最強の5レイヤリングとは

ハッピーアウトドア・スノーシュー主宰: 松田和昭

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ロッククライミングの聖地として知られる、谷川岳。そこには、本州のなかでも特異で豊かな植物たちの分布、そして動物たちの共存があることをご存知ですか? つぎつぎと飛び出す、谷川岳の知られざる魅力。登山・自然観察ガイド・松田和昭さんが語ってくれます!(finetrack編集者)

生まれ育った群馬県のみなかみ町で、谷川岳や尾瀬を中心に登山や自然解説のガイドをしています。
谷川岳と言えば名前は有名ですが、標高は2000mもなく、山域もそれほど広くありません。
ただ、その狭い範囲に、多様な自然がぎゅっと凝縮されていて飽きさせないのが魅力です。

例えば、登山口から山頂まで4kmちょっとの間に、ツボスミレ、タチツボスミレといった里の植物と、ジョウエツキバナノコマノツメ(谷川岳と至仏山の固有のスミレ)などの高山植物とがめまぐるしく入れ替わります。

ジョウエツキバナノコマノツメ。スミレの仲間の高山植物で谷川岳と至仏山の固有種

これは、変化の激しい気候、急峻な地形、特異な地質など、様々な要因のおかげです。

谷川岳は、細い稜線が特長です。
そのため、日本海性の気候と太平洋性の気候が、それぞれの斜面を吹き上がってきて稜線上でいきなりぶつかります。性質の異なる気団が短時間で急激に混ざり合うため、天候の変化が激しくなります。

靴紐を結んで顔を上げると、さっきまで晴れていたのに周囲が見えなくなっているなんてこともあるほどです。急激な気候のぶつかりは、雨や雪を多く降らせます。とくに冬の風雪は激しく、稜線の植生へ影響を与えます。

普通、関東地方にある標高2000m以下の山では、山頂まで樹林帯があり、高山植物帯はありません。
しかし、谷川岳には広い森林限界のエリアがあり、そこには高山植物が咲いています。
その特異性から「谷川岳の森林限界はインチキだ」なんて言う人も居ます。

西黒尾根から登り、山頂を眺める。標高1300mを少し超えた辺りだというのに、見事な森林限界の高山帯が広がる

谷川岳には、氷河で削られた谷があります。標高は低くても、大量に雪が降る谷川岳ならではの条件です。氷河が削った岩壁は急峻で、植物の垂直分布(土地の高度の差による、植生変化)を激しくします。
氷河跡の底の部分は標高1000m以下にあって、そこには低山の植物が生えます。一方、稜線のほうへ上がると、本来の標高以上の高山植物が咲いています。

こうしたさまざまな条件が重なって、短い距離の間にさまざまな植物(里のものから高山のものまで)が入れ替わっていくのです。

一ノ倉の岩壁。その昔氷河に削られた地形

谷川岳では日本海性のブナが標高700m以下にまで広がっています。谷川岳の厳しい条件が、本来の標高以下にまでブナ林を生育させているのでしょう。そして谷川岳主脈稜線から枝分かれして南に延びた尾根筋の末端では、太平洋性のイヌブナが生育しています。
ちょうど、みなかみ町の中で、2種類のブナが入れ替わるのです。
多様性のある森林は、多くの生き物を養います。ここには「本州にいるはずの哺乳動物は全種類いる」と言われています。
例えば、冬になると白くなる「トウホクノウサギ」と、冬も茶色いままの「キュウシュウノウサギ」。ここでは、南北のノウサギが出合い共存しています。

冬になると白くなる「トウホクノウサギ」

そんな多様な谷川岳、地形も飽きさせません。

主峰のトマノミミ、オキノミミを境にして二つの稜線はとても対照的。ぐるりと湾曲し急峻な馬蹄形(谷川岳~清水峠~白毛門)と、ひたすら一直線に続く主脈(谷川岳から平標)。まったく違った山行を楽しむことができます。

私の好きな景色。山頂トマノミミから、もう一つの山頂、オキノミミを臨む。その先に馬蹄形稜線が見渡せています(清水峠、朝日岳、笠ヶ岳、白毛門)。

谷川岳の縦走はマイナールートで登山者も少ないので、お天気が良くてプランに余裕がある日は、山で寝転がって休憩するのが好きです。そうやって、高山植物がキレイに咲いているのを眺めたり、鳥や動物を見つけたり。私が喜んでいると「動物いつも見てるでしょ?」と突っ込まれたりしますが、それでも嬉しいものは嬉しいのです。

飽きっぽくて机にじっと座って居られない私にとって、ここは、まさにうってつけの職場です。世間では「趣味を仕事にしてはいけない」なんてよく言われますが、ガイドというのは「仕事が趣味でなくてはできない」職業です。
一年中、飽きることなく活動できるフィールドを与えてくれるみなかみ町。
そんなフィールドに感謝しながら、今日もどこかを歩いています。

日本海性のブナの森で休憩

finetrackとの出会い

10数年前、登山道具にソフトシェルというものが現れ始めた頃のことです。
谷川岳を中心としたみなかみ町のエリアは積雪量こそ日本有数の豪雪地帯ですが、標高は低く、厳冬期でもボタ雪や雨が降ることは珍しくありません。

体に付いた途端に水に変わるようなボタ雪の中、水気たっぷりの深いベシャ雪をラッセルしていけば、当時のソフトシェルではすぐにびしょ濡れになってしまいました。
しかし、標高が低く気温が高いことが多いので、ハードシェルより汗の抜けが良いソフトシェルを使用したい……。
そんなジレンマに陥った末「ソフトシェルで行動し、天候や気温が悪くなったらザックに忍ばせていたハードシェルを重ねて着て行動する」ことをしていました。

そんなとき、あるメーカーのサイトを見ました。
「5レイヤリング」。
耐水・透湿・換気機能を備えたL4ミッドシェルという概念や、L5アウターシェルとの「ダブルシェル」によるレイヤリング効果・・・

finetrackを知り、共感したのはそんなきっかけでした。
そして今は、その性能に満足して手放せないウエアとなっています。

ハッピーアウトドア・スノーシュー主宰
松田和昭

1967年群馬県みなかみ町出身。
谷川岳や尾瀬など地元群馬のフィールドを中心に、登山、自然観察、スノーシュー、沢登りなどのガイディングをしている。
山や森、雪の中で動植物を観察する静かな時間を愛し、生き物たちの痕跡「フィールドサイン」を見つける名人。
ハッピーアウトドア・スノーシュー:http://xn--xckd7dve3ec.jp/