
「子・丑・寅・卯・辰・巳……」
ここ数年、finetrack社内ではその年の干支にちなんだ山や沢を巡る“干支登山”が恒例行事となっています。
2023年は「赤兎山」、2024年は「龍王岳」、2025年は鈴鹿の「蛇谷」へ。4回目となる今年2026年は午年ということで、その名に“馬”を冠する北アルプスの名峰「白馬岳」を目指しました。
今回のメンバーは、平均年齢30歳という社内でも若手(?)な5名(岡嶋・山下・田中・衣川・濱田)。「山スキー」を楽しむメンバーもいたため、それぞれのスタイルを活かした変則的なパーティを組みました。
歩き組: 岡嶋・田中
スキー組: 山下・衣川・濱田
テント泊と白馬主稜の登攀は全員で共に過ごし、それ以外の行程はチームに分かれて行動する、面白い山行となりました。
以下、参加メンバー5名で書き上げたので、楽しく読んでいただければ嬉しいです。
■アクティビティ日
2026年3月20日~3月22日
【1日目】
1日目~(文:衣川)

終業後の会社前にて。5人分の鍋の具材を2日分入れているので、ザックははち切れそうだった(登るときはここから分担する)
発電所ゲート前の駐車場に車を置き、舗装路を歩き始めた。しばらくは雪と舗装路のまだらだったのでスキーを担いでいたが、15分もしないうちに雪が続くようになり、シールハイクに切り替えた。天気は良く、春の陽気だった。半袖かつパンツのベンチレーションも全開放だったが、暑すぎて汗がしたたり落ちた。

3月とは思えないほどの暑さ
白馬沢出合いを過ぎたあたりで踏み跡から逸れ、主稜に取り付いた。歩き組は雪に埋もれて苦戦していた。スキー組は出来るだけ大きくジグを切らずに直登気味に登ったが、一度斜面全体から「ドフッ」というような不気味な音が聞こえて怖かった。傾斜が緩くなる台地まで急いで登った。

できる限りシールで登りたい
想定以上にシールで上がることができたが、徐々に斜度はきつく、雪は硬く、尾根は細くなり、スキーを担いだ。例年より雪は少ないようで、岩が割とのぞいていた。白馬主稜は有名ルートということもあり、残雪期に行ったことのある人からは、「もう人が多すぎて階段になってるよ」とのことだったが、幸か不幸か、直前の降雪と風で踏み跡の消えたズボラッセルとなり、先頭を交代しながら登った。

雪が少ない区間もあった

スキーを担ぎ、ズボズボ雪を進む
中盤、雪と岩とハイマツの混ざった少しいやらしい箇所が出てきた。左側が切れ落ちていたため、念のため、ロープを出してもらった。他のメンバーはすんなり行ってしまったが、自分は登攀力不足でなかなか厳しい。頭より上で雪と干渉するスキー板、足首が思ったように曲がらないスキー靴、どうにも動けなくなった。「HELP!」と叫んだが、お助けスリングを出せるような場所ではなかったため、ビレイの岡嶋がロープのテンションを強くするだけだった。時間をかけて該当箇所の雪を削り取り、何とか越えることができた。

上記箇所ではないが、スキーが斜面に干渉する場面。
特にスキー靴は硬く、足首が曲がりにくく、荷物とのバランスをとるためには少し前傾する必要がある。しかし、斜度が上がれば上がるほど、前傾した体も板もぶつかるわけで、バランスをとるのが難しい。

ラッセルは続く
ラッセルは続き、想定以上に時間がかかっていた。初冬のような潜る雪ではないものの、硬い層と新雪の層が入り交じり慣れない。ようやく徐々に後続グループに追いつかれ始め、遠慮することなく先に行ってもらった(自分は)。余裕のあるメンバーは先頭ラッセルに加わっているのが遠目に見えた。
何グループか先行すると、確かに階段のように歩きやすくなった。後ろからは、疲れて幻覚でも見ているのかと思うほどたくさんの人々が、続々登ってきていた。

続々とグループがやってきて、先にいってもらう。
数カ所あった不安な場所は、お助けゴージュロープを出してもらいながら進んだ。後続からやってくる人たちが難なく通過していくところでも、気合いを入れないと登れなかった。これまでは体力でカバーすることが多かった(今回もではある)が、絶対的な技量が足りず、時間ばかりかけてしまった。スキー装備で登ること、アックスの種類と本数、アイゼン、細かい装備の反省も多い。最後の雪壁もフォローで登らせてもらった。

最後の雪壁。フォローで登った。

厳しさを感じながら山頂を目指した
自分だけでは到底登れなかったであろうこのルートも、グループで来ていたから何とか登り切れた。登っている最中は、厳しさが溢れかえるルートだったが、登り切ってしまえば楽しい思い出も多い。囲んだ鍋も、深夜の除雪も、トラブルでテントの入り口が破れてしまったことも、全てこの山行を面白くしてくれた。

今日の晩飯は具材大量の鍋だと思うと、毎日頑張れた。

場所が悪かったのか雪がテント周りに吹き溜まってしまい、深夜除雪作業をした。

トラブルで破れたテントインナー30cmほどを、手縫いで補修した。ファスナー脇でなければダクトテープという選択肢もあったが、せっかく針と糸を持ってきていたのでチャレンジ。風で揺れる生地をつまんで縫い合わせていくのは思ったよりも難しかった。
【2日目】
歩き組(文:田中)

スキーが重そう
私はスキーを所有していないため、スキーを担いで登る仲間よりも有利な状況で白馬岳主稜を登ることができるはずだったが、息が切れてしょうがない。
年齢なのか、体力不足なのか、いずれにしても少し寂しい気持ちを抱えながらの登山となった。

大人気ルート
天気のよい3連休ということで、たくさんの登山者で賑わっており、ラッセルを交代しながら進む。
見ず知らずの人とのちょっとした連帯感を味わえる瞬間である。

景色を楽しむ体力的余裕も出てきた

少し不安になる箇所が現れた場合はフローティングロープでお助け
喜びの表情

白馬岳山頂
白馬岳主稜を無事に登り、ここからはスキー組とは別行動。
無線でお互いの現在地と行動を確認しつつ、スキーと徒歩それぞれの強みを活かしたルートを歩み、事前に決めた幕営地にて合流するという計画だ。
我々歩き組は白馬三山(白馬岳-杓子岳-白馬鑓ヶ岳)を縦走することにした。
夏にこのあたりを縦走したときは悪天候と疲労により杓子岳と白馬鑓ヶ岳のピークを踏んでいなかったため今回は楽しみにしていた。

歩きやすくて気分の良い稜線
気温、風速共に最適だった。ただ急登を前に、己の心臓の鼓動のみが高まり、それを鎮めようと足を止めたくなった。理由もなく立ち止まるのは自分が弱いことを認めた気がしてなんだか癪なので景色を見ることを言い訳に足を止めて休む。
それを何百回か繰り返しているといつの間にか山頂に到着しているのがいつもの流れだ。

来た道を振り返ると、達成感に包まれる
白馬鑓ヶ岳がよく見える
スキー組に無線で連絡を取ると、彼らも無事幕営予定地へ向かっているらしい。さすがにスキーは速い。うらやましい。

スキー組と合流。順調すぎ?
幕営地までの最後の下りで突然疲労に襲われ、歩みが遅くなる。
夕日に炙られながら、のそのそと下っているといろいろと深く考えてしまう。
今夜の鍋の具材、行動食の余り、睡眠時間、下山後の温泉、コーラ、肉、甘味、酒…
そうしているうちに1日の行動は終了。このような幸せをいくつも積み重ねて私は年を取ってゆくのだろう。
なかなかよい人生だと思えた。
【2日目】
スキー組(文:山下)
白馬岳山頂にて、歩き組と再会を約束し、グータッチを交わして滑走の準備へ。
登り返しを考えると、トラバース気味に滑った方が早いかな?とも思ったが、雪解けの早い今年。相川の過去の記録やアドバイスを踏まえて、素直に二俣まで滑り降りてから登り返した方が早そうだ、という判断に。
▽10年も前になるが、相川の記録▽
2016GW白馬三山周遊クライム&グライド

白馬山荘前は雪が風で飛ばされていたので、少し下ってから滑走開始。爆風で極寒の稜線からすぐさま清水谷に滑り込む。上部は風に叩かれて硬い

清水谷左俣。沢地形になると風は無くなり、雪も柔らかくなり快適に。

雪の付き方が迷路の様で、行き詰まって登り返しも…。

2280m 二俣に到着!埋まってて良かったー

右俣を登り返して、歩き組との合流地点を目指す

日が傾いて来たとき、ジャストタイミングで歩き組の姿が見えた!写真は歩き組から見たスキー組のハイクアップ

みんな疲れているけれど、頑張って整地!

完成!飯だー!本日はNO残業デー!

今日は海鮮鍋!モリモリ食べる!

就寝前の団欒。何かの儀式?
【3日目】
歩き組(文:岡嶋)
歩き組の朝は早い、なんてったってスキー滑走されたら、すぐに追いつかれてしまう。隣のテントに気を使いつつ5時に出発。
朝日が昇るまでの束の間、静寂の中、アイゼンとピッケルが雪に刺さる音を聞き、歩くこの瞬間が一番好きかもしれない。

静寂を進む。
鑓ヶ岳へは夏道ルートではなく、昨日確認した別の北西に伸びる尾根を辿る。その方が岩場もなく安全に早く抜けられるだろうと思ったからだ。案の定うまくいき、山頂までスムーズに進む。
山頂からは、昨日登った白馬主稜線や剱岳や立山がよく見えたが、爆風でそれどころではなかったので、そそくさと退散。

前を見ても、絶景。

振り返っても、絶景。
鑓ヶ岳温泉を目指し、東側の斜面に降りやすい場所を見つけて下り始める。ここからは早かった。シリセードを交えてあっという間に、鑓ヶ岳温泉へ。

目指せ 鑓ヶ岳温泉
シリセードが快適すぎて、一気に下山。スキー組に抜かされることなく、歩ききった。

適当な斜面は尻セードで飛ばす
【3日目】
スキー組(文:濵田)
深夜真っ暗な中、出発の準備をする歩き組にエールを送り、再び寝袋の中に潜り込む。

本日も素晴らしい天気。澄んだ空気が気持ちよい
空が白んできたころテントから顔を出すと、綺麗な青空が広がっていた。今日もいい天気だ。

スキー組は雪の状態を考え、のんびり出発。

杓子沢のコルを目指して
良い位置に幕営できたため、150mほどの標高UPで最初のドロップポイント。
所々カチカチに凍った斜面を、アイゼン歩行を交えて詰め上げていく。

杓子沢のコル。強風の中、滑走準備
テン場は穏やかであったが、稜線は相変わらずの強風。
何か一つでも物を失くすだけで、帰れなくなってしまう可能性があるため、慎重に準備を整える。

いざドロップポイントに立つと、少し心がぞわっとする
スキー技術が未熟な私にとっては、ここの滑りが3日間で一番の核心。
若干の不安とワクワクを抱えて、沢の中を覗く。
足元の斜面は、思っていたよりは緩やかであった。
気合を入れて滑走開始!

スプレーが上がり気持ちいい!
雪質がころころと切り替わり、滑るのはなかなかに難しいが、雪は適度に緩んでおり何とか楽しめるレベル。

沢の中腹で記念撮影

一番急で狭まった喉の部分を前に様子見。先はあまり見えない…

スキー力のあるメンバーから突撃!
コンディションと仲間に恵まれ、無事大クラッシュすることなく滑りきることができた。
地形図を眺めているときに、ふと目を引かれ気になっていたラインだったので、実際に自分で訪れることができ嬉しかった。

海外のスキー映像に出てくるような景色でテンションが上がる!
沢の下部からは、側壁のデブリ帯をトラバースして鑓ヶ岳温泉方面を目指す。
リーダーの見事なライン取りで、ほぼスキーを脱ぐことなく綺麗に目的地まで滑りきることができた。
ちょうどこの頃、少しの入れ違いで既に下山を開始していた歩き組2人と無線で交信。
仲間が目に見える範囲で行動していて、手を振ったりやり取りができると、何だか心強いし嬉しい。
歩き組から見たスキー組3名。手を振ったり声を出して交信。
トラバース後は湯の入沢を滑り、小日向山のコルを目指す。
登り返しの途中、今日滑り降りてきた杓子沢の全容を眺めることができた。綺麗な沢の中に、自分たちだけの軌跡が残っているのを見ると、なかなかに満足度が高い。

ハイクアップ中も、自分たちが残したシュプールを眺めるだけで元気が出る
小日向山のコルからは猿倉荘まで樹林帯を抜け、アプローチの長い林道をあっという間に滑り抜けて3日間の旅が終了した。

■過去の干支登山
・2023年 卯年🐇 赤兎岳ワサビ谷(沢登り)
2023年干支の山を目指して!赤兎山ワサビ谷沢登り
・2024年 辰年🐉 龍ヶ岳御前谷(沢登り)
立山に位置する龍ヶ岳に沢で詰め上がって行く。広く明るい渓に、3000m級の山々を眺めながらの遡行は最高。
・2025年 巳年🐍 蛇谷(沢登り)
蛇がつく山が意外と少なく、頭を悩ませた。山頂にとらわれるのをやめて、『蛇』のつく谷を遡行することに。コンパクトながら沢登りが詰まった一本。


ポリゴン®ヘリオス
荷物に制約がなければ、できるだけ持って行きたいアイテム。結露したテント内も、深夜の除雪も、濡れやすい環境での保温着として優秀で、テンバで活躍する。
(衣川)

ドライレイヤー®ウォームブラトップロングスリーブ
「ストレスや違和感がない」ので、雪山と沢登りに欠かせないアイテムです。
今回も3日間通して着用しましたが、アンダー部分が締め付けられてしまったり、肩紐部分が擦れたりすることもなく、快適に過ごすことができました。まだ試したことのない方には全力でオススメします。
(岡嶋)

執筆者:販売促進営業課 岡嶋 芽
入社年:2021年
本格的に山登りを始めて早4年。夏は沢登りと長期縦走。冬は雪山とスノーボードとほとんどの週末を山に費やしています。最近は、暇さえあれば地図を眺め、古い岳人を読み漁り、面白そうなルートや尾根を探しては、計画をストックしています。今年は釣りを始める予定なので、テンカラにルアー、フライ、聞きなれない言葉と格闘中。さて、何を買おう…。

執筆者:マーケティング課 山下 良太
入社年:2021年
スタッフ同士の遊びは、試作品の開発や遊び記録のために写真を撮ることが多い。でも、軽量化したい、濡れる可能性も高い。シャッターチャンスは逃したくないし、そこそこ写真にもこだわりたいし、A3くらいに引き伸ばすかもしれない。そんな今回のようなツアーや沢では、技術の進化もあって、1インチセンサー搭載のスマホが最適解なのでは?と最近感じている。

執筆者:カスタマーサービス課 田中 優行
入社年:2024年
私も齢33歳となり、健康を気遣うべき年齢となってきました。そんな時に出会ったクライミングは健康増進にうってつけです。たくさん岩を登ってたくさん食べてたくさん寝ればいっぱい筋肉がついて幸せになれます。腕のスジや血管が増えているのが確認できると惚れ惚れします。これからもタンパク質の摂取量に気を付けて頑張ります。

執筆者:商品開発課/生産管理課 衣川 佳輝
入社年:2022年
長期間の自転車ツアーや登山や山スキーをメインに遊んでいます。今年の畑はサトイモ、サツマイモ、トマト、オクラを育てる予定です。最近は沢力を上げるため、クライミングも始めました。

執筆者:マーケティング課 濵田 将大
入社年:2024年
休憩時間の一息に「はちみつ紅茶(レモン風味)」を嗜むのがマイブーム。今年の夏はサーフィンに挑戦予定。サーフボードも手に入れたので、オシャレな海人(うみんちゅ)を目指して精進したい。