DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

10/92025

ノルウェー&スウェーデンひとり山旅~シナモンロールを背負って~

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6年前に北欧に移住した親友から、結婚式のおたよりが。
北欧といえば幼い頃、母に読んでもらったムーミン谷の物語を思い出す。作中に描かれていた素朴で美しい北欧の自然の情景が目に浮かんできた。せっかく行くなら友人の門出を祝うだけでなく、自然も満喫したい!
目標は北欧の山で本場のシナモンロールを食べること。果たしてどんな景色が待っているのか…格安航空券を握りしめ、ザックにテントを詰め、一人北欧の地へ旅立った。

ノルウェー編~ヨトゥンヘイメン国立公園で氷河湖を望む稜線Besseggenトレッキング~

関西空港から上海でのトランジットを経てたどり着いたデンマーク コペンハーゲン空港。
時刻は20時。日本ならとうに真っ暗な時間であるが高緯度ゆえ昼過ぎくらいの明るさである。


まだまだ明るい

機内が乾燥していて喉がカラカラだったためすぐに水を買おうとコンビニに入ると500mlのミネラルウォーターが30DKK(約600円)…!
物価の高さは事前に知っていたもののここまでとは…。思わず唾を飲み込み我慢。

日本から計16時間ほどのフライトで腰はバキバキであるが休む間もなく夜行バスに乗り継ぎ、600㎞先のノルウェー首都オスロへ向かった。


夜行バスに乗って宿泊費を節約する貧乏旅

バスはデンマーク・スウェーデンの国境を越え北へ向かう。ビートルズのノルウェーの森を聞きながら、車窓から眺めるノルウェーの朝焼けが美しい。

ビートルズのノルウェーの森も、村上春樹のノルウェイの森も、ノルウェーとは無関係である

バスに揺られること8時間、朝6時頃オスロに到着。
長時間の移動で膀胱は限界、駅のトイレを探すとトイレの前に自動改札のようなゲートが。トイレに入るだけで20NOK(約300円)かかるらしい。えらいこっちゃ。


飲むのも出すのもこの国ではえらい金がかかる

駅周辺で食料を買出しし、再びバスに乗ってヨトゥンヘイメン国立公園へむかう。
自宅を出てからかれこれ30時間以上ひたすら移動している。そろそろ痔になりそうだ。

山岳リゾート地にもなっている麓周辺はバスから見える景色も楽しい

オスロから4時間半かけバスは登山口に到着。
早速目の前に広大な氷河湖が広がりテンションが上がる。


売店で値段を見ずに地形図を買ったら293NOK(約4500円)で思わずレジで声が出た。

初日であるこの日はGjendesheimからMemurubuまでGjende湖畔を11㎞ほど歩く。多くの人がこの行程は湖上を進むフェリーに乗って20分ほどでショートカットするのだが、日が沈むまでまだたっぷり時間がある(この日の日没は22時過ぎ)。せっかくならこの美しい湖を眺めながら歩こうじゃないかということで歩き始めた。(というよりフェリー代を節約したかったのが本音)

氷河湖であるGjende湖を眺めながらのトレイルが続く

アップダウンはさほどないものの、コインロッカー代をケチって荷物を預けなかったために、お土産やら着替えやら山では使わないものも大量に詰まったザックがひどく重たい。

おやつはKaviarという北欧ならどこでも売っている魚卵ペーストのチューブ。たらこマヨみたいな味。パンに塗ったりそのまま舐めたりして塩分補給。

歩くこと3時間ほど。時刻は18時だがまだまだ太陽は高く、さんさんと日差しが降り注ぐ。
変化のない景色も相まって、いつまでも沈まない太陽が段々と恨めしく感じられてきた。
集中力は徐々に切れ始め、猛烈な睡魔に襲われる。思えば昨日の夜行バスでは興奮してほとんど眠れず、さらに日本出発の前夜も長時間のフライト中に少しでも眠れるようにと徹夜で過ごしており、2日間まともに寝ていないのだ。
歩きながらもつい寝そうになり、何度も足を滑らせる。

沈まぬ太陽、不気味なほどにエメラルドグリーンのGjende湖、無駄に重たいザック…いったい自分がどこを歩いているのか、眠さも手伝ってわけがわからなくなってくる。
数年前に大ヒットしたスウェーデンの夏至祭を描いたホラー映画「ミッドサマー」のキャッチコピーが【明るいことが、おそろしい】であったことを思い出し、妙に納得させられた。

時差ボケ+睡眠不足に加えてこの明るさ、気が狂いそうだゾ

実際に体験するまでは、日が沈まないなんてどんなに素敵だろうと思っていた自分を殴りたい。体内時計は狂いっぱなし、現地の友人も言っていたがこれはたしかに頭がおかしくなりそうだ。

ぼんやりした意識の中なんとか歩き切り、テン場となるMemurubuに到着したのは20時ごろ。到着を待ち構えていたかのようにさっきまで晴れ渡っていた空から土砂降りの雨。
大急ぎでテントを設営、外の明るさもお構いなしにのび太くん級の早さで眠り落ちた。

スカンジナビア半島に初めて上陸したカミナモノポールかもしれない

翌朝、雨が止むのを待って朝6時頃テントを撤収し出発。
早速稜線に出るまで急登をせっせと登る。

ここまで2時間以上かかってんならおめえには無理だから引き返せ、的なことが書いてある

振り返ると美しい氷河地形が一気に目に飛び込んできた。

氷河が削ってできた地形

ノルウェーがあるスカンジナビア半島は古生代に形成された古期造山帯にあたるため、新期造山帯の日本アルプスのような急峻な地形と異なり、長い年月をかけて浸食されたなだらかな地形がゆったりとどこまでも広がる。
…ということを高校の地理の先生が言っていたなあと思いだした。しょっちゅう居眠りしてましたけど当時の授業、ちゃんと役に立ってますよ、小野寺先生!

教科書みたいなU字谷(氷河がゆっくりと浸食することでできた谷)

日本との地質学的違いを感じ、改めて遠くに来たことを実感する。

急にいやらしい雲がかかる

ピークに向かう稜線上、急に雲行きが怪しくなってきたかと思えば一気に大粒の雨が。あわてて雨具を取り出す。

もっててよかったフォトン

手足をつかってよじ登るようななかな歩きにくいガレ場が続き、どうしてこんな時に限って雨…とぶつくさ文句を言いながら歩いていると、視界になにやらモフモフしたものが飛び込んできた。

きゃわたんなオトモダチが登場

お犬様である。フェリーを使えば日帰りも可能な本ルートは地元の人たちのお散歩コースにもなっているようで、度々散歩するお犬様と相まみえることができた。

日頃せっせと徳を積んできたおかげか、ちょうど本ルート最大の見せ場であるポイントで雨は止んだ。
細い稜線を挟んで左右に異なる氷河湖を眺めることができる絶景ポイントである。

左がGjende湖、右がBessvatnet湖。両者の色の違いは水質が異なるためとのこと。
エメラルドグリーンが美しいGjende湖には、氷河が山を削るときにできる微細な鉱物粒子(氷河粉)が含まれているためこんな色に見えるらしい。
数百万年の時間をかけて作り上げられた自然の神秘に圧倒される。ここまでとても遠かったがはるばる日本からやって来た甲斐があった。

ところで、北欧といえばシナモンロールである。
オスロの駅で購入したシナモンロールをザックから取り出し、この雄大な景色を眺めながらいただく。

ノルウェーのシナモンロールはでかいぞ

日本で売っているものとは異なり北欧のシナモンロールはカルダモンがたっぷり入っていてちょっとオトナな味なのが特徴だ。口に含むと重厚なスパイスの香りが一気に鼻から抜けていく。日本のシナモンロールは甘ったるいだけに感じられてあまり好みでなかったのだが、すっかり虜になってしまった。
ちなみにこのシナモンロール、北欧ではコンビニやスーパーなどどこでも焼き立てが手に入る。いたるところで売っているため、あちこちでカルダモンの香りがしており、北欧を思い出させる香りとなった。

その後も広大な氷河地形が続き全く飽きさせない。どこまでも美しいトレイルだ。

遠くを見ると湖の水面に山の影が映っていることに気づいた。
ユーミンの名曲「水の影」の「遠いイマージュ 水面におとす」という歌詞の表現がとてもしっくりくる。

ピークに向かう稜線で強い雨に打たれた以外は概ね気持ちの良い晴れ。いい気分で15㎞ほどの道のりを歩き下山した。

一生分くらいの氷河湖を眺めた

下山後、登山口で行きと反対のバスに乗り込み、再びオスロへ向かう。
しかし発車時刻になってもなかなかバスが動き出さない。もしや乗るバスを間違ったのではと不安に思って立ち上がると、運転手のおっちゃんが客席に座って大きなピザを一人でむしゃむしゃほおばっているではないか…!
オスロで乗り継ぎを控えていたので、早く出発してくれないかとハラハラしていたら「こんなに食べきれないから食うか?」とアツアツのピザを差し出された。

これが北欧で食べたものの中で一番おいしかった

すっかり運転手や他の乗客とも仲良くなり、予定時刻より20分ほど遅れてようやくバスは出発した。
日本ならネットで晒されてプチ炎上しそうな出来事だ。こんなのんびりしていても許されるなんて…どうやら日本でせかせか生きている我々とは流れている時間が違うらしい。ノルウェーの田舎をとても好きになった出来事だった。
当然終点のオスロには大幅に遅れて到着。
休む間もなく今度は夜行バスに乗り継ぎ、スウェーデンの首都ストックホルムへ向かった。


隣の座席に座った5歳くらいの男の子が近くのお父さんに何か大きな声で訴えているので気になって音声翻訳で盗み聞きしたらこの内容で吹き出してしまった。彼の家の床下が心配だ。

スウェーデン編~ロングトレイルを歩く旅

ストックホルムで2日間ほど観光を楽しんだのち、友人の住むスウェーデン南部スコーネ地方へ特急列車に乗って4時間ほどかけ移動。

ビストロ車両がくっついており電車の中でサンドイッチやジュースを買えてたのしい

スウェーデンでロングトレイルといえば北部のクングスレーデンが有名であるが、南部にも“Skåneleden”(スコーネレーデン)と呼ばれる全長1600㎞のロングトレイルがある。
今回は友人宅へのアクセスを考慮しトレイルの一部セクションであるÅhus(オーフス)~Kristianstad(クリシャンスタード)の24㎞ほどをサクッと歩くことに。

Kristianstad駅の近くの観光案内所やアウトドアショップで話を聞きつつトレイルの地図を入手しいざ出発。

観光案内所に行けば無料で地図をもらえる

トレイルのスタート地点にアイスクリーム屋があったので購入してみたら致死量のアイス(サーティワンの一番大きいサイズで4玉分くらい)がでてきて驚愕。


「キャラメル味とライム味のダブル」と言って頼んだらそれぞれの味がダブルになって4玉でてきた。そういうことではないぞ。

急な血糖値の上昇に吐きそうになりながら行動開始。
本セクションはÅhusのビーチを歩くトレイルに始まり、森の中、牧場の中、湖畔沿いと変化に富んだルートであった。

なかまに なりたそうに こちらをみている!

某クラフトゲームの小麦畑のような景色。緑色の化け物が爆発して吹っ飛ばされないように注意が必要だ。

どこまでも広がる小麦畑、遮るもののない牧草地と牛や馬たち…スコーネの景色は地元北海道の景色と似ている。旅行に来たというより「帰ってきた」といった感じでどこか懐かしい。


今回も旅のおともはシナモンロール

トレイルはよく整備されており歩きやすく、6時間ほどでゴール。
次は他のセクションも繋げてみたい。…というか全セクションが載ったおよそ5000円もするマップを店員に勧められるがまま買ってしまったのでいつか元を取らねばならん。

インテリアや雑貨が好きでいつか訪れてみたいと思っていた憧れの北欧。 実際歩いてみると自然・街並みの美しさがとても印象的で、ますます好きな場所になった。 多くを語らないけれど素朴で親しみやすい人々、かざらないありのままの自然、ゆったりと流れる時間… 初めて訪れたにもかかわらず、北欧の地はどこか懐かしくて安らぎを与えてくれる。 次は今回いけなかったフィンランドにも行ってみたい、寝台列車に乗って北極圏へ行くのもいいし、オーロラを見に行くのもいいなあ… またいつか必ず訪れることを決意し、日本への帰路についたのであった。

遊びのMVPアイテム

カミナモノポール2
海外遠征で悩ましいのが装備の軽量化。慣れない地への不安ゆえあれもこれも持っていきたい、しかし預入荷物の重量制限、山だけでなく観光もしたい…となると装備は普段の山行以上にコンパクトにしたいところ。そんなニーズに絶妙にフィットするのがシングルウォール&ポール1本で自立する軽量テント。ツエルト以上の居住性&ダブルウォールテントより軽量コンパクト。さらに一枚地のため濡れても乾きが早いのも嬉しいポイント。今回の山行では夜通しの雨でぐっしょり濡れてしまったが下山後バスを待っている時間に広げておいただけでほとんど乾いてくれた。海外山行のお供にぜひ。

カミナモノポールの商品情報へ

 

執筆者:マテリアル開発課 片岡 美菜

入社年:2022年

山の上での食と酒は妥協しないのがポリシー。執拗なまでの食い意地と吞兵衛精神ゆえ、食べ物と酒がたっぷり詰まった重たいザックを背負って日本全国、時には海外の山をさまよい歩く。酒の肴はエイヒレが好み。

※自然の中でアクティビティを行うためには、十分な装備、知識、経験が必要です。事前の準備を徹底したうえで、安全に注意してお楽しみください。
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