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7/72022

「着る以外の使い方。お守りとして持ちたい緊急時のエマージェンシーウエア」vol.16 Hiker’s Depot オーナー 土屋智哉さん

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土屋智哉さんは、“ウルトラライト(UL)ハイキング”を提案する山道具専門店「ハイカーズデポ」の名物オーナー。現在、ドライレイヤー®をエマージェンシーウエアとして提案できないか検討中とか。そこには、ULの考え方でドライレイヤー®を捉えると見えてくる、新しい使い方の気付きがありました。

目次

  1. 不快なケイビングの経験からドライレイヤー®の機能に着目
  2. 常に着て快適というより、安全のために着ておこう
  3. 軽くてちっちゃい緊急時のお守りアイテム
  4. 大事なことは、リスクを知って自分の正解を導き出すこと

 

不快なケイビングの経験からドライレイヤー®の機能に着目

 

土屋さんが2008年に立ち上げた「ハイカーズデポ」は、日本で初めて“ウルトラライト”(以下、UL)ハイキング”を提案し、専門ギアを扱う有名店です。

ULハイキングとは、アメリカにある長距離トレイル(ロング・ディスタンス・トレイル)を踏破する過程で生まれたスタイルのことで、水、食料、燃料など、重さが変動する荷物を省いたときの総重量を、約4.5kg(10ポンド)以下にしようという考え方になります。


小ぢんまりしたハイカーズデポの店内。ULギアが並び宝探しのようなおもしろさがある

ただ、土屋さんがドライレイヤー®と出会ったのは、「ハイカーズデポ」を立ち上げるよりも前の話。かつて勤めていた山道具専門店「アートスポーツ ODBOX」でギアのバイヤーをしていたとき、創業間もないファイトラックの営業マンが、お店を訪ねてきたことがきっかけと言います。

当時、学生時代から続けていたケイビング(洞窟に入る探検活動)の実体験から、初めて目にするウエアの有用性を感じ取った土屋さんは、テストも兼ねてドライレイヤー®を着用。以降、確かな効果を実感し、長らく愛用していたと教えてくれました。

ドライレイヤー®を着ることで一体どんな変化があったのか。話はここから始まります。

 

常に着て快適というより、安全のために着ておこう

−土屋さんが開発当初のドライレイヤー®を着たとき、どんな違いを感じましたか?

ドライレイヤー®に初めて出会ったのは、確か2004年か2005年だったと思う。まだ「フラッドラッシュスキン」っていう商品名だった時代だね。その頃はケイビングもバリバリやってて「これ多分使えるよ、機能が本当だったら」って思ったんだよね。


小ぢんまりしたハイカーズデポの店内。ULギアが並び宝探しのようなおもしろさがある

−ケイビングで使えると思った背景には、どんな経験があったのでしょう?

洞窟って、滝があったり雪が残っているところもあって、全身ずぶ濡れになることもあるんだよね。そういうところに入るときは、厚手よりさらにぶ厚いアンダーウエアを着て、その上に不透湿のオーバースーツを重ねることが多いんだけど、結局滝に打たれたり水中を潜ったりもするから、確実に全身が濡れる状態になるわけ。

その状態で服を乾かそうと思っても、いちばん外側でラップをしているのと同じ状態なんだよね。体温でアンダーウエアを乾かす間に気化熱で体温が奪われて寒いんだけど、不透湿のオーバースーツでラップをしているから、熱が逃げにくくてまだ温かいと感じる。でもアンダーウエアは濡れたまま。

そんな状況にじっと耐えないといけなくて、慣れていたけどやっぱりそれがすごい不快だったね。


ケイバー時代の貴重な写真。身につけている黄色いつなぎが不透湿のオーバースーツ。頭にはいまでは珍しいカーバイトランプの直火が灯っている


ボンベを背負って水中に潜り洞窟の内部を調査するケーブダイブを収めた一枚。右の男性が土屋さん

−一般登山に置き換えると、雨でビチョビチョになった服の上にレインウエアを着て、その服が乾くまでじっと耐え続けるといった状況でしょうか。しかも、そのレインウエアに透湿性がない。その不快感たるや、想像を絶します…。

いくらアンダーウエアに速乾性があるといっても、機能には限界があるから、濡れた服と肌との間に何か一枚挟むことで、本当に濡れ戻りを軽減できれば、確実にいいだろうなっていうイメージがあったんだよね。

−それで実際に使ってみて、違いを感じた?

やっぱ良かったよ。超快適にはならないけど、不快感が確実に軽減されたんだよね。やっぱり体の震えとかが起きにくくなった。だから、着た瞬間からいつでも快適ってよりかは、状況がシビアになったとき、それが悪化してレッドゾーンに入る手前でキープできるみたいな、そういう感じがあった。

だから、それ以降は着るようになったし、2011年まではずっと着ていたんだよ。2008年にアメリカのジョン・ミューア・トレイルを歩いたときも着てたね。


土屋さんが愛用してきたフラッドラッシュスキン(旧ドライレイヤー®

山を歩いているときに着ていると、汗冷えが少ないって思ったね。立ち止まって休憩するときとか、急に天候が陰ってきたときとかあるじゃない。風が吹いてくるときもそうだけど、そういったときにドライレイヤー®を着てると「寒!」ってなるのが少ない感じ。

結果として、たとえばウインドシェルとか雨具とか、そういったアウターシェルの出番も減るし、体温が保たれてるみたいな、そういう印象があったね。

当時、自分はULハイキングが国内で通用するか実験していて、その頃ってULハイキングがすごい批判的な目で見られていた時代なの。でも、勤めていたODBOXのブログに山行記録をアップしていたから、これは絶対に遭難できないと思っていて。それもあって、快適性のために着るってよりも、ドライレイヤー®を着ることで安全マージンを確保できる、安全対策として着ておこうみたいな。そういう感覚のほうが強かったかな。

−先ほど「2011年までは着てた」と言っていましたが、いまは着ていないんですか?

いまは着ていません。っていうのが、「ハイカーズデポ」のオープンが2008年なんだけど、お店を経営していくにあたって、モノに頼るのをやめようみたいな、もっとシンプルにやっていきたいと思ったんだよね。

たとえばドライレイヤー®に頼らなくても自分で体温調節を考えたりとか、発汗に対しても大量に汗をかかないように自分で行動をコントロールできたほうがいいよねって。だから、一旦実験的に使うのをやめたの。

それと、ひとつ大きな問題があって、海外も含めて長距離トレイルハイキングを提案するときに、1週間とか10日間も同じ服を着ていると、やっぱり化学繊維の服は匂いが気になるんだよ。当時のドライレイヤー®にはまだ防臭抗菌加工がなかったんだよね。それも一旦お休みした理由のひとつだね。


2018年に歩いたオフルートの長距離トレイル“シエラ・ハイ・ルート”。3000mオーバーの標高を約300km歩き続ける。土屋さんいわく「北アルプスの薬師岳や水晶岳あたりを延々と歩く感じ」とのこと。

 

軽くてちっちゃい緊急時のお守りアイテム

−なるほど。だから店内に商品がないんですね。

ただ、実はいまドライレイヤー®の取扱いを再開しようかって話をしているんだ。それは、常に身につける服ってよりは、着替えとして提案できないかなと思っていて。理由は、小さくなるのと、やっぱり軽い。うちの店として軽さの魅力は絶対にあるわけ。

軽くて小さくなるから着替えにもいいし、それだけじゃなくて、さっきも言った安全の担保として、非常用のウエアとして考えるのもいいと思うんだよね。


ドライレイヤーの収納サイズは500mlのペットボトル以下。重量もベーシックTで約46gと軽量だ

行動中に何枚も服を着たくない人っているし、化学繊維のウエアがどうしても肌に合わない人もいる。そういう人たちに対して「常に着てください」じゃなくて「お守りとして持ってください」っていう提案はありだと思うのね。

最初に出会ったときの経験がまさにそれで、ドライレイヤー®って、ある程度厳しい環境が予想されるとか、天候不順だったり、環境が悪くなったとき、レスキューまで時間かかりそうなときに、濡れ戻りを軽減して体温を保持できる服として身につけるわけだから、安全のための最後の切り札とか、お守りとかって考え方、使い方があってもいいのかなって思ってるんだよね。

−ひとつ気になるんですが、たとえばエマージェンシーシートやレインウエアなどは、上に羽織るものじゃないですか。でも、ドライレイヤー®だと内側に着ないといけない。雨に打たれて本当に寒いときに、どういうふうにエマージェンシーウエアとして使うのでしょう?

雨で衣類が濡れて本当にやばいときは、ツェルトや山小屋に避難できたら、濡れている衣類は脱いだほうが絶対にいい。そこで、ドライレイヤー®を着て、ほかに着替えがなかったら、濡れた服をギュッて絞って、もう一度それを着て、それから雨具を羽織るほうが圧倒的にいいよね。ドライレイヤー®を持っているだけでそういうこともできるし、それが、衣服が濡れた状態の危険性を考えるきっかけにもなると思うんだよね。

−いままでずっと、常に着る服だと捉えていましが、ドライレイヤー®の新しい使い方に出会えたような気がします。ちなみに、土屋さんは雨で衣服が濡れてツェルトでビバークみたいな経験はありますか?

あるよ。学生時代に八ヶ岳を全山縦走してたときで、時期は確か10月。3日目にメンバーのひとりが体調不良でバテちゃったの。それで、雨も降ってきて全員ずぶ濡れになっちゃって、持っていたツェルトの中に入って、着ていた服を脱いで一回絞ったね。


土屋さんは学生時代からアウトドアを楽しんできた生粋のアウトドアマン。ULハイキングやケイビングだけでなく、クライミングやバックカントリーにも精通し、経験に裏打ちされた言葉には説得力がある

そのときドライレイヤー®を持っていたら良かったなって思う。体を温めるには防寒着を着ないといけないんだけど、肌面が常に濡れた状態よりも、乾いた服を一枚着たほうが絶対にいい。これはいままでの経験で言い切れるね。そういう経験もあって、何かお守りのような提案ができないかな、って思うわけ。

 

大事なことは、リスクを知って自分の正解を導き出すこと

−最後に、広くアウトドアを楽しむ人に向けて、ドライレイヤー®はどういった方にすすめられると思いますか?

どんな遊び方をする人でもいいと思う。ただ、体力や経験がある人よりかは、自分がどれぐらいの体力なんだろう、汗かいたらどれぐらい体が冷えるんだろう、冷えたらどれぐらい動けなくなるんだろうとか、自分の限界を知らない人、気づくことができるシチュエーションになったことがない人ほど、着るべき、持つべき、って自分は思うな。

去年の自分よりちょっと頑張る登山がしたい、ちょっとステップアップしたいとか、何か目標がある人で、なおかつ経験値がまだそんなにない、とくに非常事態に陥った経験がない人ほど、やっぱり持っていたほうがいいんじゃないかな。

−ありがとうございます。でも、どうなんでしょう。土屋さんの経験からすると、いつかこういう服からも卒業して、自分で自分の行動をコントロールできるようになったほうが、よりシンプルに山を楽しめるようになるとか、そういう考え方もあるのでしょうか?

ひとつはあるね。ただ、それも正解かもしれないけど、唯一の正解ではない。もっとほかに、自分にとっての正解を選ぶ人が出てきてもいいと思うんだよね。

大切なことって、衣服が濡れることの危険性とか体温保持の重要性を知ったうえで、次のステップで、じゃあそれを実践するためにはどうしたらいいんだろうって、自分なりに考えることじゃないのかな。

 

【教えてくれた人】

土屋智哉(つちや・ともよし)さん

1971年、埼玉県生まれ。大学探検部出身。2008年のジョン・ミューア・トレイル、2018年のシエラ・ハイ・ルートなど、数々の海外の長距離トレイルを踏破するほか、国内では2015年に奥多摩から北アルプスまでつなげた中央スルーハイクを歩く。著書に『ウルトラライトハイキング』(山と溪谷社)がある

 

Hiker’s Depot
東京都三鷹市にある登山用品店。アルコールストーブや軽量パックなど、ウルトラライトに特化したギアを扱い、海外から直接買い付ける珍しいブランドのアイテムも並ぶ。ハンモックハイキングやパックラフトを使った遊び方の提案にも力を入れている。

構成/文 吉澤英晃
 


ドライレイヤー®ベーシックの特長


肌に直接着て、その上に吸汗速乾ウエアを重ねることで、肌をドライにキープ。汗冷え・濡れ冷えのリスクを軽減し、登山やアウトドアでの安全・快適性を高めます。

肌をドライにする撥水性


優れた撥水性によって、かいた汗を瞬時に肌から離し、肌をドライにキープ。汗冷えを抑えて、体温を守ります。

 

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