残雪期の山スキーではメジャーな黒部源流エリア。
厳冬期では珍しい週末の好天予報に誘われ、黒部を滑る為にパーティーが集結した。
■アクティビティ日:2023年2月11日~2月12日
今シーズンは年末年始や連休の天気がことごとく悪く、2月中旬になるにも関わらず山らしい山スキーが出来ておらず、メンバー全員がくすぶっているシーズンだった。
そんななか訪れた週末の好天予報を見て、前々から考えていた厳冬期の薬師岳を滑るべく、鼻息の荒いメンバーが集まった。
残雪期ではよく訪れるエリアではあるが、厳冬期は初だ。
加えて新雪がたっぷり積もった薬師沢右俣を滑ろうという意欲的なプラン。自ずとメンバーのモチベーションが高まっていた。
初日はアプローチでトラブルがあり和佐府のゲートを8時に出発。林道はゲートからすぐに雪に覆われており、シールでスタートし2時間弱で飛越トンネルに着いた。
ゲートからトンネルまではひたすらシール歩きで、日も差していたため大変暑かった。
今年シーズンは寡雪ではあるが、飛越新道取り付きの雪付きは良好。
飛越新道に入ってからはノートレールのラッセルとなり、これがなかなかに深くパーティーでラッセルを回して行く。残雪期の記憶を頼りに巻ける所は巻きつつラッセルをして、14時頃に北ノ俣避難小屋に到着した。
残雪期と違い基本的にはラッセルとなったが、適度に巻きのラインを使えた。
初日に太郎平まで入りたかった所だが、リゾート地の様に快適な北ノ俣避難小屋に吸い込まれ真っ昼間からの青空宴会となった。
北ノ俣の西面も雪付きはバッチリだ。途中見えた薬師沢もたんまりと雪が付いていた。
暗くなるまで宴会をして初日は終了。
2日目の朝は昨日の遅れを取り戻すべく2時起床、4時出発。
昨日とは一変、ガスと西風の中北ノ俣岳への登りに取り付いていると、後方からヘッドランプの明かりがいくつか近づいて来る。厳冬期の黒部源流域で夜明け前、まだランプの光点が見えるだけの距離だが誰が来たかメンバー全員が察した様だ。
後ろから集団が近づいて来る中、締まった雪面にクトーを効かせながら焦らずに登って行く。おそらく1dayで薬師岳を狙うパーティーとスピード勝負などするものではない。
残雪期とは違い雪が斜面一面に付いており、ハイマツの海で迷う事も無く稜線へとアプローチ出来た。そして案の定稜線に乗り上げたタイミングで後方からロケットの様に射出されて来た若手に丁度追い付かれた。
北ノ俣ピークに着いたがガスと風で視界は悪い。
気温が高いのは唯一の救いではあるが、稜線はガスが濃く西風が強く吹くコンディションで目的の斜面を滑る事は見込めそうもない。
地獄の一歩手前とも思えるようなコンディションの中、薬師へと向かう集団を見送り私達は北ノ俣岳で撤収を決定。
北ノ俣岳西面は残雪期でもあまり良い思い出が無い斜面で、案の定、今回もシュカブラがカチカチに凍ったコンディション。
修行の滑走となり、まともなシュプールを刻んだのは避難小屋上の数ターンのみであったが、これもまた山スキーと楽しむ。
標高を落とすと視界が開けた。なんと薬師岳方面にはガスは掛かっていなかった…
帰路のアップダウンの激しい飛越新道は、後続パーティーの芸術的な巻きトレースを使わせて貰い、省エネで飛越トンネルまで滑り込んだ。
これで帰りの林道は滑って終了と思いきや、昇温で雪が腐っていた為板が走らず交代でスケーティングしながらトレースを伸ばす。
最後の最後で消耗しつつ和佐府のゲートまで帰り着き、山行終了。
残雪期と異なりラッセルのある飛越新道からの薬師岳は、その工程の長さから中途半端に泊まり装備を担ぎ行動を伸ばすと随分削られる事が今回分かった。次に冬期に狙う際は2泊とするか、ヘッデン覚悟の1dayで往復するかのどちらかが適していると感じた。
エバーブレス®スノーラインビブ
優れたストレッチ性能を備えた軽量な生地のおかげで、ラッセル時の足上げや、スキーならではのキックターンの際のウエアの重さや突っかかりが少なく、ハイクアップを非常に快適にしてくれる。メインの生地が軽量化されている一方で、エッジガードの強度は高められているので安心して使えるのもポイントだ。