DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

10/22023

「一日中滑っていたいと思わせてくれる効果的なウェア」vol.18 プロフリーライドスキーヤー 佐々木悠さん

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佐々木悠さんは、カナダのレベルストークを拠点に活躍する、プロのフリーライドスキーヤーです。のちに定住することになるカナダへ渡ったのは、地元の高校を卒業した弱冠19歳のころでした。その後、海の向こうでフリーライドの魅力に開眼すると、世界一を決める大会に出場を果たすまでに成長します。
ドライレイヤー®の効果を聞きながら知ることとなった佐々木悠さんの生き様は、型にはめることのできない人生の可能性と、直向きに行動することの大切さを教えてくれました。

目次

  1. 自然の地形を楽しむ滑走スタイル
  2. カナダのスキー事情でフリーライドの魅力に開眼
  3. プロスキーヤーへの道と大きな挫折
  4. 雪辱からのFWQ優勝、そしてFWT出場へ
  5. 極寒のカナダで感じたドライレイヤー®の効果
  6. 次世代につなぐ夢のバトン

自然の地形を楽しむ滑走スタイル

フリーライドという言葉を初めて目にした方のために、まずそのスタイルについて説明しましょう。普段、私たちが身近に楽しんでいるスキーやスノーボードは、圧雪されたコース内を滑るのが一般的です。しかし、フリーライドは、決められたコースがない、非圧雪の斜面を楽しむスタイル。さらにこれが競技になると、自然の地形を利用したビッグジャンプや空中でのトリックなどが加わり、ダイナミックなアクションが多くの観客を魅了します。


佐々木さんの滑走の様子。自然の崖を利用したジャンプがフリーライドの魅力でもある

フリーライドの世界一を決める大会「FREERIDE WORLD TOUR」(以下FWT)の公式サイトには、こんな一文があります。

“決まっているのはスタートとゴールだけ”
フリーライドを表現するのに、これ以上適切な言葉はないでしょう。

佐々木悠さんがそんなフリーライドに出会ったのは、地元北海道の高校を卒業後、日本の大学に興味をもてず、バイト先の先輩からカナダのウィスラーがおもしろという話を聞き、ワーキングホリデーで現地を訪れたときのことでした。

カナダのスキー事情でフリーライドの魅力に開眼


一時帰国中の佐々木さんに白馬村の民宿で話を伺った。翌日は朝一のジャパウを狙っている

−フリーライドに興味を持ったきっかけを教えてください。

日本で多く行われているスキーは、圧雪された斜面をどれだけ合理的に滑るかに重きを置いた“基礎スキー”と呼ばれるものです。それが逆に、カナダでスキーと言ったら、フリーライドが一般的。ちっちゃい子供からおじいちゃんやおばあちゃんまで、非圧雪の斜面を滑るための板を履いてスキーを楽しんでいたんです。

日本にいたころは、地元が北海道なので身近にスキーがあって、スキーのスクールにも通っていたんですけど、まったく魅力を感じませんでした。でも、カナダのスキーヤーを見て、単純にかっこいいと思って。フリーライドに魅了されたのはそれからです。

−すぐにプロのスキーヤーになりたいと思ったんですか?

早くからプロになりたいと思いましたね。当時はウィスラーで滑っていて、フリーライドは本当におもしろいスポーツだと感じたんです。

−プロスキーヤーになるために、カナダではどんな生活を送っていましたか?

当時は日本食のレストランでアルバイトをしていて、食事は賄いで済ませることが多かったです。それでも稼いだお金をスキーに注ぎ込むと家賃が払えないので、友達の家の軒下にテントを張らせてもらい、そこで生活する期間が半年くらい続きました。

ただ、これじゃ疲れも取れないしスキーも上手くならないと思って、車のバンを買って、そこで暮らすようになります。それが続いたのは約一年。朝起きたら地元のコミュニティーセンターでシャワーを浴びて、それからスキー場で滑り、夕方の4時くらいからバイトに入る。そんな暮らしをしていました。

−なかなか大変な時期があったんですね。

でも、車上生活もやっぱ良くないと思って、今度はシェアハウスを始めるんです。カナダのウィスラーには日本人がたくさんいたので、自分で家を借りてそこに人を入居させれば、自分は家賃を払わなくて済むじゃんという発想です(笑)。

プロスキーヤーへの道と大きな挫折

−実際にプロスキーヤーとして活動を始めたのはいつごろからですか?

ウィスラーで滑っていたとき、自分の滑りをYouTubeにアップしたんですよ。そしたら、アメリカのスキーメーカーの日本代理店から「うちのスキー板を履いてみませんか?」って連絡を頂き、製品を提供してもらえるようになりました。それがプロとしての始まりですね。

−それからアルバイトをせず、スキーだけで生活できるようになった?

そのときはスキー板の提供を受けただけだったので、まだアルバイトを続けていました。夏は冬に向けてアルバイトを何個も掛け持ちして、勤務日数は週6日、朝9時から夜11時くらいまで働く暮らしをしていましたね。

ただ、そんな状況も少しずつ変わってきて、スキー板だけだったスポンサーが、ウェアやゴーグルにも付くようになり、いまは一応アルバイトをせずに生活できるようになりました。

−それからは順調に実績を積んでいった?

2017年にフリーライドワールドツアーの日本での開催が決定して、それに参加することにしたんです。日本にフリーライドの文化はなく、逆に自分はずっと海外でフリーライドを実践してきたから、当然俺が勝つだろうと、この時までは思っていました。でも、いざ試合に出てみたら、結果は4位。同じスポンサー契約を結んでいるウェアメーカーのチームメイトが優勝して、しかも彼は日本人だったんです。このとき、俺は何をやってきたんだろうと、すごい挫折を味わいました。

雪辱からのFWQ優勝、そしてFWT出場へ

−その挫折をどのように乗り越えたのでしょう?

それまで、いろんな人からお前はスキーが下手くそだって言われていたんです。でも何が下手なのか正直わからなくて。それが世界大会で順位が出たときに、自分ってやっぱり下手くそなんだと、初めて受け入れることができました。それから人にスキーを教わるようになって、これで終わるわけにはいかないと思ったんです。


長野県白馬村で行われた大会の様子。出場選手は滑走エリアを望遠鏡で確認してどこを滑るか考える

滑りのテクニックを一から学び直すと、大会での結果も良くなっていきました。2018年に長野県白馬村で行われたFreeride World Qualifier(以下FWQ) 3*で優勝でき、さらに翌年の2019年にも、同じく白馬村で行われた FWQ 3*で再び優勝。同じ年、世界ランキングトップ50人だけが出場を許されるFWTへの出場権を獲得します。

この2019年のFWTで、まだ誰も成功していなかった歴史の残るような大ジャンプを飛ぶことができたんです。FWTへの出場とビッグジャンプを飛べたことが、これまででいちばんステップアップを感じたポイントですね。


佐々木さんがフリーライドで注目されるきっかけになった歴史的なジャンプ

極寒のカナダで感じたドライレイヤー®の効果

−ドライレイヤー®の使用感についても聞かせてください。佐々木さんは、普段のトレーニングからドライレイヤー®を愛用していると伺いました。

ドライレイヤー®は2020年ごろから愛用していて、基本はドライレイヤー®ベーシックのショートスリーブ、寒いときはロングスリーブとタイツを着ています。

−カナダでの着心地はいかがですか?

現在、僕がホームマウンテンにしているレベルストークのスキー場は、−15度くらいの気温になるのが普通で、寒いときは−20度近くまで下がります。そこで僕はバックカントリーにも入るので、たくさん歩いて汗を多くかくんです。そのとき、ドライレイヤー®を着る前は、当たり前ですが汗をかいたら寒さを感じていました。

でも、ドライレイヤー®を着るようになってからは、その寒さの感じ方が変わりましたね。たとえば、汗をかいているときにバックパックを降ろしてから背負い直すと、背中がすごく冷たく感じるじゃないですか。その感覚はかなり軽減されていると思います。


佐々木さんは、ドライレイヤー®が北米に進出した当初からドライレイヤー®を愛用している

−寒さを感じなくなると、具体的にどのようなメリットがありましたか?

ドライレイヤー®を着るようになってからは、一日の行動時間が伸びました。前は汗をかいて体が冷えてくると、昼ごろには帰りたいと思っていたんです。でも、それが夕方まで滑ろうって思えるようになった。快適に動ける時間が増えたっていうのがいちばんのポイントですね。

−どんなレイヤリングでも、佐々木さんが実感しているドライレイヤーの効果を引き出せるものでしょうか?

ドライレイヤー®を着こなすには、いいベースレイヤーを着る必要があります。たとえば、吸汗速乾性能がそれほど高くないベースレイヤーを着てしまうと、ほとんど効果を得られないというのが正直な感想です。僕はメリノウールに化学繊維を混紡したベースレイヤーを着ていて、それだとドライレイヤー®の効果をかなり実感できます。

−ドライレイヤー®は、どんな人やアクティビティにもおすすめできますか?

全員がドライレイヤー®の効果を実感できるのかと言われたら、クエッションが出ちゃうかな。あくまで高性能のベースレイヤーを選ぶことができて、自分の体質とか体温管理が上手くできる人じゃないと、ドライレイヤー®の効果はわかりづらいかもしれません。

ただ、それさえクリアすれば、寒さを感じる時期のストップ&ゴーを繰り返すようなアクティビティに対しては、とても効果のあるウェアだと思います。

次世代につなぐ夢のバトン

−最後に、佐々木さんの今後の目標についても教えてください。

これまでは、自分の限界を越えることをめざしてトレーニングを重ねてきて、それまでの努力を信じて飛んできました。そして、無事に着地できて、自分の限界をちょっと越えることができたときにすごい達成感があって、それを繰り返してきたんです。でも、僕は今年で37歳。こんな危ないことを続けられるのは、あと3年くらいかなと思っています。

実は2022年の1月にアキレス腱を切る大きなケガを経験して、それも重なって、いまがパフォーマンスのピークなのかなと考えるようになったんです。

−プロスキーヤーとしてではない、何か違う目標を考えているのでしょうか?

僕が住んでいるレベルストークは、北米でいちばん標高差のあるスキー場があって、すごく恵まれた環境なんです。そこに日本の若いスキーヤーをサポートできるような環境を作ってあげたいと考えています。

昔、僕がシェアハウスを始めたときのようなイメージです。あのころは自分が家賃を払わなくて済むために始めましたが、今度は若い子たちがそんな環境でスキーが上手くなれればいいかなと。

かつて僕がカナダにやってきたように、いまの日本の若い子たちにも日本から海外に飛び出して夢をつかんで欲しいなと思っています。

【教えてくれた人】

佐々木悠(ささき・ゆう)さん

1986年、北海道生まれ。地元の高校を卒業後にカナダへ渡り、フリーライドの魅力に開眼。夏はフードトラックを運営し、料理の腕を振るうシェフとしての一面ももつ。YouTubeに「Freeride Adventure/Yu’s スキーチャンネル」を開設し、フリーライドの魅力やテクニック、道具選びのコツなどを配信中
https://www.youtube.com/channel/UCNmrjOua7Ii-OanhB1oOO1w/

構成/文 吉澤英晃