DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 根本 勇哉  ■写真:根本、石鍋、四條、西山

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スタッフの遊び記録
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TOKYO BASEスタッフ根本の、少し遅めの夏休み。今年は海外でクライミングを楽しもうと候補を探していたところ、知人から「台湾はどう?」と提案があった。台湾は2014年に1度行ったことがあったが、まだクライミングを始めたばかりのころで登れないルートばかり。5年前のリベンジと新しい目標への挑戦を兼ねて、台湾・龍洞でフリークライミングを楽しんだ。

メンバー:finetrackスタッフ根本、他3名
アクティビティ日:2019.11.5(火)~13(水)

【11/5(火):1日目 校門口 (School Gate)】

昨年エルキャピタン・ノーズに登ったり、海外でのフリークライミングに慣れ親しんでいる石鍋、最近ボルダリングにのめりこんでいる四條、そして私の3人で、羽田空港を出発し台湾・桃園空港へ。空港からタクシーに揺られること1時間15分ほど、宿泊先の Bivy に到着。6人部屋を3人で利用した。きれいで快適!

海岸沿いの道を通って、15:00、龍洞の一番近いエリア「校門口(School Gate)」へ。日没が17:00過ぎなので、龍洞へのご挨拶程度に2時間ほど軽く登る。

晩ご飯も楽しみのひとつ。さて何を食べようか?と話していると、Bivy のオーナー Kelly が話に入ってきて、彼女の車で九份まで連れて行ってくれることに。九份は山の中に作られた街で、上から海を見下ろしてもよし、麓から九份を見上げてもよし、の素敵な街。ちなみに『千と千尋の神隠し』の舞台と言われており多くの日本人でにぎわっていましたが、どうやらモデルではないんだそうな。

レストランで食事してタクシーで Bivy に戻り(400元)、就寝。

この日登ったルート:
1. 迎風面左 (Seaface Left) trad 5.6 OS
2. Disco大裂隙 (Disco Fistcrack) trad 5.10a OS

【11/6(水):2日目 黄金谷 (Golden Valley)】

雨予報に反して晴れている。ちなみにこの日からの雨予報はすべて外れ、結局8日にパラっと降った以外は全日程晴れた。
バス移動がかなり楽なのでこの日以降はずっとバスで移動した。この日のエリアは「黄金谷 (Golden Gate)」。今回のクライミングの目標「名不虛傳 (The Real Legend) 」という課題がある。黄金谷で一番目を引く岩のカンテを右に左に登るルート。

ウォームアップののちさっそく The Real Legend にトライ。日が当たっている日中は岩が熱く、核心を抜けさせてくれすらしなかったが、気温が下がれば勝負できそうな手ごたえを感じる。

その後2回トライし、夕方日が陰って涼しくなってくるくらいがちょうどいいトライ時間だということを確認して帰宅。

途中参加の西山が夕方合流。facebookでわれわれが台湾に来ていることを知った現地の知人・ジンルーも愛犬・スイビンを連れて黄金谷に遊びに来てくれて、せっかくなのでみんなで夕食をとることにした。

龍洞から車で10分、澳底(Aodi)にあるレストランで胃がはちきれんばかりに食べた。

この日登ったルート:
1. Thierry (Thierry) trad 5.8 FL
2. 名不虛傳 (The Real Legend) sport 5.13a ×
3. 非常不方便 (Very Inconvenient) sport 5.12a OS
4. 細帶比基尼 (String Bikini) trad 5.11a ×
5. 名不虛傳 (The Real Legend) sport 5.13a ×
6. 大濟路線 (TC Route) trad 5.9 FL
7. 名不虛傳 (The Real Legend) sport 5.13a ×

【11/7(木):3日目 長巷 (Long Lane)】

今日も晴れ。日中の日向は暑すぎるので、日陰のエリア「長巷 (Long Lane)」に行くことにした。このエリアの大部分は1日中ほとんど日が当たらず、グレードも易しいものが揃っており、台湾ローカルクライマーやクライミング初心者が1日中楽しめるエリアだ。ただしアプローチは要注意…

長巷は5年前にも来たエリア。前回 倒走天梯 (Sky Ladder) という看板課題が登れなくて悔しかった記憶があり、今回あらためてチャレンジ。グレードだけでいえば今はもうよほどのことがなければ確実にオンサイトできる。当時は悔しさとともにたどり着いた終了点だったが、今は背中に広がる海の美しさを感じながら無事登り切ることができた。

この日の夕食は西山の希望で基隆(Keelung) の夜市へ。地元感あふれる夜市を堪能して、タクシーで Bivy まで戻り(600元)、就寝。

この日登ったルート:
1. 美德牌坊 (Virtues on a Street Sign) sport 5.9 RP(5年前にOS)
2. 忠孝 (Zhongxiao) sport 5.10a RP(5年前にOS)
3. 長巷內角 (Long Lane Dihedral) trad 5.8 OS
4. 翻天手 (Reach for the Sky) sport 5.11b OS
5. 犀牛內角 (Rhino Dihedral) sport 5.11b OS
6. 倒走天梯 (Sky Ladder) sport 5.10b RP(5年前にトライ)
7. 黑洞偏左 (Black Hole Left) trad 5.11a OS
8. 非想 (Inconceivable) sport 5.11a OS

【11/8(金):4日目 校門口(School Gate)】

弾丸で台湾にきてくれた西山が帰国。お疲れさまでした!
さて今日も晴れたし、たくさん登りますか!…と思っていたのだが、身体がオーバーワーク気味。いつもより少し遅く出発してとりあえず岩場に来たものの、疲労感でまったく登れない。特にルーフを越えるルートは全然ダメ…

と、ここでザッと一雨降ってきた!これ幸いとほかの2人に了承を得て、この日はしっかりストレッチしてしっかり食べてたくさん寝よう!という日にすることにした。

Bivy に戻り1時間たっぷりストレッチ。そうしたら急に眠たくなってきて、5:30まで2時間ほど眠る。少し元気になって、早めの夕食をとるために Bivy から5分ほどの海鮮レストランへ。ここは海産物と調理方法を選んでその場で捌いてつくってもらうスタイルのお店で、なかなかの高級店。水槽から食材を選び、イカの刺身やエビ料理をいただく。

このほかいろいろな料理をいただいて、Bivy で泥のように就寝。

この日登ったルート:
1. 出乎意料 (Surprise Crack) trad 5.10b FL
2. 虎牙 (Tiger Tooth) sport 5.11b ×
3. 虎牙 (Tiger Tooth) sport 5.11b ×

【11/9(土):5日目 後門(Back Door)】

早くも折り返しの日。今日は台湾の知人・ジンルーと登ることになっていた。彼は昼前にのんびりきてのんびり登るらしい。今日のエリアは「後門(Back Door)」。さっそくトポのおすすめルートを登る。
3本ずつ登ったあたりでジンルーパーティと別の家族連れがやってきて、エリアが盛り上がってきた。クライミングをしない人も来ていて、海岸でのんびりピクニックをして楽しんでいた。

ジンルーおすすめ、笑傲江湖 (Xiao Ao Jiang Hu) というルートにトライしてみた。このルートは龍洞で拓かれた初めてのスポートルートで、内容が面白くてローカルクライマーたちにも人気なのだそうだ。私のオンサイトトライはあえなく失敗、そのままトップアウトして、少し休んで2便目、今度は戦略をしっかりたてて無事完登。楽しいルートだった。

夜はジンルーの車で澳底のレストランへ。スーパーにも立ち寄りフルーツなどを購入。

この日登ったルート:
1. 火龍 (Dragon with Matches) trad 5.10b OS
2. Yum Yum (Yum Yum) trad 5.11b OS
3. 新法拉利 (New Ferrari) sport 5.11c OS
4. 落大石 (Big Rock Falling) sport 5.12a OS
5. 笑傲江湖 (Xiao Ao Jiang Hu) sport 5.12c ×
6. 笑傲江湖 (Xiao Ao Jiang Hu) sport 5.12c RP

【11/10(日):6日目 大禮堂(Grand Auditorium)】

今日は石鍋、四條のふたりは台北観光へ行くことになったため、私は別行動でジンルーとクライミング。人の少ないところで登りたいとオーダーしたところ、大禮堂というエリアをおすすめされた。台北からジンルーの友人・Kevin も現地参加するとのことで、ジンルーの愛犬・スイビンとともに大禮堂へアプローチ。

大禮堂は壁が高く、シングルロープ1本ではロワーダウンできないところがある。今回登りたかったルートも60m弱あり、バックロープを引いて登り懸垂下降するか、フォロワーに回収してもらいながら登って懸垂する必要がある。私とKevinは初の大禮堂なので、私がトップで登ってふたりにはフォローで登ってもらい、全員でトップアウトしよう!ということになった。

龍路 (Via del Drago) はロープが大きく屈曲するので2ピッチに分けた。しっかりとしたクラックが走っていてとても気持ちのよいクラッククライミングだった。

続く菲律賓人普羅 (Puro Filippino)、ジンルーからは「2ピッチに分けたほうがいいよ」と提案されそのつもりで取り付きへ。しかし下から見るとルートはほとんど一直線で、一気に終了点まで抜けられそう…。せっかくなのでシングルピッチとして登らせてもらった。
無事オンサイト!3人で頂上へトップアウト。

そのあとはジンルーと瑞芳で晩ご飯を食べたあと、八煙という、川に流れる天然温泉に連れて行ってもらった。今回つくづく思ったのだが、ジンルー、Kevin、Kellyをはじめ台湾の人たちは日本人に対するホスピタリティに溢れていて、われわれがどれほど楽しめるかを考えて一緒に行動してくれる。日本に帰ってきて台湾のことを振り返ってもいい思い出しかないのは、天気に恵まれ、龍洞の岩がすばらしかったということだけが理由なのではなく、彼らのおかげでもあるのは間違いない。

この日登ったルート:
1. 龍路 (Via del Drago) trad 5.10c 2pitch OS
2. 菲律賓人普羅 (Puro Filippino) trad 5.11b OS

【11/11(月):7日目 後門(Back Door) 2回目】

今日は石鍋、四條と合流してクライミング。四條の「後門の5.11aに再チャレンジしたい」という希望で後門へ。私もいくつか登りたいルートがあったが、昨日温泉に入ったにもかかわらず回復が追い付かなかったようで、2回目の廃人状態を迎える。アップの5.10dもルート取りを間違えたとはいえテンションをかけてしまったし、誰與爭鋒 (Incomparable) も2ピン目で退散してしまった。

もうスッパリあきらめて、ストレッチして眠ろう!と気持ちを切り替えて、ストレッチのあと2時間ほど眠った。気温も高く気持ちよく眠り、起きたら少し元気になった。少し体を動かし、眠る前にクイックドローを掛けていた 教練示範 (Coach Domonstrates) に再チャレンジ。核心ムーブが解決していなかったが、元気になった勢いでそのまま完登!疲れている中でも5.12が登れてよかった。

四條も最後のトライで目標にしていた5.11aを完登!今日はうまいビールが飲めそうだ。

この日登ったルート:
1. 高檔快扣 (High Class Quickdraw) sport 5.10d ×
2. 誰與爭鋒 (Incomparable) sport 5.13a ×
3. 教練示範 (Coach Demonstrates) sport 5.12b ×
4. 教練示範 (Coach Demonstrates) sport 5.12b RP

【11/12(火):8日目 黄金谷(Golden Valley)】

今日は The Real Legend 1本に集中してトライする予定。龍洞の岩にもだいぶ慣れてきたところだが、毎日登って身体は疲労しているし、指皮はチョークが載らないくらい擦り減っている。1トライ1トライ集中して登らなければならない。

10:00…
クイックドローを掛ける作業とムーブの確認。
12:00…
日が当たっていてNG、核心手前でフォールしてしまった。
14:00…
日が傾いて岩に日が当たらなくなった。体力の消耗を最小限に抑え、ひとつ目の核心を突破!…と思ったら、遠い一手がわずかに届かずフォール。もったいなかった。
16:00…
日没前に最後のトライ。気温はさらに下がり、風が吹いていて涼しい。余裕を持ってひとつ目の核心に突っ込む。先ほど落ちた遠い一手にも手が届き、核心を抜けてレストポイントまで来た。次の一手も遠い一手。腰を沈めた反動で思い切りよく手を伸ばす!… が、指はわずかにガバに届かず無念のフォール。

悔しいが今回は私の完敗。でもあと少しで登れる感触はあった。また日本でトレーニングして、次回は必ずレッドポイントしに来よう。

夜は石鍋のリクエストで、基隆で火鍋を食べる。とてつもなく辛くて食べるのが大変だった… 平気でぺろりと平らげてしまった石鍋のことをクライミングだけでなく食の面からも尊敬。

この日登ったルート:
1. 名不虛傳 (The Real Legend) sport 5.13a ×
2. 名不虛傳 (The Real Legend) sport 5.13a ×
3. 名不虛傳 (The Real Legend) sport 5.13a ×
4. 名不虛傳 (The Real Legend) sport 5.13a ×

【11/13(水):9日目 第二洞 Second Cave → 第一洞 First Cave】

最終日。今日はまだ行ったことのない第一洞・第二洞に行った。最終日は楽しく登ろう!

まずは第二洞で簡単なクラックや見栄えのするルーフ越えを楽しむ。最終日ともなるともう連続で登る体力がないので、ちょこちょこ横になって寝たりしながらのんびり登った。

13:15に第一洞へ。第二洞に比べると明らかに洞窟のスケールが大きい。みんなここで最後の1本ずつを登って終了の予定。
ところがあまり考えずに取り付いた30mのルートで砂まみれの岩とクイックドローの回収に大苦戦し、なんと下りるまで1時間ちょっとかかってしまった。他のふたりの登る時間がなくなってしまい非常に申し訳ない気分。最後に3人で写真を1枚。

14:30にクライミングを終え、龍洞を北に向かって歩き、今回の日程でまわったエリアを通りながらバス停まで行くことにした。龍洞は2kmほどの海岸にコンパクトにまとまったエリアだが、9日間では回りきれないほどの懐の深さがある。エリアによってクライミングの内容が異なり、まったく飽きることがない。また来ようと思わせてくれる素敵な場所だ。

Bivy でシャワーを浴び、Kelly にお別れの挨拶をして、タクシーで桃園空港へ。空港で夕食をとってお土産を見て、あっという間に搭乗時間。そこから3時間で羽田空港に到着。空港ビバークを覚悟していたが、最終の深夜リムジンバスに奇跡的に滑り込むことができ、午前3:00に自宅に到着。へとへとになったけれど、毎日登れて、おいしいものをたくさん食べて、素敵な仲間に囲まれて、言うことなし!の9日間となった。もっと強くなって、また龍洞に行ってきます!

この日登ったルート:
1. 榔頭時刻 (Hammer Time) trad 5.10a OS
2. 洞穴 (Grotto) trad 5.10b OS
3. 中將湯 (Zhong Jiang Soup) sport 5.11c OS
4. 三天三十米 (Three days, Thirty meters) sport 5.12a ×

【参考:クライミング用品】
・ロープはシングル60mを1人1本。
・クイックドローは長めがおすすめ。龍洞は岩の性質上、垂壁→オーバーハングの繰り返しが多いため、ハングの下のプロテクションにアルパインクイックドローも多めに持っていくとよい。
・トラッドルートもたくさんあるので、カムはパーティで4セット持っていった。ジャミング用のテーピングテープは個人で2巻あるとよい。

これに着替え・日用品をまとめてだいたい16~19kgくらいの預け荷物と5kgくらいの手荷物に収める。

トポ(クライミングエリアのガイドブック)は前回来た時に台北市の登山用品店で購入したものを使用。ちなみに龍洞近辺ではトポを購入できるところは見つからなかった。持っていない場合は一度台北に立ち寄って購入するのがいいだろう。ちなみにこちらのトポの表紙は The Real Legend だ。

 

11月の台湾、日中はとにかく暑い。ほとんどの日程をドラウト®ゼファーノースリーブとカミノハーフパンツで過ごした。どちらもナイロン地で非常に丈夫、なのに薄い。暑い日のクライミングにはもってこいの組み合わせだ。日陰にいるときは薄手のL3・ドラウト®センサージャケットやピコバリアを羽織るとちょうどよい。

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