を控えた小谷部が、高度順化トレーニングと開発中のプロダクトのテストを目的に穂高への山行を立てていた。
そこへ、半月板損傷から復活した芳本と、そんな二人を撮影したい私が便乗し、計3名で山に入る事になった。
人数が増えるとそれぞれ行きたいところも増え、涸沢岳西尾根から穂高岳山荘を目指し、ジャンダルム往復、その後大キレットを越えて、南岳の西尾根から降りる欲張りな計画となった。
【山行日】2017年12月30日~2018年1月1日 
【メンバー】小谷部・芳本・吉田 【写真】吉田

初日は、新穂高から右俣林道を通り、涸沢岳西尾根を目指す。
白出沢の先から涸沢岳西尾根に取り付き、樹林帯内の幕営適地を目指す。
単調な林道歩きが5キロ弱と、樹林帯の急登がそこそこといったところだ。

ルート上は真新しい雪に覆われている。
スタートが遅れた事が幸いし、先行のトレースに助けられた。

涸沢岳西尾根に取り付いてからもトレースをたどり、標高を上げていく。
芳本はスノーシューを履く。小谷部と私はツボ足にピッケルを持った。踏み固められた足跡を踏み抜くと腰まで沈む。一方で、所々岩や氷の出た急斜面もありどちらの道具も一長一短のようだった。

2200m付近での幕営を予定していたが、1900m付近で見つけた幕営跡で行動終了とした。
先行パーティが多く、場所探しに苦労する可能性があったからだ。

テントに潜りこんだら、小谷部のパルスオキシメーターを借りて血中酸素を測定してみた。
高度に順応しているかの目安を知ることが出来る。

極端な変化はないようだった。いつも初日は調子が上がらず、高度に弱いのだ思い込んでいたが、どうやら自分への言い訳だったらしい。

■2017年12月30日
それなりに風もあり、気温も低い。視界良好。今日の行程は穂高岳山荘までと短い。
しかし雪が腐る前に危険箇所は通過したいところだ。

標高を上げるにつれて、あたりの展望も開けて南岳、そして大キレットが目に入る。
キレット内は雪稜をイメージしていたが、岩が出ておりかなり手強そうだ。

森林限界を超え、稜線に出ると自分たちのいる尾根上の雪の少なさも露見した。
雪のすぐ下に岩が隠れていて、アイゼンが決まりにくい。

同時期に同ルートを何度か訪れている小谷部も、経験のない雪の少なさだという。

雪の溜まる蒲田富士付近。
視界がなくなると居場所を把握しにくく、枝尾根や谷に迷い込みやすい地形がしばらく続く。
この先は雪のついた岩稜で、背丈と同じくらいの簡単な岩場を繰り返し越えていく。

久々の重たい荷物は堪えるが、休憩をとりながらのんびりと涸沢岳を目指す。
山頂直下で夏道と合流し、200mほど下り、穂高岳山荘に到着した。
冬季小屋に入ると、すでにソロを含め4パーティ分の荷物があった。
スペースは十分にあり、問題なく3人分の場所を確保できた。
周りに気遣いせずにすむテントを張りたいところだったが、明朝の早出を考慮し、テント撤収の手間を省くことにした。

どうやら明日の午後以降、天候は悪くなる一方のようだ。
明日の午前中に樹林内に逃げ込まないと、しばらく小屋に閉じ込められることになる。
残念だが、この時点で大キレットからの南岳縦走は諦めることになった。
そうと決まれば、共同装備の確認をし、ロープを捌き直して、さっさと寝袋に入る。

■2017年12月31日
3時半起床。下り調子の天候を嫌ってか、他のパーティも起床が早い。
5時半。アタックの身支度を整え、小屋の外に出る。月が明るいはずだが、流れる雲に隠れて暗闇の世界だ。奥穂高岳山頂でちょうど今年最後の日出を迎えられそうだ。

ヘッドライトの明かりを頼りに慎重に歩みを進める。特別難しい場所はないが、締まった雪に蹴り込むと、甲高い音が鳴り響き、暗闇と相まって不気味さを演出してくれる。

次第に風が強まる中、穂高岳山頂にたどり着いた。

6時40分頃。2017年最後の太陽が登りはじめる。しかし風は弱らない。いよいよガスも出てきた。
残念だがここで撤退を決めた。

中央のドーム状の岩峰がジャンダルムだ。直線距離で500m以内に迫っていた。

穂高岳山荘まで戻り、デポしていた装備をパッキングし、下山を開始する。
風はますます強く、視界も悪くなり始めている

昨日は穏やかだった西尾根を下っていく。右側は切れ立った滝谷だ。
風に煽られながら、慎重に歩みを進める。

懸念していた蒲田富士への下降点も、問題なく見つけることができた。
しかし、ここから更に風が強まり、雪の溜まった谷から吹き上げる地吹雪で視界がなくなってきた。

地図とコンパスを頼りに、ところどころ腰までのラッセルを強いられながらゆっくりと降りる。
稜線上に雪庇が発達し始めており、昨日の様子と大きく異なっている。

どんどん風が強まる中、遠くからかすかに雷鳴のような音が聞こえてきた。

それからしばらく下ったところで、岩陰から3羽の雷鳥の姿が現れた。極寒の北アルプスで越冬する彼らの生命力には驚かされる。その逞しくも凛々しい姿を眺めるうちに、地吹雪も落ち着いてきた気がする。樹林帯もすぐそこに迫っている。安全地帯まで降りてきた。

少し残業すればこの日のうちに下山する事も出来たが、移動中の車内で新年を迎えるのも空しい。
右俣林道出会いの手前でテントを張り、年越し蕎麦と、残り僅かになったブランデーで、2017年登り収めと無事の下山に乾杯した。

 

ベースレイヤーはメリノスピンサーモのジップネックを着用。ウールの持つ保温力、防臭性と、ポリエステルの汗処理能力を兼ね備えている。ダンボール状の中空構造に仕立てることで、薄手でありながら、優れた保温力を持つ。ただ暖かいだけでなく、汗処理をスムーズに出来るので、臭いも発生しにくい。ヘルメットのライナーとしても使いやすいフードつきタイプもお勧め。

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