いつか挑戦してみたいと思っていた黒部横断。
雪と天候に恵まれた2025年3月下旬、ついにそのチャンスが訪れた。
ルートは、戦国時代に佐々成政が厳冬の中、家康に助けを求めに敵の目を避けるため越えたとされる「さらさら越え」。
ロマンが詰まったこのクラシックルートにスキーで挑むこととなった。
■アクティビティ日
2025年3月20日〜3月22日
終業後、鹿島槍東尾根を狙う社内のパーティと共にオフィスを出発。
信濃大町で車を降り、タクシーで日向ゲートへ向かう。そこから扇沢までは除雪された舗装路を歩く。
黒部川渡渉と舗装路のために、冬のサーフィンで使っているサーフブーツを持参した。
裏面はラバーで補強されているものの薄手のため長距離歩行には不向きだが、今回は数キロで済んだので耐えられた。
同行の衣川は足袋をチョイスしていた。
舗装路を歩く。荷物が重い
扇沢で一息ついた後、針ノ木峠を目指してシール登高を開始。
いくつかのパーティがそれぞれの目的地を目指していた。
ハイクアップ開始
吸い込まれそうな光景
振り返ると美しいシール登高のラインが描かれていた
峠に立つと、後立山や槍・穂高の山々が広がり、思わず足を止めたくなるほどの絶景である。
針ノ木峠にて
2,536mの峠から1,863mの出合いまで、ノンストップ滑走といきたいところだったが、雪は激モナカ。
まともなターンは難しく、途中で沢が割れて板を担ぐ場面もあり、なかなか思うようには進まなかった。
激モナカで足がパンパンに・・・。
所々で板を外すことも
針ノ木谷に合流してからも、斜度は緩く雪は重い。気合いでプッシュを続ける。
黒部ダムに近づく頃には斜度はほぼフラットになってしまい、シールを装着して前進。
スノーブリッジをいくつか渡り、渡渉も何度かこなす。
何度か渡渉あり
谷から抜け出すころには西陽が射し込み、広がる雪原と黒部川が作り出す光景が美しかった。
立ち枯れの木々が湖底であることを静かに語っていた。
谷を抜けると黒部ダムが見えた!
黒部川の渡渉は、雪解け水が足を突き刺すように冷たい。
1度渡れば終わりかと思いきや、もう一本川があり、結局2度も水の中を歩くことに。
衣川は濡れを最小限に抑えるため全身ドライレイヤーで渡る。
1本目を渡る全身ドライレイヤーの衣川。冷たあぁぁ!
2本目を渡る筆者。サーフブーツはウエットスーツの素材なので温かく快適。2本目は川底が泥で足を取られやすい。
暗くなる前にこの日の行程を終え、中ノ谷が見える湖底でテントを張る。レインフライと迷った末にスノーフライを選んだが、風の吹きこみがなく、温かく過ごすことができた。
本日の行動終了
~雪山ごはんのはなし~
最近の雪山での食事は、夜はアルファ米にフリーズドライの丼物、朝はスライス餅を小ぶりのうどんに入れていただくのが定番となっている。
粉のマッシュポテトも副菜として優秀である。まだまだ改良の余地はあり、探求は続いている。
水作りは、火力のあるガソリンバーナーで雪を溶かし、水になったところで、燃費の良いジェットボイルで効率よく沸かす。
夜のうちに翌日分の行動用の水と朝食用の水を作っておくことで、朝の支度がぐっと楽になる。
朝はガソリンバーナーの準備と片付けがやや面倒なので、ジェットボイルを使用している。
翌朝、湖底を散策した後、中ノ谷からザラ峠への長い登りが始まる。
標高差にして約900m、下部のゴルジュ帯は朝の締まった雪を狙って通過した。
ゴルジュ帯は素早く抜ける
稜線に近づくにつれて風が強まり、立っているのも困難なほど。
ザラ峠では、正面からの風があまりにも強く、前へ進むことができないため、岩陰でアイゼンを装着し、スキーを担ぎ四つん這いで進む。
稜線下を50mほどクライムダウンすると、ようやく風が落ち着き、滑走の準備が整った。
爆風で立つこともできずクライムダウン
北面の斜面は雪質も良く、気持ちよく滑ることができた。
滑走後は常願寺川沿いを左岸・右岸に渡りながら進み、適当な台地でテントを設営。
稜線の風が嘘のように穏やかで暖かく、立山連峰を眺めながら外での食事を楽しむことができた。
贅沢な時間である。
常願寺川へ
今日はここまで
テントの中では、行動中の反省点や、ウエアやギアの試作品の改良点を話し合う。
商品開発課の衣川は、その内容をノートに書き留めていた。
その姿は、まさに未来への宝探しだ。
満点の星空
最終日は立山駅を目指して進むのみである。
1泊2日やワンデイでの記録が多い中、今回は2泊3日としたことで、心にも時間にも余裕があった。
おはよう!
常願寺川沿いはさらに斜度が緩やかになり、滑るというよりはプッシュで漕ぐ時間が増えた。
やがてシールを装着し進んだが、春の雪がシールに付着して団子になる。
シールワックスを持って来ていてよかった。
シールの他のトラブルとしては、低温時にノリ面に雪が付着し、シールがどうしても貼りつかなくなることがある。
その対策として、スキーバンドを4本携行している。シールを固定する際のみならず、他の場面でも活躍する。
蛇行する川沿いを猛プッシュで漕ぐ!
日が高くなるにつれて気温が上がり、両岸の斜面が雪崩を起こし始める前に、黙々と前進する。
そしてついに、立山駅が見えたときの達成感は、言葉では表しきれないものがあった。
立山駅が見えたぞー!45kmの行程も残りわずか
ゴール!!!
時間には余裕があったため、列車に揺られてゆったりと神戸へ帰った。
3日間の余韻に浸り、次の旅のコンセプトを考えながら帰路につく
カミナ®ドーム2
4シーズン対応。軽くコンパクトでオプションも多彩。オールシーズン、様々なエリアで遊びたい人にはオススメのテント。スノーフライは家で装着し圧縮して持っていけば現場で素早く展開可能。
執筆者:マーケティング課 山下 良太
入社年:2021年
最近、日本の離島に魅力を感じています。
礼文島、利尻島、屋久島、種子島、西表島、与那国島、波照間島どこも素晴らしかった。
山と川と海がコンパクトに揃っている。
離島は、スキー、サーフィン、登山、バイク、釣りといったアウトドアを楽しむのに独自の文化や非日常感も相まって最高だと思っています。
離島旅は続く・・・!