
昨年のGW、尾瀬の鳩待峠から只見まで、3つの湖と周辺の山々をパックラフトとバックカントリースキーでつなぐ「Ski Rafting」スタイルのコンセプトの山旅にトライした。
たどった山々の中で心に残ったのは、田子倉湖によって隔絶された通称「村杉半島」の山々の秘境感とスキー向きの山容。
その時から、このメンバーでもう少し気軽な日程でこの山域にもう一度田子倉湖を超えて滑りに来ようという計画を構想していた。
このエリアで、同じようなレアな遊びを実践している中澤氏と、ユニークな旅系の遊びに目がない?finetrackの衣川も合流。日本で一桁人数くらいしかいないのでは?と思われる、バックカントリースキーとパックラフトを掛け合わせた遊び手「スキーラフター」が5名も集まるというミーティングが実現した。
■アクティビティ日:2026年3月28日~2026年3月30日
今回は、奥会津の只見をスタートして田子倉湖を越えて湖に閉ざされた秘境のピーク猿倉山(べいくらやまと読む)1455mに登り、おそらく未踏の猿倉山北東面をスキーで滑ってくる、というプランとした。
初日は国道の冬季通行止めの終点から、スキーで田子倉ダムまでハイクアップ。田子倉湖をパックラフトで渡り猿倉山の東、高石沢の左岸尾根に上陸、尾根を登って標高930mのプラトーあたりを泊地にする予定だ。

田子倉湖をパックラフトで往く
田子倉湖セクションは鏡のように穏やかな湖面ののんびりツーリング気分。このまま、サクッと登りの尾根に取り付けたらいいなあ、と話しながら進むが気がかりなのはやはり積雪の少なさと、湖の水位の低さ。

予想よりも早く湖が終わり、泥沼にハマる
案の定、予想以上に早く湖が終わり、川になってしまった。取りつきたい尾根まではせいぜい200mくらい。パックラフトを畳んで沢登りを開始するが、この区間が悪いところは一歩一歩が靴ごと持って行かれそうな文字通りの「泥沼」。
たった200mの通過に1時間以上を要してしまった。

泥沼を脱してようやく尾根に取り付けた
最初の急登はうまく雪を繋いで、シール歩行のみで稜線に出ることができた。あとは楽勝か、と思いきや稜線上も下部はすでに雪はズタズタでそのたびシートラに切り替えて右往左往。楽なアプローチ日だと思っていたが、なかなかの大苦戦の一日なった。

切れ切れの残雪に右往左往
標高930m地点プラトーは、期待通りの快適な泊り地だった。
泊まりは私と衣川で定番のイグルー、ほかのメンバーはツエルトとタープの軽量化スタイルだ。

キャンプ1から望む猿倉山。いい斜面だ!
2日目はメインディッシュの猿倉山に登頂して北東面の滑走予定だ。泊り装備はキャンプ地に残し、身軽になって夜明けと同時にハイクアップを開始。左手に見える猿倉山の北東面が非常に魅力的に見える。

この辺りは雪付きもよく快適
山頂までは標高差600mちょっとのハイクアップ。
泊り地より上の標高では残雪も充分で、シールのみで行くことができた。
村杉半島の主稜線まで上がると、素晴らしく美しい雪の稜線が続いていた。

めったに見られない風景、猿倉山に続く稜線をたどる

双耳峰、猿倉山の主峰を目指す
猿倉山のピークはドーム状の鋭鋒の双耳峰になっており、主峰の南峰を目指して登る。積雪期に行くか、沢を詰めるか、いずれにしても田子倉湖を渡らないとたどり着くのが難しい超秘境のピークと言えるだろう。同行の中澤氏は無雪期/積雪期のダブル登頂を達成とのこと。

最後の藪を一漕ぎして山頂へ
スキーに履き替えて山頂からダイレクトにドロップ。カリカリの北面をワンポイントトラバースすると広大なほぼ無木立の素晴らしい北東斜面が広がっていた。雪質は快適とはいいがたい重いザラメだったが、それでも上部はまずまず。
記録をきちんと調べられてはいないが、初滑降なのではないかと思われる。

ナイスな北東面にドロップ

下るにつれて、ずっしりと重い雪に
もともと低い標高だが、下るにつれてさらにずっしり重い生コン雪になってきて、急斜面ではちょっとスキーカットしただけでそこそこのサイズのスラフが出る。
昨日の尾根を登りながらの偵察で、標高を下げ過ぎると高石沢の渡渉と登り返しでの困難さが予想された。下部の沢状地形は入るところを間違えるとハマる気配がしたので慎重にルートファインディング。ぴったりと標高950付近で高石沢に滑り込むことができた。想定通り、この標高では登り返しの斜面の雪付きも良く、特に困難なく登り返すことができた。
猿倉山北東面に自分たちのつけたシュプールを振り返る。全面スキー向きと言える山容で、アプローチが良い場所にあれば、きっと人気のスキーの山になっただろう。

猿倉山北東面のシュプールを振り返る
泊り地に戻った時点でまだ14時過ぎ。
途中稜線から明日目指す西側の田子倉湖を遠望してみたが、昨日同様「泥沼にハマる」可能性が想定された。となると、多少藪漕ぎを覚悟してもっと北側に抜け、最後北面を滑って湖に達するラインに変更したほうが良さそうだ。となると、キャンプ地はもう少し稜線近くに上げておいた方が良いだろうと判断し、泊り地を撤収して稜線近くまでキャンプ地を上げることにした。
標高1300m付近まで再度ハイクアップして、キャンプ2を設営。ここも印象に残る素敵な場所だった。

キャンプ2から下界を望む
3日目は猿倉山のひとつ南のピーク、横山に登頂後、西尾根から湖に抜けるのが当初の予定だったが、偵察の結果また泥沼が待っていることが予想されたため、北西側に抜けるプランに変更することにした。横山から北西に延びる尾根に滑り込み、大牧沢の上部を巻いて標高700m付近から湖に抜けるラインだ。北面なので、雪付きが良いことを期待して行ってみよう。
想定外なことが起こることも考慮し、夜明け前にキャンプ地を出発する。横山の手前で夜が明けてきた。

横山に続く稜線で迎える夜明け

横山山頂到着!
メンバーのうち3人は昨年のGW以来2度目の横山登頂になる。こんな辺境のマイナーピークに1年で2度登るとは物好きだよね!と笑い合う。
横山の北面側に滑り込むと、気温の推移から予想はしていたが手ごわいハードモナカ雪。荷物も重いので守りの滑りで高度を下げていくが、1342mジャンクションピークより先は稜線の雪はずたずたになっていた。
稜線は無理と判断して側面の大トラバースに方針変更。何とか登り返しなしで側面を滑り、標高1000m付近で稜線に復帰することができた。
ここから先は予定通りの藪漕ぎ。ワーストケースとして想定していたほどの悲惨な藪漕ぎではなく、支尾根に入って100mも藪漕ぎ下ると再び雪がつながった。

藪急斜面のクライムダウン
北面の雪付きは良いのでは、と期待をしていたが、期待通りどころか期待以上の上質のザラメ雪で、湖まできれいに雪面は繋がっていた。標高差200m程度だが、快適なツリーランを楽しむことができた。

思いがけない快適なツリーラン

湖面ギリまで滑り込む

水位低下で現れた、水没林の中を漕ぐ。
情報なし、地形図と経験と勘だけが頼りの「未知・踏破系」の山行では、しばしば、というより大抵の場合は想定外の事態にドハマるものだ。その分想定通りに物事が進んだ時の楽しさは最高。今回はその両方を味わう山行となったが、ドハマリ中でも笑いの絶えない頼もしいメンバーだった。
※今回のルート図(国道終点~ダムまでのラインは略)。
赤:1日目
青:2日目
オレンジ:3日目

ドライレイヤー®ウォーム
雪と水のアクティビティのセットとなればドライレイヤー®ウォーム。
沢登りのような状況にもなって腰付近までほぼずぶぬれだったが、行動後寝るときにはほぼ気にならないレベルになり、朝起きた時は完全にドライな状態に回復していた。

執筆者:商品開発課 相川 創
入社年:2008年
6歳児と2歳児の子育ての合間に山に向かっています。限られた時間を最大限に活用するいろいろな複合系遊びを模索中。