ドライ、だから温かい ドライを叶えるメカニズムを解説 5レイヤリング

投稿者: 吉田 春陽  ■写真:吉田・芳本

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スタッフの遊び記録
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何年か前の夏、上高地から水俣乗越を越えて、北鎌のコルへ取り付き登った北鎌尾根。その頃から、よりクラシックなルートである尾根末端部から挑戦したいという思いがあった。
「北鎌は春の方が楽」なんていう誰が言ったのかわからない噂をあてにして、GWの連休を使って挑戦することにした。春と夏では諸々条件が異なるが、ザレや藪の多いルートというのは、春の方が楽だったりするものだ。そんな期待感を持って挑んだが、結論から言うと、決してそんな事はなかった。
岩稜のアイゼンでの昇降は精神的に疲れるし、何よりも初日の沢セクションも厳しく、冒険要素を強く感じる。非常に充実感にあふれた山行であったことには間違いない。
■アクティビティ日:2018年4月29日~5月2日

■4月29日

大町市のタクシー会社の事務所に車を停め、タクシーに乗り込む。途中、七倉ゲートの登山指南所に立ち寄って頂き、ルートの状況を確認する。
沢は雪解け水で増水。沢技術、雪山技術、ナビゲーション力、総合力が求められること。この連休に北鎌尾根を目指したパーティは、前日にゲートを通過した1組のみであることを聞く。
そして最後に優しい言葉で、「無理はしないでください」と送り出して頂いた。

高瀬ダムから湯俣までは、整備された道がついており、迷う心配はない。しかし脇を流れる高瀬川は轟々と音を立てている。ほんとにこんな川を遡れるのだろうか。
参考にした記録では渡渉は避けられないらしいが、例年に増して水が多いのは明らかだ。

そんな心配や、ここから先のルートについて擦り合わせているうちに、湯俣に到着した。ここからいよいよ遡行がスタートする。

湯俣ダムの先の吊橋を越えると、早速1箇所目の渡渉点が近づいてくる。想像通り、いや想像以上の水量だ。

冬靴やウエアを濡らすわけにはいかないので、川に入る前に着替える。芳本はスキンメッシュ上下にエバーブレスレグンの上下を直接着用。私は上下アクティブスキンに、フラッドラッシュタイツ、そしてトップスは開発中のL5を着る。足元はネオプレンソックスに、沢履かサンダルだ。

身長178センチの芳本が偵察に近づくと、腰を悠に越える水位があることがわかった。それなりに流れもあり、慎重に突破口を探る。何度かトライアンドエラーを繰り返しながら、うまく流れの弱点をついて芳本が突破した。

同じラインで私も後を追うが、足を掬われ、前に踏む出すことができない。結局ここは芳本にロープを張ってもらい、なんとか渡り切ることができた。
生粋の沢男・芳本と私では、渡渉技術の差は確かに大きいが、10センチの身長差と20キロの体重差は、無視できない要素に感じた。

その後も腰以上の渡渉を繰りかえしていく。

もちろん流れている水は雪解け水なので、とてつもなく冷たい。動き続けている為、なんとか耐える事ができる。

10回以上の渡渉、そしてへつりや、高巻きを繰り返し、やがて沢の流れは二つに別れる。千天出会だ。

間も無くP2の基部が見えてきた。
いよいよ明日から北鎌尾根にとりつくわけだが、実は日中に上流から下ってくるパーティと遭遇した。七倉ゲートで前日に入山したと聞いた二人組だ。どうやら最後の取り付きへの渡渉ができず、撤退してきたとのことだった。
つまり、この連休に北鎌尾根に末端から取り付くのは、我々が最初になりそうだ。

■4月30日

北鎌P2肩への急登でスタートする。ここから先はあまり事前のリサーチもしてこなかったが、等高線の詰まった地図を見る限り、手強そうだと考えていた。

案の定、ロープを出すほどではないが、一歩間違えると命はないだろう、といった程度の急登がP2肩まで続く。

その先のP2からP3は思いのほか遠く、藪のなかをもがいて、相当な時間を掛けてしまった。

雪の量が増えるにつれてペースも上がり、順調にP5に差し掛かる。短い懸垂から、P5とP6の天上沢川を大きくトラバースし、P6、P7鞍部に突き上げる。ここまでは藪がしつこく、アイゼンなしでゴリ押してきたが、いよいよアイゼンを装着した。
この辺りは、雪の硬い時間に通過する場合、確保した方が安心だろう。我々が通過した時は雪が緩んでおり、問題なく通過できた。

その後P7を懸垂1回を交えつつ、北鎌のコルへ。時間もかなり押してきていたので、この日の行動はここまでとする。

■5月1日

4時に起床。テントの外は雲ひとつない青い空が広がっている。しかし、初日の渡渉と昨日の藪漕ぎの消耗が大きく、2度寝3度寝と繰り返し、出発が7時半を過ぎてしまった。
テントの撤収に外へ出た頃は放射冷却で冷えて雪もカチカチだった為、アイゼンを装着して歩き始める。しかし、気温は急激に上がってゆき、しばらくすると雪の落とし穴だらけになってしまった。

これが厄介で、グサグサの雪に何度も蹴り込んでステップを作り、ようやく抜け出すのだが、体力と時間の消耗が大きい。そして何よりも気力を削がれていく。
こんなことを繰り返して、独標の取り付きまで3時間近くかかってしまった。

独標は直登することにしたが、取り付きのルンゼが凍っているように見え、念の為ロープを出す。その上部のリッジは、切れ立ってはいるものの特に確保の必要は感じず、せっかく出したロープを解く。
しかし、この辺り二人とも写真が撮れていないので、それなりに険しかったのだと思う。

リッジを越えると緩やかな雪壁となり、独標だ。独標へ上がると初めて槍ヶ岳が姿を表した。
まだまだ険しい稜線が続く。

その先は雪の付きもよく、快調に進むが、登りと下りは決まって雪がなく、前爪での昇降となり緊張感がある。
やばいとろこには大抵懸垂支点はあるが、極力クライムダウンできるラインを探りながら進んでいく。

予定よりかなり押してしまったが、17時頃P15へ無事到着した。明日から天候は下り坂の予定だし、実はトラブルから食料難に陥っていたりと、このまま多少の無理をしてでも、今日中に槍を乗越したい事情もあったが、さすがにそこは気持ちを抑える。

■5月2日

4時頃起床。天候はまだ崩れていない。空が綺麗なので、写真を撮りに外に出る。その間に食事と水の用意をしてくれている芳本に感謝。
撤収し出発するころには空はどんよりと薄暗く、雪が散らつくようになった。

いよいよ槍ヶ岳本峰が迫る。
トレースが残っており、楽なはずだが、登攀力の差か、雪の状態の差か、トレース通りのルートでは登れず、右往左往。

気温が低く、昨日とは全く異なる雪の状況。
今年2月に槍ヶ岳に訪れた時の積雪の少なさから、本峰は夏と同様の岩の登攀になるのだろうと想像していたが、完全に雪壁、そしてミックスの登攀だ。しかしアックスもよく決まるので、快適だ。

結局最後までロープを出すこともなく山頂まで辿りついた。

槍ヶ岳山荘や槍沢は、それなりに賑わっており、安全圏に戻ってきた安心感がある。

ここから先は、上高地の最終バスに間に合うよう、駆け足で下山する必要がある。上高地までの約20キロと大町に停めている車の回収まで、長い長い道のりではあったが、水俣川の遡行や、藪漕ぎ、食料難の行程からすると、ほんのエピローグに過ぎなかった。

 

沢セクションでのレイヤリングは悩ましいところだったが、アクティブスキン®とアウターシェルの組み合わせで挑んだ。非常に薄い生地だが、これ1枚である程度の水中保温力がある。撥水性のおかげで水切れもよく、陸に上がってすぐ乾くので、冷える事もない。濡れに強いドライレイヤーは、今回のような濡れる前提のルートや、万一の緊急時用の保温着として効果的だ。

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