最近の夏は暑すぎる!
私が子供の頃は、標高を上げればそれなりに快適だったと記憶しているが、近年では「涼しい」どころか、日射でジリジリと焼かれる始末。快適に歩けるのって、夜明け前しかないのでは…?
樹林帯のハイクアップでは曇り、稜線では晴れ。そんな都合のいい天気を期待するのは、きっと私だけではないはず。
昨今の夏の暑さには後ろ向きな気持ちになってしまいがちだが、日本は素晴らしい国で、暑さにうなだれグータラしていても勝手に季節は進んでくれる。9月下旬になり、残暑もラストスパートで、気づけば秋の入り口である。「もう少しで紅葉ハイクできる頃か」と思い、やっと重い腰を上げる気に。
そんな前置きをしつつ、今回は越後駒ケ岳へ。まだ紅葉は早いのだろうが、北ならワンチャン見れるだろうか?せっかく新潟まで行くなら、1座じゃもったいない。静かな山奥をテントでのんびり縦走できそうなルートはないかなと地図をにらむと、荒沢岳〜中ノ岳〜越後駒ケ岳の周回ルートが見えてきた。なるほど、この3座をまとめて「裏越後三山」と呼ぶわけね。
幼い頃から「裏」という言葉には惹かれるものがある。裏道、裏技、裏メニュー…。そういうのには弱い。そんな“少年心”をくすぐられて、安直にルート決定。その後、洗礼を受けることに…
(※ちなみに「表越後三山」は、荒沢岳ではなく、かの有名な八海山が入るそうだ。)
行き先が決まったら、次はルートチェック。
ふむふむ…って、ちょい待ち。距離30km、累積3000mあるじゃん。しかも荒沢岳って、通称「越後の穂高」って呼ばれるくらい急峻なのか…。なにこれ、わりとマジのやつじゃん。さらにログを見ると、日帰りの健脚勢が目立つ。いやいや、どんな猛者やねん。
ちなみに私の体力だと、1日あたり距離10km、累積1000mには収めておきたいところ。やはり2泊3日が現実的か。どこか2か所、幕営地にピックアップしなきゃね…。
■アクティビティ日
2024年10月11日~10月13日
〇エピソード0:出発前夜
定時で仕事を切り上げて帰宅。シャワーを浴びて、うどんをすすりに行く。ちなみに私の前夜メシは、うどんと決まっている。早い・安い・美味いの三拍子揃いで、バタバタの前夜にはうってつけ。
食事を終わらせ、相方と合流し、22:00に神戸を出発。そこからは交互に休息を取りながら、北陸道をひたすら北上。
〇エピソード0.5:靴下事件
道中、とあるサービスエリアでトイレ休憩。そこでふと、重大なことに気づく。
「うわっ!靴下入れるの忘れた!」(ここでいう靴下とは登山用の厚手靴下のことである)
慌ててそこのコンビニへ突撃するも、良さげな靴下は見つからず…。売ってある薄手で行くかと諦めかけたそのとき、一連の事情を聞いてくれた相方が一言。
「2足持ってきたから1足貸すよ」
神!いや、マジでありがとう相方!
無事に危機を回避し、再出発。
〇エピソード1:いざ、スタート
長時間移動の末、登山口である銀山平に到着したのは6:30。平日だったおかげか、駐車場一番乗り。
一番乗りの駐車場
静かな山奥に鳥のさえずり、寝不足かつバキバキの身体……正直このままお布団にダイブしたい。でも今日は長時間行動、気合い入れていかねばならぬ。
朝メシは、神戸で買ってきた菓子パン&総菜パンのW炭水化物セット。エネルギー補給して、いざ出発!
〇エピソード2:天気のイタズラ
歩き出してのすぐの急登。まだザックの重さに慣れずに四苦八苦していると、さっきまで青かった空に、怪しげな雲がじわじわと。なんか…降りそう。
そして案の定、ポツポツと雨が。次第に雨脚が強くなり、まだ続きそうなので雨具着用。再度ザックを背負い直し歩き出して数分…雨が止んだ。
…なんでや…
まぁ、止んでくれるならありがたいんだけれども。
周囲の木々は、まだまだ緑。標高上げれば、もう少し黄色くなってくるかな?
急登を抜けると、尾根沿いのなだらかな道に出る。ここでは色んなキノコを愛でたり、特徴的に曲がった木を眺めたりして、チルな歩きを楽しむ。
きのこ♪
特徴的な木
木の精霊?
「ずっとこんな道が続いてくれたらいいのに」と思っていた矢先、上方に岩がチラ見え。
あれ…もしや…
〇エピソード3:前嵓(まえぐら)下
はい、出ました前嵓。前嵓とは途中にある岩峰で、荒沢岳の核心部にあたる場所である。
尾根沿いを進み、なんか地味に傾斜が急になってきたなと思ったら、いきなり始まる鎖場。イベント突入である。最初は問題なさげだが、後々のことを考えしっかりメット装着。
何本か鎖を登って、途中でハシゴも登場。大きめのザックでも引っかかる箇所はなし。
で、岩場を登り切ると、ドーンと広がる前嵓の岩肌。うわ、でっか…ガスで全容は見れないものの、かなりの迫力。
大迫力の前嵓
流石にこの岩峰は迂回し、脇の鎖場を登っていきます。
〇エピソード4:前嵓本番
さて、ここからが本番。ホールド(手がかり)もスタンス(足場)もしっかりして問題はないが、高度感はあり、スリル満点。岩が濡れているのがややナーバス。
こんな感じで登っていく
まだまだ登る
登っていくと、なぜか一部鎖がない箇所もあるので、そこはとくに注意。
後半になるにつれ、ステップも大きくなり、縦走用のザックでは身動きが取りづらくなってくる。
景色なんて見てる余裕はもちろんゼロ。体感では20分くらいずっと登っていた印象。
他の登山者がいないから待ち時間がないが、紅葉最盛期の週末はこのあたり大渋滞するらしい。
〇エピソード5:荒沢岳のテッペンへ
前嵓を詰めると、やっと山頂へ向けての稜線歩き。
山頂まで続く
だがしかし、これがまたキツい。この手の登りは「足を前に出していれば終わる」という思いだけで無心に歩いている。それにしても荒沢岳かっちょいいな。
一瞬だけ晴れた
ふと谷筋を見ると、鋭く削れてて、ところどころ穴あき状態。雪解け水がかなり多いんだろうなと改めて豪雪地帯であることを体感。
さすが豪雪地帯
頂上直下まで来ると、断崖絶壁の映えスポットも。道幅は十分あるけど、高所苦手な人は注意。
面白そうな岩
慎重に渡る
そして、振り返ると、ガスが山肌を這うように上がってきてる。
山沿いを上るガス
「うわ〜やっと来たわ〜」ってしみじみ思いながら、岩場をもうちょっと登ると……
はい!荒沢岳 山頂!
裏三山その1
いやー、長かった!とりあえずおにぎりモグモグ。
でも、まだ今日は終わらないのよね…。脚の重さを感じつつ、泣く泣く出発。
〇エピソード6:もうひと(?)踏ん張り
時刻はもうけっこういい時間。前嵓で想定より時間を使っちゃった。
とにかく少しでも先に進まねばと、下りはペースアップ。…が、登り返しでは脚が鉛になりスローダウン。
途中、池塘や野営跡地っぽい場所もあったがスルー。感情を無にしてとにかく足を前に出す。
そして、あるあるだけど、「あのピーク越えたら…!」と思っていったら、さらにその奥に本物のピーク。
なんだ偽ピークかよ←メンタル削られるやつ。
哀愁漂う背中
やっとのことで目的地が眼下に現れたときの喜びたるや…。
しかもそのあたりが、今回の山行で一番紅葉っぽさを感じた場所だったかも。「紅葉や!」
そのときは写真よりももっと綺麗な紅葉だったが、それは私の中だけにある思い出…。
今日はあそこで幕営
日没ギリギリで滑り込んで、テント設営→晩メシ→爆睡!
「ピィーーーーーー!」
深夜、どこか遠くで鹿が鳴いていた。
秋は発情期らしい。なんというか…元気だな。
〇エピソード7:2日目スタート
今日はひたすら縦走の長丁場なので、ちょっと早めに起床。朝ごはんを済ませて、日の出とともに出発。
おはよう
朝焼け+うっすら紅葉の草原が、いい感じに幻想的で気分が上がる。今日は快晴だ。
天気良き
昨日あれだけしんどかったのに、不思議と脚は元気。よく寝たおかげか…?
〇エピソード8:まずは兎岳
最初の登りを終えると、今日の行程が全部見えた。
2日目の工程一望
今日は正面の兎岳超えて、中ノ岳抜けて、いっちゃん右の越後駒ケ岳まで行くぜ!
…なんか遠くね?
それにしても青空にナナカマドの実は映える。
青い空とナナカマド
兎岳到着。あれは、ミッ〇ィー…?
ミッ〇ィーを探せ!
兎岳はサクッと通過。ただ、そこからの下りが最悪。粘土質の土+朝露で、ズルズル滑る。おかげで下半身はドロドロびっしょびしょ。まぁ、登山ってそういうもんよね。
そういえば、隣の谷が利根川の源流らしい。ここから銚子まで流れるって、雨水の旅も大変だな。
気付けば目の前に中ノ岳が迫っている。結構荒々しいな。
中ノ岳を望む
〇エピソード9:中ノ岳へ
兎岳から登り返す途中で、後ろを振り返ると、兎岳と稜線がきれいに見えた。
兎岳からの稜線
谷の下には雪渓も。10月なのにまだ残ってるって、これは万年雪ということか?とちょっとロマン。
万年雪?
詳細は端折るが、キツめの登りを終えると、偽ピーク1つを経由して中ノ岳山頂。
裏三山その2
中ノ岳には避難小屋あり。これがまたキレイに手入れされてて快適。
中ノ岳避難小屋
裏三山を1泊2日で来る人はここで1泊することが多いらしい。1日でここまで来る猛者達もホントすごい。
しっかり休憩して、後半戦スタート。
〇エピソード10:檜廊下
中ノ岳と駒ケ岳の間にある「檜廊下」。ここは注意が必要だ。片側が崖で、もう片側は木がせり出してるため、ザックが大きいと枝に引っかかり崖側に押されそうになる。慎重に通過する。
檜廊下を望む
〇エピソード11:越後駒ケ岳へ
檜廊下を抜けたら、あとは駒ケ岳までのジワジワ登り。これがまた長い。体力はもう残り僅か。写真撮る余裕なんて一切ない。
でも、山頂に近づくにつれて人が増えてくる。いつもなら「人少ない方がいいな」って思うけど、今日は人の気配がなんかありがたい。ホッとする(笑)
裏三山その3
ようやく駒の小屋に到着。日没ギリギリ。なんとかテント張れるスペースを確保し、設営完了!
今夜は下山だけだと思うと気が緩むのか、持ってきた食料をモリモリ食べて就寝。
〇エピソード12:下山
早めに下山したい!ってことで、3:00にヘッデン点灯してスタート。夜間の歩きとは不思議なもので、暗闇の中を歩いてる記憶と体力が夜明けとともにリセットされる感覚。これも登山あるあるなのだろうか?
気づけばだいぶ下り、道行山へ。
目の前には広がる雲海…最高だ!
最終日の雲海
しばらく朝焼けと余韻に浸る。振り返れば駒ケ岳。山頂はガスの中か…。
駒ケ岳を望む
そこからは急坂をひたすら下り、沢沿いの崩落地を慎重にトラバース。そして、林道に出たときの安心感。
銀山平の駐車場に着いたのは朝7:30。すでに満車!路肩に車があふれてて、さすが連休中日って感じ。
〇エピソード13:下山後の悲劇
街中まで出る途中、コンビニでホットスナックを買おうと車から降りた、そのとき――
「いっっっっったぁぁぁ!!!」
脚に激痛。まさかの筋肉痛が今きた!
つい30分前までなんともなかったやん!
でも、ここまで耐えてくれてありがとう!
とりあえず無事に下山できてよかった。
次はどこに行こうか?
ドラウト®クロー
秋山では体感温度の変化が激しいです。登りは暑いためドライレイヤー+ベースレイヤーで十分ですが、停滞時や降りではその汗が一気に冷やされ寒く感じます。そんなときにドライレイヤーだけに頼るのではなく、ベースレイヤーの汗をさらに吸い上げ、保温してくれるジャケットはやはり必須アイテムではないでしょうか。私のおすすめはドラウトクロー。濡れたベースレイヤーの上に着ると、どんどん汗を吸い上げて気付くとベースレイヤーもドラウトクローも乾いている。適度な保温力が秋山には絶妙にマッチします。
執筆者:マテリアル開発 苅田 匠
入社年:2022年
限界追求系のアクティビティからは早々にドロップアウトしました。
春の山菜探しが毎年の楽しみです。
ふきのとうの煮びたし、これをアテした日本酒が至高です。