ドライ、だから温かい ドライを重ねる 5レイヤリング

11/302022

アメリカクライミングツアー前半(El Capitan THE NOSE)~クライマー憧れの地での挑戦~

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投稿者: 清水 憲柱

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スタッフの遊び記録
ACTIVITIES

数年続いた世界的なコロナ渦も落ち着きを見せてきた2022年、ずっと行ってみたかった海外遠征に行こうと決めた。行き先を考えた際、クライマーとしてあこがれのルート、YosemiteのTHE NOSEは真っ先に浮かんできた。同僚の樫本に話すとぜひ行きたい!と言ってくれたが、同時に練習が間に合うだろうかという話になった。実際お互いGWまではスキーの予定でいっぱいで、練習はそれ以降からとなれば普通に考えれば短い準備期間だ。しかし、パートナーは同僚で打ち合わせは毎日できる。しかも、ビッグウォールクライミングの技術や情報を得にくい日本で、finetrack社内にはNOSE完登者が2人もいるという恵まれた状況である。大変だと思うがしっかり計画を立てて、finetrackであることを最大限生かせば何とかなる!そう結論付け、練習予定を立て始めたのが2月のことだった。
そしてGWからの約4カ月、それ以外のアクティビティはせずにみっちりと練習した。今年の夏は靴の接着剤が溶けるほど気温の上がった岩で、熱中症でふらふらになりながら練習に励んだ記憶しかない。そうして迎えた9月、いよいよアメリカへ出発の日を迎えた。

9/11サンフランシスコ空港着、移動
9/12Camp4チェックイン、準備
9/13NOSE1~4ピッチ、Siccle Ledgeからフィックスを張り下降
9/14NOSE4ピッチ目まで荷揚げ、渋滞で時間がかかりすぎたため再度FIXを張って下山
9/15NOSE5~9ピッチ登攀、Dloto tawar 泊
9/16NOSE10~15ピッチ登攀、Elcap tawar 泊
9/17NOSE16~18ピッチ登攀、CampⅣ直下のテラス 泊
9/18下降
9/19YosemiteからBishopへ移動
(以降行程は別記事にて)

■アクティビティ日 2022年9月13日~9月17日

サンフランシスコ空港で樫本と合流し、途中REI(アメリカの大手アウトドアショップ)でガス缶を購入したりしながらYosemiteへ向かう。
初日はHoddon Medow Campgroundに宿泊し、無事入国で来たことのお祝いに大きなステーキを焼いた。

翌日ついにYosemite Valleyに入る。最初はガスが濃く何も見えなかったが、徐々に姿を表す岩壁にテンションが上がる!特に実際に見るEl Capitanは想像よりはるかに大きく、見上げるのにも苦労する大きさだ。

Camp4にチェックイン。
クライマーとして憧れの地なので写真撮影に忙しい。

この日は午後から天気が崩れる予定だったため、装備の最終確認後アプローチの確認を行うのみとした。アプローチは看板が立っているくらい明白で、駐車場から近く迷うことはない。NOSE取りつきまで歩く観光客も多かった。

時間が余ったのでそのまま観光。岩が遊歩道から歩いてすぐの所にあり、クライミングというアクティビティがとても身近だと感じた。

翌日、NOSEを登攀するため取りつきまでのⅣ級ピッチを登る。
しかし思ったより難しい。途中で間違っていると気づき、左面のリッジから登りなおした。

(NOSE Day1)1ピッチ目(リード清水)。
ついに始まった。この日は空荷でSickle Ledgeまで行き、FIXを張るのが目標だ。

ピトンスカーについて日本でどれだけ他の人に聞いても全くイメージがわかなかったがようやく現物が見れた。
つるつるのポケットという感じ。下開きのような形状になっているものも多く、リンクカムのききが悪いところもオフセットカムなら大丈夫だった。

2ピッチ目。
噂通り下部は特にピトンスカーが多い。こわごわしながらテスティングを行い慣れていった。

3ピッチ目。
ピトンスカーだらけのクラックを登り、最後は1ポイントだけフリーで上がる。ほぼ1手のみだが、El Capitanのつるつる花崗岩にしっかり乗らなくてはいけないため怖かった。トポ通り、クライミングシューズ推奨。

4ピッチ目。
リードは樫本。最初の5.9のフリー部分はプロテクションが悪く苦労したようだ。後続パーティはエイドで抜けたらしく、ペッカーを使ったとのこと。

Sickle Ledgeにたどり着き、FIXを張って下降する。ロープ3本で下降することができた。下に降りると観光客から拍手で迎えられる。初めての経験に少し恥ずかしい。

(NOSE Day2)翌日はいよいよGo UP!・・・のつもりでSickle Ledgeまでのユマール&荷揚げを終わらせ、5ピッチ目を登り始めたが先行パーティがかなり遅く、5ピッチ目の終了点についた時点で12時を過ぎてしまった。
これは遅すぎるだろうということで再度下降。この日は荷揚げのみとなった。写真は5ピッチ目。

Camp4に戻るとビッグウォールのパーミットに関する張り紙を発見した。
2021年から始まったようで壁の中でビバークする場合申請が必要なようだ。知らなかったため、パーミット申請のためYosemite Villageに向かう。

Villageは観光客が多く、その片隅にBig Wall Permitはあった。申請自体はすぐに終わり、少し疑問だった登っている間の駐車場など確認事項が聞けた。その後、Village Storeで買い出しを行い、明日に備えて肉を焼いた。

NOSE Day3(Go Up1日目)改めてSickle Ledgeまでのユマールからスタート。
5ピッチ目は昨日登った通りに清水が登り、樫本が6ピッチ目を登り始める。振り子を数回を行い、Stoveleg Crackに入った。

7ピッチ目清水リード。
先程のピッチで樫本登攀中に#2カムを一つ落としてしまった。まだ2つあるため登るには問題ないが、プロテクションは取れなくなるなといっていた矢先に延々続く#2サイズのクラック。いつもなら美しいハンドクラックに感激するところだが、10m以上ランナウトとしているこの時ばかりはどこまでも同じサイズである事に悪態をつきながら登った。

8ピッチ目。
下部は登りやすいが、途中で少し広くなったところが少し登りにくかった。良い天気だが風が強く荷揚げロープが風にさらわれ、どんどん出ていきそうになる。ビレイしながらのロープ出しには気を使った。

9ピッチ目。
トポ上の10mピッチもリンクして一気にDolto Towerまで。60mロープはかなりギリギリで終了点はスリングで大きく伸ばす必要があった。登っている途中で暗くなり、荷揚げにも時間を取られ終わったのは21時半。

Dolto Towerはかなり広く、ガケ際に大きな石もあるためものを落としにくく非常に快適。日本でビバーク練習ができず本番を迎えたことに少し不安はあったが、初回が快適なテラスで助かった。

NOSE Day5(Go Up2日目)今日のリード順を決めるじゃんけんは特に緊張した。
King Swingはやってみたいがその前のTexas Flakeは怖い。覚悟は決めてきたものの直前になると怖くなってきていた。言葉にしないものの2人とも考えは一緒で緊張のじゃんけんタイム。負けたのは私でおいしい(?)ところは担当することになった。
まずは樫本の振り子トラバースからスタート。

振り返れば素晴らしい景色。このくらいから高さの感覚が良くわからなくなってくる。振り返るとパソコンの起動画面のような現実離れした美しい光景が見える。今思えば非現実な時間だった。

11ピッチ目清水リード。
登りやすいサイズのクラックをたどる。

12ピッチ目樫本リード。
少し登ってトラバースで終了点へ。

13ピッチ目。
いよいよTexas Flakeだ。このフレークは15mほどをバック&フットで登っていくのだがフレーク内にクラックはなく、ランナーは中間部のボルト1つしかない。気合を入れて登りはじめ広めのテラスから、フレークに入る。いらないカム類はテラスにおいていったがフレークに入るところが以外に悪く、いくつかカムを使った。

いざ中に入り登り始めると途中のランナーまでは簡単だった。
これなら問題ないと、そのままいこうとしたがここら辺から、幅が広くなり、急に登りにくくなる。急激に怖くなり、中間のボルトでフィフィレストをとった。その後、何度もボルトから行きつ戻りつを繰り返し、5回目のトライで何とかリップに手が届いた!全力のヒールフックで耐えている間にフレーク上のボルトにセルフをとる。すぐにセルフを取れる状態にしていて本当に良かった。

14ピッチ目。リードは樫本。
最初のボルトラダーを超え、ブーツフレークを登る。ボルトラダーの先はかなり細いクラックで悪そうだったが、樫本いわくカムフックの効かし方がわかってきたとのことでスムーズに登って行った。

ここで16時だった。ここからキングスイングを含めた3ピッチを登らなければ、ビバークできるテラスはない。
現在のスピードだとギリギリであると考え、話し合った結果、ブーツフレークの上に不要なギア、ホールバックを残置し、FIXを張ってEl cap towarでビバークをすることに。上からの目測通り、70mダイナミックロープギリギリいっぱいでEl cap towarまで降りることができた。

El cap towarは噂どおり、フラットで快適なテラス。夕日に染まる渓谷の景色を楽しみながら、快適なビバークができた。

NOSE Day6(Go Up3日目)FIXを登り、King Swingからスタート。
だがどれくらい降りて走れば良いのか、そもそもどこら辺までいけばよいのか降りてみても全くわからない。何度も壁にたたきつけられながら途方にくれていると、下からものすごいスピードで上がってくるパーティに追いつかれた。先にいかせてくれと言われ、手本がみたかった私は即決で順番を譲った。ブーツフレークのつま先部分という特等席から見た彼を手本に、改めて振ってみると2トライ目で届いた!思っていたより悪いカンテに苦戦していると先行パーティがロープを投げてくれようとしている。一瞬ロープを受け取るか悩んだがもう一生来ないであろうこの場で手を借りると必ず後悔すると思い、「My self!」と叫びながら、全力のカンテ越え。
何とか自力で超えることができた。ビレイ点で迎え入れてくれたつよつよの彼らは自分のことのように喜んでくれた。

ビレイ点について荷揚げを無事済ませた後の18ピッチ目、うすいフレークを登る。

19ピッチ目はトラバース。
私のリードは問題なく終え、荷揚げも終わらせたつもりだったがトラブル発生。私のとったランナー位置が悪く、後続ロワーアウトのロープが足りない。フォローの樫本は頑張ってくれたが、その作業の中、大フレークにロープが引っかかり動かなくなってしまった。無線で作戦会議をするも、徐々に強くなる風と遅くなってしまった時間の問題もあり、ロープを切るしかないという結論に。
予備ロープはあったが、翌日から天候悪化や現在のスピードを考慮すると登り続けるのは危険という結論となり、我々の敗退が決まった。

樫本をビレイ点に迎え入れ、景色を見ながら気持ちを落ち着かせる。
見納めとなるヨセミテ渓谷の壮大な景色を目に焼き付けながらビバーク準備を始めた。

この日泊まるCampⅣ直下の1人用のビビイスペースは1畳もない幅の外傾したテラスだったが、3日目ともなると高度感や寝方などにも慣れてくるものだ。色々寝方を工夫することで熟睡することができた。

NOSE Day7(Go Up4日目)荷物をまとめて6時に下降開始。
先程まで頭の上にあったGreat Roofが遠ざかって行くことに少し悲しさを感じる。しかし下降だけとはいえ10ピッチ以上の懸垂下降を天気が悪くなる前に終えなければならないため、感傷に浸ったり、トラブルを発生させている余裕はない。
間違ったルートに行かないよう、また回収も問題なく行えるよう注意しながら降り続けた。

10ピッチ以上懸垂下降を繰り返したところでようやく地面が近づいてきた。ここくらいまで降りてくると逆に高さへの麻痺感がなくなり怖くなってくるから不思議なものだ。
地面に降りきったのは11時半。5時間以上懸垂を繰り返したせいか、降りてすぐは歩くとふらふらしてすぐこけてしまう。そんな状況ながらも無事降りれたことにお互い安心し、握手をした。

翌日ヨセミテを出る前にEl Capitanを再度見上げる。予報通り悪化した天気に下降した判断は間違っていなかったと思いつつも、数日前とは違う気持ちはなんとも複雑だ。
敗退した決定的な理由はロープドラッグだったが全体的にスピードが遅かった。登攀、荷揚げスピードの他に強風への対応力や支点取りの技術などの力不足だったと思う。正直今の実力でも何度かトライできれば登れるのではと思うが、遠征で1度で決めるには実力が不足していた。
最後に写真をとって次の目的地、Bishopに向けて車を走らせた。

 

遊びのMVPアイテム

チューブツエルト

NOSEの先輩相川オススメのため持って行ったがこれは良いアイテムだった!
ビレイ用のロープを確保しながら容易に閉鎖空間を作ることができるため、下が見えないようにすることができ、ものを落とすことを考慮しなくてよいためテラスで過ごす際のストレスが圧倒的に軽減された。マニアックなアイテムとなるがBigWallにはおすすめのギアだ。

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