
今年の連休は9日間。
行き先を考えながら地図を広げて眺めていると、南アルプスにまだ繋げていないルートがあることに気づいた。
それは、いつか歩こうと心に決めていた3本の尾根「蝙蝠尾根」「仙塩尾根」「早川尾根」。
せっかくの機会なので、そのすべてを繋いで歩こうと、計画を練った。
■アクティビティ日:2026年5月2日~2026年5月10日
【Day0 5/1】
定時ダッシュで電車に乗り込み、近所のラーメン屋でたらふく食べ、エネルギー補給。お風呂に入り、おにぎりを握ったら、さぁ、出発。
今回は南アルプス、奈良田方面(新田発電所駐車場)に車を走らせる。自宅からは約5時間、1人で運転するには少し長い。途中で仮眠をとり何とか到着。
【Day1 5/2】
6:30辺りは既に明るく、空は青い。幸先よし。荷物を順番にパッキングしていく。
残雪は装備・服装の選択が難しい。「雪はどれくらい残っている?」「朝晩の寒暖差はどれくらい?」雪の状態が、不明瞭のため減らそうにも減らせない。
全て入れ終わり、ガチャを装着すると、重い。分かってはいたが、重い。重すぎる。

比較的荷物は少ない方だが、75Lザックはパンパン
ずーっと車道を歩いていくと、発電所に到着する。そこから先はようやく山道。ピンクテープもあり快適に進んでいくと、急登と崩壊尾根がお出迎え、少しでも油断すると自分の荷物で後ろに引っ張られてしまうため、気を使い時間を要した。

急登、崩壊尾根との闘い。
急登が終わると少し下り、沢沿いに降りるのだが、伝付峠までの沢沿いの道(沢のすぐ上を登山道が走っている)が意外と長い。全然進まない。何度座り込んで地図を見たことか。
二股を越えるとようやく登り、ひたすらにツヅラ折りに進んでいくのだが、時折倒木が進路の邪魔をする。くぐるにも越えるにも、重荷のせいで、いつもの倍のメンタルと脚力を要した。くぐっている途中に起き上がれずに、そのまま少し休憩してしまった。

しゃがみ込まないとくぐれず、不貞腐れ中
登り続けると少し開けてきて、伝付峠少し手前で、富士山が綺麗に見える。今日は展望を期待していなかったので、一気にテンションが上がる。

富士山が良く見える!さすが南アルプス
最後のひと登りを終えると怒涛の下り。
「せっかく登ったのに。」と文句を言いながら、二軒小屋を目指して580m程下っていく。蝙蝠尾根登山口付近まで歩き、本日は終了。
川に水を汲みにいくと、とんでもないミスに気づく。なんと、、、テルモスのパッキンがついていない、、、。水を入れて傾けると溢れる、、、。やってしまった。明日以降どうしようか。とりあえず、倒さないようにお湯を入れてみて、朝まで待ってみよう!という結論に辿りつく。

今回の食料、いつも余るので控えめに。
【Day2 5/3】
夜に目が覚めて、空を見上げると星が綺麗に見えた。
昨日の疲れからかぐっすりと眠ることができた。
アラームに起こされるが、二度寝をかます。
ソロ登山だとどうも早起きが難しい、、、
蝙蝠尾根はスタートからいきなりの急登。ただひたすらに何も考えずに歩く、「長い」とか「急だな」とか考え始めるとどんどん消費されていくので、地面を見つめながら、黙々と登っていく。登っていく。終わりが見えないし、景色も見えず、徳右衛門岳までの登りに苦しめられる。やっとの思いで、到着。山頂付近から急に雪が増え始める。

お疲れ気味
休憩もそこそこに、出発すると、、、。踏み抜き。そのまま歩いてみるも歯が立たないので、ワカンをつけて再出発。ワカンを履いていても、ドンッと沈む瞬間もあり想像以上に足を取られる。
さて、今日はどこまで進めるだろうか。


こんな感じの道を登ったり、下ったり。
ルートが不明瞭な場所が増えてきたため、外さないように進んでいると、目の前に蝙蝠岳らしき山頂が見えた。稜線は岩とハイマツ帯だ。登りすぎると明日の暴風雨には耐えられそうにない。

目指す蝙蝠岳がようやく見えた!
四郎作ノ頭手前にあたりをつけて、樹林帯ギリギリまで上げていく。
明日は悪天候のため停滞と決めているので、風が防げて、木に葉が残っている場所を見つけ、行動終了。2日間お世話になる場所なので、丁寧に整地し、幕営。テント内も綺麗に整えていく。
ここでまたしてもとんでもないミス②発覚。モバイルバッテリーはあるが、コードがない。出発する時に最後まで充電していたことが仇となる。もう、残量は少ないため非常時の為に電源をセーブする。何となくカバンに忍ばせた写ルンですが唯一の救いだ。
とりあえず、今日は眠ろう。
明日は停滞するので、インナーも暖かいものに着替えて快適に眠る。
【Day3 5/4】
アラームをかけずに眠ったので、太陽の明かりで起きる。外は相変わらず雨が降っているし、風の音もうるさい。
もう一度眠りにつく。昨日の疲れもあるからか、容易に眠れる。それを何度も繰り返し、お腹がなったのでご飯を食べる。
何にもすることがないので、ひたすらぼーっとする。
【Day4 5/5】
いよいよ蝙蝠尾根を抜け、稜線に飛び出す。
蝙蝠岳も塩見岳も、富士山も見えるが、容易にシャッターは切れない。
枚数に限りがあるので、慎重に祈るような気持ちで”写ルンです”のシャッターを切る。
このとき、「今まで気軽にシャッターを切っていた」ことに気づいた。一眼レフ・スマホ・コンデジと使っていたが、どれもやり直しがきくし、その場で確認もできる。デジタルじゃないもの、の大切さと面白さを改めて感じる。
【どうか、上手く撮れていますように。】

蝙蝠岳までもう少し!ちゃんと写っていてよかった
雪があるところまでは、ワカンで登っていると、「バツンッ」と聞いたことのない音がする。何事かと思って、キョロキョロすると、ワカンの紐が切れている。なんてことだ。4年ほど愛用していたが寿命がきた。今回の山行はいつも起きないことが起きている。
気を取り直して、蝙蝠岳を目指して歩いていく、雪はもうない。
山頂標識に手をかける。
長かった、4日目にして、ようやくお目当ての山に登れた。360度の大パノラマだ。
最高の景色を目に焼き付ける。向かう北俣岳、塩見岳の稜線も綺麗に見える。テンション復活!!!

恋焦がれた蝙蝠岳 蝙蝠尾根からはもういいかなと思ったり
北俣岳に向かっている途中、前から人影が見える。
久しぶりに山で人に合うとやっぱりうれしい。
これから仙塩尾根を歩くのに、塩見岳に登らないのはないだろうと思い
荷物をデポして、「荷物がないって幸せ!」とぐんぐん登っていく。
無事に塩見岳の山頂に到着!天気のいい日に登れて良かった。

荒川岳方面

北アルプスも良く見える
分岐まで戻る途中、最初に会ったソロの方と再会、一言二言交わしていると、なんと、コードは小屋だが持っているバッテリーを貸してくださるとのこと。本当に感謝しても仕切れない。お礼を言い、必ず返却しますと住所を教えてもらう。
スマホが復活、なんとも心強い、スマホ依存症かも知れない。
バッテリーは大切に使おうと心に決める。

早速スマホでシャッターを切る、歩いてきた稜線と富士山
分岐以降は雪もほとんど残っておらず、軽快に進む。左を見れば北アルプス、右を見れば南アルプスに富士山。振り返れば塩見岳。なんとも贅沢な稜線歩きだ。

仙丈ヶ岳(左奥)が遠くに見える 遠いなぁ~

振り返れば塩見岳

天気が良すぎて進めない
樹林帯に入ると、踏み抜きやルーファイに苦戦する箇所もありつつ、ピンクテープと地図を頼りに、新蛇抜山、安倍荒倉山を超えて行く。無事に17時過ぎに本日の目的地である熊ノ平小屋に到着。

2階の冬季避難小屋を解放しており有難く使わせていただく

間ノ岳がド正面、アーベンロート!
長い行程を終え、バッテリー問題も解消でき、深い眠りについた。
【Day5 5/6】
昨日の疲れもあり、今日の行程は短めにしているためのんびりと起きる。
天気は高曇りといった感じで、小屋から間ノ岳も綺麗に見えている。
準備を済ませていざ出発。三峰山(2999m)を目指し、昨日下った分を登り返していく。少し雪が残っている箇所もあったが、基本的には地面が見えていた。

暑すぎず、寒すぎず、快適に歩く
意外ときついなぁ。などと思っていると、「グゥァー!グゥァ!」と鳴き声が聞こえる。ヤツだ。あたりを見渡すと、いる。雷鳥だ。久しぶりにお目にかかれて、嬉しい。なぜ会えるとこんなに嬉しいのだろうか?しばらく眺めても逃げないので、一緒に休憩することにした。

雷鳥と一息 (実は2羽いる)
山頂は目と鼻の先なのに、いやらしい雪渓トラバースが出てきた。
滑ったら100m以上は落ちそうだ。アイゼンとピッケルを装着し、慎重に横切る。

もう少しなのに…

三峰岳に到着!間ノ岳 農鳥岳がかっこいい!
ここから野呂川越まで約700mを一気に下る。
山頂から眺めていた感じだと、夏道も出ている箇所も多く、容易だと思ったが、実際は全然違った。
アイゼンを履いて下っていたら、岩場が出てきて脱ぐ。そのまま夏道を歩いていたら、夏道が切れいやらしい雪道に変わる。アイゼンを脱いで履いてを繰り返す。
必要以上に時間を取られてしまう。こういうときに事故は起こるので、「焦らない、安全に」と慎重に下った。

良い感じに見えた下り道
野呂川乗越を超えるとほとんどが夏道。快適に飛ばしていく。
伊那荒倉山付近の水場にあたりをつけており、水場も枯れておらずに使用可能だったため、15時半ごろ行動終了。濡れたものを乾かしながら、おやつや晩ご飯を頬張る。
Day6 5/7(木)
長い登りが続く、2676mまでは、雪もなくサクサクと登っていく。
以降は時々雪が出てくる場所もあったので、アイゼン装着。
荷物は軽くなっているはずなのに、足取りは重い。「がんばれ、自分」

大仙丈岳手前、一瞬ガスが取れる
ようやく、大仙丈ヶ岳に到着!何も見えない!
ガスの中は寒いので、矢継ぎ早に仙丈ヶ岳へ向かう。目指していた場所まであと少し。
あと少しと思ってからが、やっぱり遠い。
6日目だからだろうか。異様にお腹が減る。時間に余裕もあったので、山頂の岩陰で、持ってきていたミニラーメン×2を温めて食べる。うまい。うますぎる。

具なしラーメンと山頂
さあ、下りだ。明確にルートは決めていなかったが、雪道を行くのが早いだろうと思い、藪沢に向け滑り落ちるように下っていく。やっぱり下りは早い。時折地図を見ながら、夏道の合流ポイントを見逃さないようにする。

甲斐駒ヶ岳方面は天気 楽しく下山
夏道に合流してからすぐは、いやらしい箇所もあったが、雪がなくなったと同時に、快適な夏道が現れる。太平宿まではあっという間だった。あんなに頑張って登ったのになぁ〜。
【Day7 5/8】
序盤から栗沢山の登り一辺倒。分かってはいたが、やはりしんどいものは、しんどい。
考えることをやめ、歩いていると、サーサーと雨が降ってきた。
それほど強い雨ではなかったので、そのまま進んで行く。一度止んだが、次第に雨脚は強まる。
急いで雨蓋に入っている荷物をビニールに突っ込み、アウターシェルを羽織る。
とりあえず、登り続けるが、雨は強くなる一方だし、風は強い。何も見えない栗沢山に到着。

ここにきてようやくシェルの出番
アサヨ峰へ向かう途中に雨は随分と弱まる。しかし風はとても強かった。
岩場の箇所では、荷物ごと煽られないように慎重に足を運んだ。

一瞬の展望に期待が膨らむ
早川尾根のまでの下りは、残雪期ならではの道のりで、踏み抜きが多く先程の雨でウェアが濡れている分、冷たさが肌まで届く。冷たい。寒すぎる。これまでの行程で一番こたえた。そうは言っても進まないとつかないので、一生懸命歩く。
昼過ぎ、ようやく小屋が見えたときは、心底ほっとした。

早川尾根小屋 開放小屋を有難く使用させていただく。
水場で水を確保し小屋に戻ると、雨が降ってきた。ナイスタイミング!!
とりあえず身体を温めるために着替えて、お湯を大量に沸かして、温かい飲み物を飲む。ようやく寒さで震えていたのが止まった。
片付けなどひと段落したあと、一旦お昼寝。ぬくぬく眠る。ぐっすりと眠れた。
【Day8 5/9】
出発の準備を進めていると、干していたアウターシェルのパンツの裾が凍っている。
これは!と思い確認していくと、靴も同様に凍っている。最悪、、、。
靴を履こうにもバリバリだ。久しぶりに冬山を思い出す。
紐もしっかりとは閉められないので、緩んでから締め直すことにし、出発。
さあ、稜線歩きを楽しめるのは今日が最後、天気も悪くないので、頑張って歩こう。
細かなアップダウンを繰り返していると、北岳・仙丈・甲斐駒と山頂付近の雲がとれ、その姿を見せてくれる。

歩いて来た道が良く見える

前方にはオベリスク、もう少し!
天気も相まって、鳳凰三山の快適な尾根をウキウキしながら歩く。
人も増え始め、ザックを見て「どこからきたの?」と何人からか声をかけられる。
話していると「明日も頑張って!」と1人からくるみ餅を、もう1人からパンとスニッカーズをもらう。久しぶりの会話と人の温かさでまだまだ歩ける気がしてくる。
富士山がどんどん近くなる!
薬師岳まではなだらかなのであっという間。最後の山頂にに別れを告げて、いざ、夜叉神峠小屋へ。

最後の山頂 薬師岳!
下りがメインのため、新緑を楽しみながら樹林帯を歩いていく。春だなぁ〜。夜叉神峠小屋は、水場がだいぶ遠いので、南御室小屋で水を3L汲み担ぎ上げる。せっかく軽くなってきた荷物がまた、少し重くなる。

木漏れ日で美しい樹林帯
夜叉神峠小屋に到着! 今日でテント泊も最後かぁ〜と思いながら、幕営。
山を眺めながら最後の晩餐の準備をしていると、小屋前で開かれていた某山岳会の山菜祭に混ぜてもらえることに!お皿いっぱいに山菜の天ぷらや、焼肉、野菜などが盛られていく。

全部おいし過ぎる!!
ここまでアルファ米やグラノーラを食べていた私にとっては、ご馳走もご馳走。「美味しい」しか出てこない。
とても気さくな方が多く、やっぱり山を楽しんでいる人たちは素敵な人が多いな。と再確認。
夜は満点の星空を楽しむこともできた。
【Day9 5/10】
朝焼けは5時頃と小屋番さんにおしえてもらったので、支度途中に見に行くと、
とても綺麗な白峰三山のモルゲンロートを見ることができた。
こういう景色を見るために、山にいるんだよなぁ〜。としみじみと思う。

なんとも最終日にふさわしい。
今日は、夜叉神トンネルを通り、鷲ノ住山を超え、県道37を10kmほど歩く予定だ。
長くて怖い夜叉神トンネルはヘッデンをつけて通過。
鷲ノ住山の登り(たいした登りではない)10〜15分が、本当に長く感じた。足元に白色のイワカガミの群生がなかったら早々に心が折れていたかもしれない。

イワカガミの群生
県道37号へ合流!あとはひたすらに長い車道歩き。
車道が長いことは覚悟していたが、ここにきて靴擦れが痛いし、足の裏も擦れるような気がしてくる。
終わりが近づくと緊張の緩和で、ダメージが表面化するような気がする。まだまだ!と言い聞かせて誤魔化しながら歩いていく。

緑が眩しい!
無事に奈良田に到着!!
バスの時間まで少し余裕があったので、温泉に立ち寄る、
8日ぶりのお風呂はとっっっても気持ちよかった!!
バスに乗り込み、自動車を回収し、21時過ぎにようやく家に到着。
長いようで、短いゴールデンウィークが終わった。

ピカタオル
長期縦走の時はベタベタした汗を拭きとるのに欠かせないアイテムです。
今回の山行では、お湯につけて使うことを思いつき、試してみました。夏は水だけでも十分ですが、春や秋はやはり冷たさがつらいもの。そこでお湯を沸かしてタオルを温め、体を拭いてみると温かく驚くほどさっぱり。
これからの暑い季節にも常にカバンに忍ばせておきたい頼れる一枚です。

執筆者:販売促進営業課 岡嶋 芽
入社年:2021年
本格的に山登りを始めて早4年。夏は沢登りと長期縦走。冬は雪山とスノーボードとほとんどの週末を山に費やしています。
長期休みがあると、ついついフルで山に入る計画を立ててしまいます。「なぜ山に登るのか」は未だに分からないですが、暇さえあれば山に行こうとしているので、きっと「山にいること」自体がとても好きなんだと思います。