DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

1/302026

厳冬の北アルプス縦走九日間 ~ブナ立尾根-野口五郎岳-鷲羽岳-三俣蓮華岳-双六岳-弓折岳-新穂高~

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投稿者: 投稿者: 衣川 佳輝 撮影者:衣川、加藤、田中

CATEGORIES
スタッフの遊び記録
ACTIVITIES

■山行コンセプト
10日程雪山に入る。今の自分の心・技・体が求められる場所に行く。

■概要
2025-2026年越し山行は、9日間かけ長野側から岐阜側に北アルプスを越えた。
昨年の年越しと同じメンバーで集まり、「おもしろい登山は何か」という話し合いのもと、テントや避難小屋利用はなしの雪洞メインで進むことに決めた。ぎりぎりまで行程の話し合いは続いたが、3人で水晶岳を目指し、その後自分はソロで新穂高を目指した。
どれだけネットで調べていても、現地に行かないと分からないことがある。


■アクティビティ日:2025年12月27日~2026年1月4日

※ルート概念図と装備一覧は最後にあります。

【12/27_DAY1:晴れ】行程:葛温泉→高瀬ダム→ブナ立尾根→1750m地点にてツエルト泊

早朝の信濃大町にて、ただでさえ収まり切っていないザックの雨蓋の隙間に、ラストコンビニで買った菓子パン8個とチョコバー2本を押し込んだ。これらを買う必要は全くなかったのだが、ザックを背負っていないとその重さを忘れ、ホイホイと追加してしまう。

まあ、食料と燃料は多すぎて困ることはないのだ(車からザックを出した瞬間に、重すぎてそんな思いは消え去った)。


葛温泉のゲート前にて。ここからしばらく舗装路歩き。


高瀬ダム前のつづら折り。雪は少ない。湯俣温泉の方に進む足跡がたくさんあった。

約8kmの林道を歩き、11時15分頃にブナ立尾根取り付きについた。雪は少なく、踏み跡もあり、ツボ足で進めた。1600mあたりのトラバースが悪く、アイゼンをつけた。荷物は重く、踏み抜くとバランスを崩して転びそうなるため、一歩一歩慎重に進んだ。

雪がもっとあれば、先頭空荷ラッセルで逆に楽なのだが、荷物をずっと背負っているので、永遠にしんどかった。


快晴の下、ブナ立尾根へ。


ブナ立尾根。急登が続く。

地形的に少し緩くなる1750mあたりに14時10分着。当初の想定よりも進めたので、時間的には少し早かったが、テンバ適地を探すことにした。

雪はあまりにも少なく、踏み固めてブロック2個をとると、もう地面だった。樹林帯ということもあり、ツエルト2ロングを二連結して、3人が縦に入るように設営した(下図)。


ツエルト2ロングを二連結させた。

2枚のツエルトをファスナー同士で連結できるように改造しようか。現状、連結部分は結ぶだけなので、強風が吹くと雪が入ってきた。固定用に使ったプローブとガイラインは良い仕事をしてくれた。

お湯を沸かそうとしたが、ガソリン火器は自分のもK氏のも2台とも不調で、現地にて分解組立をすることになった。自分の火器は事前に家で全部ばらして整備し、着火確認もしたのだが、組み立てに不備があった。K氏の火器は潤滑油切れだった。

30分ほどかかったが、2台とも復活したので、鍋を食べ、翌日分も含めた水作りをおこなった。日記と装備メモを書き、少し本を読んで20時頃就寝。ポジティブに考えるなら、ガソリン火器の整備ができるように準備と構造の理解をしていてよかった。
0時頃連結部の隙間から吹き込む雪が顔にかかって一度起こされた。


初日の夕食は餅入りの鍋。山でみんなで囲んで食べる鍋は、家で食べる鍋の何倍も美味しかった。

【12/28_DAY2:晴れ】行程:ブナ立尾根1750m→烏帽子小屋→三ツ岳手前2616m地点→引き返してイグルー泊

暗くて寒いと動く気になれず、6時頃からお湯を沸かした。樹林帯でも夜は風が強く雪が舞っていたので、天気は悪いかと思いきや、外に出ると太陽が輝いていた。

粛々と登り、14時に烏帽子の稜線に到着。稜線には今朝歩いたと思われる二人組の踏み跡が、烏帽子小屋付近から野口五郎方面に続いていた。先行者の足跡は嬉しいような悔しいような。

二人組の足跡の挙動から、どんな人物達なのかを推測する話で休憩中盛り上がった。しかし、結局この先で合うことはなかったので、”身長180cmくらいの屈強な山ガール二人組説”が正しいかを、検証することはできなかった。


もうすぐ烏帽子の稜線。天気は怖いくらい良かった。


ザックを背負った状態でもスノーシューなら歩ける程度の積雪だった。

天気の良いうちに進めるところまで進もうとなり、三ッ岳手前のコルまで歩いたが、地面が見えるほどに風で雪が飛ばされていた。風下側は切れ落ちており、回り込むことは難しかった。吹きだまりがないか期待して歩いたものの、風も強く、結局雪洞イグルー適地は見つからなかった。


烏帽子小屋付近。進むべき方向が全部見渡せた。


三ッ岳付近は風が強く、全体的に雪が飛ばされていた。歩きやすくはあるのだが。

烏帽子小屋から1時間弱進んでいたものの、泣く泣く引き返し、小屋から10分程度の樹林のある場所まで戻った。雪洞も十分可能なほど積雪はあったが、イグルー修練度を上げるためにイグルーを作成することにした。自分はT氏と協力し2人用のイグルーを作成し、K氏は隣で1人用を作成し、地下で繋げた。K氏は天井を閉じるのに手間取り、残業していた。みんな疲れて、お湯作りの間もシーンとして少し寂しかったが、暖かいものを食べ、ラジオを付けると盛り上がった。


今シーズン初のイグルー作り。雪洞に比べ、まだまだ過去作ったイグルー総数は少なく(10程度?)、修練度は低い。


夜に外からイグルーを撮った写真

【イグルー作りについて】
どうすれば3人が余裕で寝られるイグルーをサクッと作れるだろうか。掘る時に1段目を置いたら、もう拡張し始めてもよいかもしれない。反省点としては、夕食でガソリン火器を使っていたら、天井に細かな隙間が空いた。寝る前にちゃんと雪をかぶせておけばよかったのだが、めんどくさがってそのまま寝た結果、明け方の強い風で粉雪が吹き込み、何度か起こされた上に、シュラフカバーの上に数cmレベルで雪が積もっていた。


イグルー内にて。入口から写真を撮った。

イグルー概念図。時短のために、足元からブロックは切り出し、半雪洞のようにして広げている。イグルスキー米山さんのイグルーを参考にしている。

【12/29_DAY3:晴れ】行程:烏帽子小屋近くのイグルー→三ツ岳→野口五郎岳→真砂岳(巻き)→湯俣分岐の近くにて雪洞泊

朝は8時過ぎ出発になった。日の出の7時に出られればと思いつつも、暗くて寒い中、周りも寝ているともう少しだけとなってしまう。おそらく3人とも同じ考えのため、かすかに空が白み始める6時を過ぎてから、さすがに起きるかとなる。

この日も快晴だった。風で雪が飛ばされているおかげで夏と同じくらいの速さで進んだ。年越しの北アルプスで3日も晴れが続くと、逆に不安になった。徐々に風が強くなったが、太陽が出ているおかげで、上はドライレイヤーウォーム+メリノスピンライト+フロウラップ+エバーブレスプリモの4枚のみで行動できた。


風は強かったが、視界はたいへんよかった。


野口五郎岳にて。途中、槍ヶ岳や遠くに富士山も見えた。


湯俣分岐のコルにて雪洞適地を探す。奥に見えるのが水晶岳。

12時50分頃野口五郎小屋到着。14時30分頃湯俣分岐のコルに到着。話し合いの末、明日ここから水晶岳ピストンで山頂を目指そうとなった。コルの風下側、雪庇の少し下に雪洞を掘った。2泊以上は確定していたため、3人で2~3時間かけて住みよい雪洞を作った。入口2つで2人が堀り、1人が外で雪を捨てつつ休憩をローテーションした。中で4テンが張れるほど高さも広さもある巨大雪洞ができた。


完成した雪洞内にて一息ついた

昨年の反省(低気圧接近により通常の季節風と逆風になり、吹き溜まりが削られ雪洞が崩壊した※)を踏まえ、入り口はかなり長くして、十分な天井の厚みをとった。ツエルトで入口を塞ぎ、固定に使ったピッケルなどにはガイラインを通して、雪洞内に引き込み、吹き飛ばされても喪失しないよう対策した。ただ、T氏のスノーソーがツエルト固定の際に、風に煽られ飛んで行ってしまった。
年末年始雪洞泊山行記録~憧れの厳冬期鹿島槍ヶ岳チャレンジ~ 

雪洞概念図。多少時間や労力はかかるが、今の自分達の実力では、イグルーより雪洞の方が思った形に作りやすい。天井が高いと、ガソリン火器を長時間使っても天井から水滴が落ちてこず、天井の下がりもほとんどなかった。

夕食は海鮮鍋を食べた。ここまで野菜を運び上げたかいあり、2025年の締めくくり(まだ29日だが)の食事としては思い出に残る美味しさだった。どこで用を足すかで一議論あったのち、21時過ぎに就寝。この二日間晴れていたからこそ、一気に真砂岳付近まで進むことができた。


思い出に残る美味しい鍋だった。

【12/30_DAY4:晴れ】行程:湯俣分岐の雪洞→水晶小屋まで行き引き返す→同雪洞泊

水晶岳を目指す日。5時起き7時出発で準備するも、ほぼ埋まってしまった入口の発掘と、入り口の閉めきりに時間がかかり、歩き始めたのは8時となった、風が強く視界も悪かったが、動けないほどではなかった。また、迷うような尾根ではないため、スノーシューとアイゼンを切り替えながらゆっくりと進んだ。初見では気を遣う場所も多く、少し疲れた。


12/30朝。視界は良くないが、動けないほどではなかった。


まずは水晶小屋を目指した。

水晶小屋に10時50分頃着。風の弱い場所を探したが、小屋のどの陰に入っても、地形の影響か爆風が吹き荒れていた。少しお湯を飲み、行動食を食べ、話し合った。視界は相変わらず悪く、ギリギリの風だったため、今日はここで引き返すことに決めた。


水晶小屋の陰にて。東沢と岩苔小谷の両方から風が吹き上げていた。休まる場所がなかった。


元の雪洞目指して引き返した。アイゼンでは踏み抜いてしまう箇所も多い。

雪洞まで戻ってくると風が弱くなっていため、行けたのではないかと少し後悔したが、小屋付近の風が強いのは地形的な理由もあるのだろう。雪洞を拡張し、中でスープを飲んだり、おしるこを作って皆で食べたり、半日停滞を楽しんだ。ラジオを聴きながら2025年を振り返り、2026年の抱負を考えた。除雪をしてから就寝。思った以上に雪は降り続いており、明日朝は埋まっていそうだ。


雪洞内にて。ソロになる水晶小屋以降の細かな地形を頭に入れた。地図の裏には日記と装備メモが書かれている。

【12/31_DAY5】行程:(スタート遅め)→水晶小屋手前にて雪洞泊

朝、雪洞内は静かだった。その理由は、入口が降雪によって埋まっていたからなのだが、T氏が率先して掘ってくれて開通した。今日は楽しく停滞かと思っていたが、外を見たT氏いわく「意外と行けそう」とのことで、急いで出発の準備をした。


埋没していた入口の開通作業。


雪洞を出たところ。意外と行けそう…なのか?

ザックを背負い9時過ぎに外へ。雪洞のある風下側では分からなかったが、コルまで上がると思ったよりも天気は悪かった。K氏とT氏の二人は、日程の関係でここから引き返し、自分は一人で新穂高を目指す。本来は今日も水晶岳に登る予備日ではあったが、明日以降の天気(主に1月2日以降)がいまいちということで、31日のこの日にそれぞれの道に進むことに決まったのだ。
そして、K氏、T氏と強い握手をして出発した。


別れ際に撮ってもらっていた。自分は再び水晶小屋方面へ。

降雪により雪は深く、遅々として進まなかった。ただ、昨日の往復のおかげで、多少視界が悪くとも稜線の詳細を覚えていた。また、所々に残っている踏み跡の痕跡が、自分を元気付けてくれた。
風には強弱の波があり、風が弱くなったタイミングで歩を進めた。水晶小屋付近は相変わらずひどい風だったが、到着した時点では、昨日よりはましだった。


来し方。風上となる北側を巻き気味に進んだ。

小屋の陰で休憩していると、風はわかる程度に激しくなっていった。少しワリモ方面に進んだが、完全にホワイトアウトしてしまい、目の前に段差があるのかもわからない。風は非常に激しく、昨日のT氏の言葉を借りるなら「人間が存在してよい空間」ではなくなりつつあった。

この先の地形も風下側が切れている上、悪い視界の中で雪洞適地をすぐ見つけられそうにもなかったので、引き返した。水晶小屋周りも掘りやすく風をよけられる角度の吹き溜まりはなく、さらに小屋から真砂岳側の急斜面まで戻った。


水晶小屋から真砂岳方面を臨む。明瞭な稜線が見えるはずだが、ガスで見えなかった。。

スノーショベルも吹き飛ばされそうな風で、持ち物を飛ばされないよう注意しながら、まず自分とザックがすっぽり入る程度の深い縦穴を掘った。そこから横方向に掘り進めた。


雪洞作成途中。一息つきお湯を飲んだ。もう風は来ない。

雪洞作成において、一人だと雪を掘ると捨てるの両方をやる必要があり大変だが、17時前には停滞できるくらいには快適な雪洞を作り終えた。外の様子は変わらず、放り投げた雪ブロックは、風ではるか彼方に飛んでいった。

雪洞内に入り諸々の準備をした。一人だと急に寂しく不安になった。「一緒に戻ればよかった。明日引き返して彼らを追いかけようか」と日記には書かれている。


雪洞入口はツエルトをかけ、内側から雪ブロックで軽く固定した。また、トラブル時に出られなくなると困るので、ショベルは必ず雪洞内に入れ、寝るときは頭が入口に近いようにした。

服をたくさん着て、お湯を作り、暖かいものを食べると少し落ち着いてきた。ラジオは電池だけでなく全体を温めると調子が良くなった。陽気なDJの声を聴くと、元気が出てきて、”大晦日あるある”といったしょうもない話でも一人雪洞内で爆笑していた。

たくさん食べて寝袋に入り、日記と装備メモを書いた。ラジオの天気予報で、明日は天気が良いが、2日午後にかけて冬型の気圧配置が強まり、雪が多く降ると知ることができた。

【1/1_DAY6:ガスと風】行程:水晶小屋手前の雪洞→鷲羽岳→三俣蓮華岳→双六岳手前にて雪洞泊

6時起床、7時半出発。ラジオから明日2日は冬型が強まると、何度も聞こえてきた。雪洞内は0度程度だったが、外に出ると寒く、あらゆるものが凍り始めた。フロントファスナーにつけた温度計は-15℃を指していた。水晶小屋付近は相変わらず爆風だったが、昨日の夕方よりはましか。視界も少し回復し、付近20m程度の地形も見えた。

年末の北アルプスは、天気が良くてもこれほどなのかとは思ったが、明日さらに悪くなることを考えると、進める時に進むことにした。


1/1朝の出発前。外の天気はどうだろうか。

ワリモ分岐付近はまたホワイトアウトした上に、泣きそうになるくらい風が強かった。方角的にはワリモ岳方向に入れているはずだが、視界10mない中で下りに入ってしまうと、自信がもてなかった。ここは本当にワリモ分岐付近なのか。あまりにも不安で、穴を掘って、見ないと決めていたスマホを立ち上げ、GPSを確認しようとした。しかし、中途半端な穴では舞い入ってくる粉雪で、スマホは拭っても拭ってもビショビショになり、位置情報も更新されないためあきらめた。


歩いた距離感覚と方角的にはC付近のはずだが、積雪により地形図通りの地形ではなかったことと、10m程度の視界の中進んでいたため、下り始めた時に自信が持てなかった。

いったん落ち着こうとお湯を飲み、行動食を食べ、紙の地形図を見直した。仮にワリモ岳の稜線に入れていない場合に出てくる地形の変化を確認した。多少ルートを外しても、判別できそうな上、進退窮まるような場所もない。昨日の暴風の中雪洞を掘ったことを思い出し、分からなくなったら雪洞を掘って一息いれようと思えた。

そして進みだすと、運よくガスが薄くなる瞬間があり、ワリモ岳稜線にいることが分かった。風が強いだけなら、進むべき方向に進むなり安全な場所に退避するなりできる。ガスが濃いだけなら、方角を合わせてゆっくり進むなりその場で休憩して様子を見ることができる。ただ、風が強くガスも濃いと、進むも休むも難しいと強く感じた。


ワリモの稜線にて。一瞬ガスが切れ、現在地が分かった。

何度目かの登りを終えると鷲羽岳の山頂標識があった。見た瞬間ほっとした。鷲羽の下りは少し西に寄りすぎたが、一瞬ガスが晴れ、三俣山荘が見えたのでそちらに向かった。


鷲羽岳山頂にて。


三俣山荘が見えた

三俣山荘の風下側の陰で、お湯を飲み、行動食を食べた。見えるべき方向に三俣蓮華岳は見えず、白い空間が広がるばかりだった。ここも地形がゆるくわかりにくい。雪崩のリスク低減と道迷いを避けるため、双六小屋へのトラバースはせず、三俣蓮華岳から双六岳への稜線を辿るつもりだった。数分おきに方位磁石と地形図をチェックし、現在地を推定しながら進み、ちょうど三俣蓮華岳の山頂に出ることができた。思いのほかちょうど出たのもあり、嬉しくて山頂標識に抱き着いてしまった。


三俣蓮華岳にて。

三俣蓮華岳からは分かりやすい稜線のおかげで、視界が多少悪くても歩きやすくなったが、丸山の下りで南の稜線にうまく入っていけず難儀した。視界があれば簡単なのだが。15時頃、ガスが一層濃くなったので、雪洞を掘ることにした。

雪洞内を広げていた16時頃、外が明るくなったので出てみると、ガスが切れて双六岳が時折見えた。このタイミングで視界が開けるのか~と進むか迷ったが、1時間掘った雪洞を放棄して、今から進んで新しく掘る気にもなれず、写真を撮って作業に戻った。17時頃、住みよい雪洞を作り終え、ご飯を食べ、ラジオを聴きながら日記を書いて寝た。少しゴールが見えてきて安心した。あまり斜度のない場所に掘ってしまったので、雪を捨てるのに体力を使った。


一瞬ガスが切れ、双六岳が見えた。

【1/2_DAY7:ガスのち多雪】行程:雪洞→双六岳→双六小屋→樅沢岳南東稜線にて雪洞泊(天気悪く午後停滞)

腕時計の目覚ましに気づかず、6時起床。疲れているだろうか。6日間も連続で動き続けるのは社会人になってからそうそうないことなので、疲れるのも当然かと思いながら準備した。8時出発。入口のツエルトが明るかったので期待したが、相変わらずのガスだった。

雪洞から出た直後は、10m先も見えなかったので行くか迷ったが、地形的にも危ないところはなく、風も比較的穏やかなので方位磁石を見ながら進むことにした。昨日の夕方見た双六岳の位置をイメージしながら登った。視界は少しずつ回復し、登っているとたまに太陽の存在を雲の先に感じた。
双六小屋の冬季避難小屋で少し休憩したのち、樅沢岳よりに新穂高方面の稜線に乗り上げた。双六小屋まで行けば、人がいるのではと少し期待したが、誰もいなかった。


双六岳山頂にて。ソロだと同じ画角ばかりの写真になる。


双六小屋。人と話したいと思ったが、誰もおらず。

ラジオでも冬型が強まると言っていたとおり、午後からは雪の降りがひどくなり、視界もなくなった。弓折岳に向かう稜線は、東側の雪庇が思ったよりも発達していたのもあり、まだ昼過ぎではあったが、おとなしく雪洞を掘ることに決めた。

もうスマホを使わないことへの拘りもなく、電源を入れると電波が入ったので、先に下山したK氏やT氏に連絡を入れ、その他新年の挨拶の返信をした。雪は降り続いており、寝る前に入口の除雪をした。会社の人に鹿肉との物々交換でもらったカラスミが美味しかった。


たくさん雪が降っていた。午後からは何も見えなくなってしまった。


α化米には大豆ミートと乾燥野菜を入れている。この日はお湯を入れる前にバターと煮干しとスモークチーズも入れた。序盤に重量で苦しめられたことと引き換えに、最後まで食は満たされていた。


寝る前に除雪をおこなった。夜は風が穏やかだった。

【1/3_DAY8:多雪のちガスと風】行程:雪洞→(天気悪く午前停滞)→弓折岳下にて雪洞泊

朝ツエルトの隙間から外を覗くと、雪が舞い真っ白だった。新雪に天井の厚さを攻めて掘ったのもあり、雪洞の天井は少し下がっていた。疲れているし停滞でもよいかと思いつつ、とりあえず除雪と雪洞内の拡張をおこなった。


雪洞内にて。明るいが、午前中はたくさん雪が降り視界がなかったので半日停滞。

ソロになった初日は、寂しくて風も強くて泣きそうだったが、ソロ4日目ともなると慣れてきて、ラジオで知っている曲が流れれば一人大合唱し、黙々と本を読み、だらだらと午前中を過ごした。昼に近づくにつれ、太陽の存在を雪洞内からでも感じ始めた。急ぎ準備して出発。ゴーグルトラブルで、雪洞に一度戻ったものの、たまにガスがきれて太陽が見え隠れした。ゴーグルは風のないところで付けてから外に出た方がよい。初めは下り基調でサクサク進んだが、昨日の降雪が思った以上に足を重くし、スノーシューでも場所によってもがきながら進んだ。


久しぶりの太陽にテンションが上がった。

夕方にかけて、太陽が見えず視界がなくなる時間が長くなった。風も強弱がなくなり、強ばかりになったあたりで雪洞を掘ることに決めた。鏡平まで行けるかと考えていたが、弓折岳から下るラインが判別できず、少し双六谷よりで雪洞を作った。風は双六谷から吹き上げてくるので、雪洞の入り口の向きは垂直に縦穴を掘った後、回り込むように入口の通路を曲げて作った。入口はツエルトともう一枚風呂敷を使い二重窓構造にした。


雪洞の入り口(内側から)。外にも幕を張っており、二重窓構造にしている。

雪洞に入ったら、まずガソリン火器をつけて湯を沸かし、その間に服を着替えて、靴を脱ぎテントシューズを履く。そのくらいでお湯第一弾が沸くので、α化米を戻し、ボトルにも少し入れて飲みながら継続して沸かす。翌朝用の水を水タンクに詰め替え、湯たんぽとして使った。燃料に余裕があったので、暖かい湯たんぽで幸せだった(序盤は燃料節約でぬるい湯たんぽ)。


雪洞内にて。雪洞内では靴を脱ぎ、メリノスピンEXPの上からテントシューズを履いてすごした。

【1/4_DAY9:晴れ】行程:弓折岳近くの雪洞→鏡平山荘より西側の尾根を通り、左俣林道にて新穂高

AM5時半起床。ラジオを聴きながらお湯を沸かし、α化米を戻しつつ、出発の準備をした。AM7時。入り口を塞いでいた雪をかき分け、荷詰めしたザックを外に押し出した。5日ぶりの快晴だった。槍ヶ岳がよく見える。思わず写真を撮った。今日中に新穂高まで下りてしまう予定だったが、槍によって上高地から下山しようか…。


雪洞の外。槍ヶ岳がよく見えた。


鏡平方向に降りる。ウサギの足跡に生き物の気配を感じられ嬉しかった。

少し迷ったのち、昨日見てしまった天気予報を思い出した。今日は午後から天気が崩れ、夜からまた雪が降る。晴れているうちに下って、温泉に入って帰ろう。天気予報を見ていなかったら、さらに先に進めたかもしれないと後悔しつつも、頭では新穂高までの歩き、高山駅までのバス、高山駅からの鈍行終電の時間を計算していた。樹林がでてきて傾斜が緩んだことから鏡平には寄らずに、南西の稜線にトラバースして左俣林道を目指した。
左俣林道にはうっすらと踏み跡が残っていた。13時頃新穂高に到着し、バス停で外国人観光客に次のバスの時間を聞かれて、下山したなあと感じた。


左俣林道との合流地点。上の方はガスってしまった。

【単独行とグループ登山について】
水晶小屋からソロになったことで、ソロとグループの違いを意識することが多かった。ソロだと小さなトラブルが命取りになるため、いつも以上に慎重になった。シュルンドの踏み抜き、道迷い、雪庇、怪我、装備の故障、雪崩、…。何かを判断する時も、全て自分次第。もちろんグループでも、ソロの時と同じように、自分で考え判断はしていくが、意見を違えた時に、一度立ち止まって検討できるというのがよい(そしておもしろい)。

今回のソロ行程は、歩きで行けて、広い尾根、迷いにくい地形をしていることを前提にルートの検討をした。行程の危険性と創造性はイコールではないが、ルート取り自体は凡庸なものになってしまった。それが今の自分の実力であり、悔しく悩ましい部分でもある。心・技・体を高め、いつか剱方面でおもしろい黒部横断をしたい。

【終わりに_厳冬の北アルプスを歩いて】
森林限界を超えてからの稜線は、環境が特に厳しかった。天気が良いとされる日でも、風は強く視界は悪く、天気が悪い日は話にならない。今回必要だったのは、視界のない爆風下でも雪洞適地を見つけ、落ち着いて作れる精神と技術と体力だった。

また、自分が山および自転車ツアーで大切にしていることは、同行者と過ごす豊かな時間だと再確認できた。交代しながら作った真砂岳の巨大雪洞、その中でみんなで囲った鍋やお汁粉、トイレを雪洞内のどこでするかの話し合い、ラジオへのつっこみや、2025年の振り返り、そんな他愛もない時間や、自分一人では起きえないトラブルも山を面白くしてくれた。

一つ一つの山行(ツアー)は、企画としては独立しているが、概念的な線として繋がっている。自分は自転車ツアーから山に入るようになったが、それは今も地続きである。今までの山行があるからこそ、次の山行が生まれるのであり、その山行は、同行者含め、その時の自分を表現していると言ってもよい。むしろ、そういった”今の自分”を表現できるような山行をこれからも続けていきたい。
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【レイヤリング/装備】


装備リスト概要

地図は1/25000地図と山と高原地図の2種類、コンパスはアナログ方位磁石とオイルコンパスの2つ。地図ありきの行程であり、失くすと厳しいので予備を持っていった。

シュラフについて、昨年は雪洞崩壊トラブルと結露で、日に日にダウンが湿り、5泊目にしてダウンが部分的に塊氷になっていた。今回、試作品のシュラフカバー2枚でダブルシェルにしたおかげか、8泊目でも乾いたシュラフで熟睡できた。シュラフカバーは、無孔膜ライト版と、多孔膜ハード版を持って行ったが結露の挙動が異なっていた(厳密に同じ条件での比較はできていないが)。シュラフカバーの順番を変えたり、寝袋の中にインナーとして入れたりいろいろと試したが、最終的には、寝袋<多孔膜ハードシュラフカバー<無孔膜ライトシュラフカバーの順でレイヤリングするのが最も結露が少なかった。


改良点や思いついたことをメモする。”雪洞イグルー出入口用の布”のような売り物にならないアイデアもあるが、この時のメモをヒントに作りこんでいくのは楽しい。


形になりそうなものはノートへ下山後清書する。写真はその”雪洞イグルー出入口用の布”の図。需要が狭すぎて商品にはならないが、次の山行までに個人的に作ってみようと思う。

既存品も含め、様々なサンプル品のテストができてよかった。改良点が見つかったものもあるので、次の商品開発に生かせればと思う。

【山でのご飯】


食糧概要

野村良太さんとの話の中で、行程の後半α化米の量を増やす話がでたので、後半分は1.5倍にした。GWのオートルートツアーで食料が枯渇しかかったため、かなり多めに持って行った。α化米はスクリュージップロックで戻している間、カイロとして使った。


行程図

遊びのMVPアイテム1

エバーブレス®スノーラインビブ

非常に完成度が高い製品。いくつか雪山用パンツは持っているが、最近はスノーラインビブばかり履いている。だいぶ使い込んでよれてきているので、もう一点買って、本気用と遊び用に分けようか検討中。

エバーブレス®スノーラインビブの商品情報へ

遊びのMPVアイテム2

メリノスピン®ライト

運動量のある冬のアクティビティでは、上下ともにメリノスピン®ライトを着ている。ドライレイヤー®ウォームとともに、9日間着続けた。このアイテムは、既に本気用と遊び用の2セットを揃えているほど気に入っている。

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遊びのMPVアイテム3

ポリゴン®ヘリオス

準備段階では、嵩張ることから持っていくかを迷ったが、雪洞内では一番活躍した。思った以上に暖かく、そして撥水する。同行者のT氏も同意見だったが、持って行ってよかった。フルジップタイプのパンツも欲しい。

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遊びのMPVアイテム4

エバーブレス®プリモジャケット

今回の行程は、登攀なしの歩きの行程だったこともあり、シンプルなプリモを選んだ。爆風に対してはアクロやスノーラインの方が適しているとは思うが、バラクラバ等工夫で十分対応できる範囲内である。

エバーブレス®プリモジャケットの商品情報へ

執筆者:プロダクト事業部商品開発課  衣川 佳輝

入社年:2022年

長期間の自転車ツアーや登山や山スキーをメインに遊んでいます。日常では狩猟採集や畑やシクロクロスも。2026年のモットーは”できるまでやればできる”。(2025年は”Just do it”)。生涯取り組めるテーマを探しています。

※自然の中でアクティビティを行うためには、十分な装備、知識、経験が必要です。事前の準備を徹底したうえで、安全に注意してお楽しみください。

ACTIVITIES