DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 清水 憲柱 ■写真:樫本・清水

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スタッフの遊び記録
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NOSEの後、本来はMt.Whitneyのバリエーションルートに行く予定だった。しかし、大寒波の到来とNOSEが予定より長くかかったせいで少なくなった日数を考慮すると難しかった。悩みながら行ったヨセミテのアウトドアショップで相談するとBishopはいいぞ!と激押しされる。「クライミングエリアもあって、ハイシエラの山も近く、暖かい。アウトドアをするには最高で俺の友達も最近引っ越した・・・。」と、若干の話の脱線も交えながらの激押しを聞いていると、寒波で寒いヨセミテ渓谷を脱出したくなり、次の日にはBishopへ。そしてBishopのアウトドアショップでトポをめくりながら相談していると、「この山はいいぞ!」と激押しされる。現地で情報をかき集めて登るのも面白いじゃないかということで、オススメされたBear Creek Spire(4180m)North East Ridge(5.5 ★★★★)を登ることにした。

(以前の行程はアメリカクライミングツアー前半記事 にて)
9/19 YosemiteからBishopへ移動
9/20 アウトドアショップ巡り、パーミット取得、Bishopでボルダリング
9/21 高所順応かねてwhitney trailを歩く
9/22 Bear Creek Spireアプローチ
9/23 Bear Creek Spireアタック・下山
9/24~27 サンフランシスコ空港より帰国

■アクティビティ日:2022年9月19日~9月24日

2022年9月22日
アプローチではLittle Lake Valleyを歩く。穏やかで自然を満喫できる良い景観だが、駐車場の時点で既に標高3000m近い高所だ。スケールの違いを感じながら歩き始める。

そんな高所だが家族でのハイキングといった風体の人も多い。日本の3000mでは考えられないことだろう。また犬を連れてトレイルを歩いている人が非常に多かったことにも驚いた。

Little Lake Valleyは名前の通り美しい湖が点在しており、トラウト釣りの人も多かった。

海外のトレイルは初めてだったが、本当に美しいトレイルであまり歩きの山行が好きではない自分もトレッキングにハマりそうだった。

壮大な景観を感じながら歩き続ける。Gam Lakeの少し手前から登山道を離れる。

地形図上の水線をたどるように歩き、高度をあげていく。写真のようなガレ場が多くなり、歩きにくいだろうと気合を入れたがこの辺りの岩はガレ場でもなぜかしっかりしており歩きやすい。

振り返えると岩山だらけだ。こんなにあれば登られていないルートも多いのではないか?と見える山々に思い思いの登攀ルートを描く妄想が止まらない。

ガレ場を歩き始めてしばらくしてからようやくBear Creek Spireが見えてきた。

Bear Creek Spireから正面に伸びる尾根が私たちが登るNorth East Ridgeだ。

名もなき美しい湖のほとりを歩きながら最後の登りを進める。のんびりと歩いたが登山口から5時間ほどで目的地のDude Lakeに到着した。

テン場であるDude Lakeは美しい湖で湖畔は平坦になっておりかなり快適。なにより明日登るルートが目の前にあり、モチベーションがあがる素晴らしいベースキャンプだった。

2022年9月23日
4時半発で歩き始める。ガレ場だが脆い箇所は少ないため歩きやすい。

美しいモルゲンロートに足をとめてしまう。周りを遮る山が少ないため遠くの山並みまで見える。

歩き始めて1時間半ほどでリッジが狭くなり始めたため、ハーネスを履く。トポの3級部分は始まっているようだが、ロープはまだ必要なさそうだ。この辺りはパーティで判断が分かれるだろう。

フレークが積み重なったようなこの岩の写真に惹かれてこのルートに決めたため、当初の目的が近づきテンションが上がる。全体的に縦にフレークが積み重なったような節理が発達しやすい岩の山の様だが、ここまで割れた岩も珍しい。

横に見える尾根もかなりかっこいい。North East Aleteというルートがあり、5.9ほどのグレードになるようだが、この山はしっかりした岩で節理も発達しているので素晴らしいクライミングができるであろう。

Ⅱ~Ⅲ級ほどの岩場をぐいぐい高度を上げていく。薄いフレークが積み重なっているだけに見えるが岩が固く、かけたり動いたりすることはほとんどない。爽快なクライミングだった。

振り返ればどこまでも山々が続いている。対面の山にはJohn Muir Trailがずっと続いているのが見えた。一度歩いてみたいものだ。

岩場をノーロープで高度を稼ぎ続ける。節理が発達しているのでどこでもジャミングがきき、ルート取りも自由だ。各々登りたいところを無心で登り続ける。

ある程度登り切り、稜線が近くなってきたあたりでロープを出した。

高度感を味わいながらロープを伸ばす。

登攀中、残置の類は全く見つからなかったため、ビレイ点はスリングやカムでつくる必要があった。この辺りのクラシックルートのようなので人は多く入っていると思うのだが、ビレイ点どころかハーケンすらないクリーンさに驚く。

5ピッチほどつるべで登り、山頂直下岩壁へ。ビレイ点は日陰で少し雪も残っており、この辺までくると風も強いためかなり寒かった。

最後の岩場を登ると岩の隙間に銀色の缶が。見るとふたには「This end UP!」と書いてあり、中には登った人たちのメッセージを書いたメモが入っていた。10:40、人生初の4000m登頂だ!

山頂は風も強く寒すぎるため、感慨に浸るのもそこそこに下降と始めた。このルート唯一だった残置支点で懸垂をする。30m懸垂1本で安定したところまで降りることができ、ロープはそこでしまった。

少し降りただけだが風が稜線に遮られ、少し落ち着く。まるで別の星に来たような景観の中、高所故の空の青さに感激しながら歩いて下降する。

稜線を超え、Dade Lakeが見えてきた。しかしスケールの大きさ故見えていてもなかなかたどり着かないのはアプローチの際感じた通りだ。酸素が薄いことあり、少し頭痛を感じながらもテンションは高いまま下降をつづけた。

ベースキャンプに着いたのは13:00頃。ここは山頂の寒さがウソのように暖かく、居心地が良い。このまま眠ってしまいたい気持ちをこらえながらの撤収は、クライミングより厳しい核心だった。怠けたくなる気持ちに何とか打ち勝ち、下山を開始した。

【備考】
今回登ったNorth East Ridgeは技術的に1番難しいところでもⅣ+くらいで、ルートファインディングも容易な初めての海外アルパインにちょうど良いルートだった。非常にオススメだが日本語での記録はほとんどなかったので簡単に詳細を記す。〈登攀時使用したギア〉
ロープは60mシングル1本のみ、登攀具としてはカム(#0.4~#3) 1セット、アルパインヌンチャク×6。基本的にビレイ点や残置はないが岩は固く節理が発達しているため、スリングやカムで支点を作ることは難しくない。ただし、200~300mほどⅣ級程度の岩場が続くため、全てロープを出すとかなり時間がかかってしまう。そのレベルの岩場を登り続けられる登攀力と体力は必要であろう。我々は序盤はノーロープで、稜線に出てからの5ピッチのみロープを使用したが基本的に取ったプロテクションは少な目だった。〈アプローチについて〉
・水について、湖はたくさんあるが飲料として使用するには浄水器が必要となる。我々は浄水器を持っていなかったため1人4Lをベースキャンプまでもって登った。
・Bear Creek Spireは国立公園内で入山できる人数が制限されたエリアとなるため、入山や宿泊にはPermitを取る必要がある。アメリカの国立公園管理サイトの「Recreation.gov」でも申請することはできるが、サイトの操作やpermitの範囲が少々わかりにくいため地元のレンジャーハウスに行って申請することがオススメ。我々はBishopの「White Mountain Public Lands Information Center」で申請をした。
・この辺りは熊の保護区域であるためベア缶を使用する必要がある。購入したり、地元のアウトドアショップでレンタルすることもできるが前述のレンジャーハウスで借りるのがオススメ。他の町のレンジャーハウスで返却することもでき、返却も建物の外のポストに返却できるため、返却時間を気にせず行動することができる。〈他〉
・トポはHigh SierraのSuper Topoを参考にした。またSuper Topoのサイトに一般登山者の投稿もあり、参考にすることができる。
・地形図は携帯のアプリを使用した。使用したのは「Gaia GPS」。無料で使用することができ、データのキャッシュもできるため不満はなかった。
・現地での滞在はBishopのPleasant Valley Pit Campgroundを利用した。シャワーなどの水場はなく、電波も入らないがBishopの町から近くて、1泊10ドルと安い。何よりアメリカらしい荒野のキャンプ場から見る星空は素晴らしかったためおすすめだ。

 

遊びのMVPアイテム

レイルオンシェード

日焼け対策に使用した。正規の使い方ではないがゴムを通すことでヘルメットにつけることができ、首筋の日焼けを防ぐことができる。

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